日本と海外の働き方の違いって? | NECソリューションイノベータ

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コラム

日本と海外の働き方の違いって?

UPDATE : 2022.11.04

「日本と海外ではワークスタイルが違う」という話を聞いたことがありませんか?
実際、国内と国外では従業員の働き方に様々な違いがあります。

INDEX

日本特有の働き方とは

まずは日本の特徴的な働き方についてです。

終身雇用

日本のワークスタイルにおいて、大きな特徴とされているのが「終身雇用」という制度です。
歴史を振り返ると、実はかつての日本において主流となっていたのは成果主義に近い「能力給」と呼ばれる人事システムでした。有能な職人や熟練技師はより良い待遇の職場を求めて転職する事も珍しくなかったのです。
しかし1960年代になると日本は高度経済成長期に突入し、様々な分野で製品の増体制が整うようになります。製造以外でも企画・営業・事務など多くの人が必要になり、優秀な人材を囲い込むための安定した就労契約形態として考案されたのが終身雇用だったのです。日本では業績の安定した大企業への就職を望む人が多く、終身雇用の需要は根強いとも言えます。

一方で、現代日本では働き方の多様化によりキャリアアップのために転職を望む人も増えています。また、終身雇用制度は勤続年数の長い従業員が増えるに連れて人件費がかさむため、日本経済と企業業績が右肩上がりに進む事が前提です。
しかし現実的に見ると日本経済は衰退とまでは行かないまでも停滞状態となっており、多くの企業で終身雇用体制の維持が困難になっています。特定の業種・業界では業績の伸び悩みが著しく、終身雇用制度は機能しなくなっているのです。加えて、IT技術の進歩や成果主義の台頭などもあり終身雇用制度を採用している企業は減少傾向となっています。

サービス残業を含む長時間労働

「日本人は働き過ぎだ」という意見を聞く機会も少なくありません。その言葉の通り、日本では海外に比べてサービス残業を含む長時間労働が常態化している企業が多いことは事実です。給与が支払われないサービス残業は資本主義の考え方から根本的に逸脱しており、海外では有り得ない習慣と言われています。日本の法律においても労働基準法で「原則として法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超える労働」は禁止です。これを超過した時間外労働については割増賃金を支払う事が義務付けられているため、サービス残業はれっきとした労働基準法違反になります。

しかし、現場の従業員はサービス残業を「仕方の無いもの」として割り切っているケースも多いです。従業員一人あたりの仕事量が多く、特に人手不足の職場ではサービス残業の常態化が深刻だと言われています。サービス残業が常態化しやすいのは「勤務時間の虚偽申請(法定労働時間終了時にタイムカードを打刻)」「残業時間の切り捨て(15分・30分といった端数を切り捨てて報告)」「始業前から出勤・業務開始(労働時間として報告させない。終業後の残業に対する目が厳しくなり、始業前に前倒しで時間外労働)」といった状況が当たり前となっている職場です。サービス残業は日本の労働環境において特に悪しき習慣とされており、企業・人事が従業員と協力しながら無くしていく事が求められています。

休暇を取りづらい職場環境

従業員が休暇を取りづらい土壌というのも、日本と海外の大きな違いと言えるでしょう。日本でも労働基準法に基づいて従業員に有給休暇が与えられています。しかし日数分の有給休暇を消化出来ない従業員が大多数であるというのが実情です。2019年に発表された厚生労働省の就労条件総合調査では2018年の有給取得率は52.4%、取得した日数は平均で9.4日となっています。もう少し細かく見てみると従業員数1000人以上の大企業では取得率58.6%、30~99人の中小企業では47.2%です。少ない人数で仕事を回している事業所ほど、有給取得が難しい状況である事が分かります。2016年に実施された世界26カ国を対象とした有給休暇における国際比較調査では、日本の社会人のうち約60%が「有給休暇の取得に罪悪感を感じる」と回答していました。自分が休みを取る事で周囲に迷惑がかかるという意識から、有給休暇の取得を断念してしまう従業員が多いのです。

日本では特に管理職に就いている男性従業員が、休みを取れるタイミングでも働いている傾向が強いとされています。こうした状況が慢性化している日本では、「現状、休みが不足している」と感じない人が諸外国に比べて多いのです。また、上司が働いているのに部下が有給休暇で休むという事に抵抗を感じる人も少なくありません。有給休暇を申請しても上司に却下されているというケースも散見されます。企業の規模によっては法定で認められている産休・育給ですら取得が難しいという事もあるでしょう。特に男性従業員の育給はまだまだ前例が少ないです。周囲への負担を考慮して、多くの企業では男性従業員の育給について消極的な姿勢を見せています。

新卒一括採用

日本の就職活動と言うと毎年同時期に多くの学生がリクルートスーツを身にまとい、企業説明会に参加するというイメージが強いでしょう。実はこうしたスタイルは日本特有のものであり海外ではあまり見られません。求人への応募・選考試験・学校の卒業と共に入社するのが日本の一般的な就職パターンです。準備段階を含めると、日本の学生は1~2年間を就職活動に費やしている事になります。一方、欧米の学生は本分である学業を優先し、長期休暇中にインターンシップに参加する事で就職先を決めるというのが一般的です。

日本では多数の新入社員が同時期に入社する一括採用が通例となっており、入社後の数ヶ月は入念な研修を行って会社の戦力として育てます。しかし海外では即戦力が求められる傾向が強く、日本ほど手厚い研修制度を整えている企業は多くありません。また、日本の新卒一括採用が4月に集中しているのに対して、海外では通年採用が基本となっています。新卒一括採用は年功序列・終身雇用といった日本独自の人事制度との親和性が高いため長きに亘って維持されてきましたが、実際は世界的に見ても特殊なものなのです。

欧米の働き方に見られる違いは?

アメリカの場合

戦後間も無くして日本経済の土壌を整えたのはアメリカでしたが、現代社会においては日本とアメリカで様々な点に働き方の違いが見られます。例えば2017年に実施されたOECD経済協力開発機構の調査によると、アメリカは日本に比べて1日あたりの平均労働時間が長いです。日本が7.1時間/日であるのに対して、アメリカは7.5時間/日となっています。

働き過ぎと言われる日本人よりもアメリカ人の方が長い時間働いているという調査結果を、意外に思う人も多いでしょう。しかしこれは記録上の数値を比較したものであり、賃金が発生しないサービス残業の時間は統計に含まれていない点には留意してください。

アメリカは実力主義という風潮が強く、各産業の企業では即戦力の人材が求められています。前述のようにアメリカでは新卒・中途の区別が無く、新入社員であってもバリバリ仕事をこなせるだけのスキルが必要です。日本に比べてインターンシップの活用が盛んであり、学生のうちから社会経験を積み上げていくのが一般的になっています。キャリアアップを目的とした転職も当たり前であり、人材の流動性が日本よりも高いです。そのため、日本で一般的であった終身雇用という制度はアメリカでは存在しません。

日本が4月を基準に新卒一括採用を行うのに対してアメリカは通年採用を基本としていますが、これは学生の本分である学業を最優先にさせるためです。学業を重視した学生生活を送ると、日本のように1~2年も就職活動に時間を費やすのは難しくなります。

ドイツの場合

経済大国として名高いドイツは、日本と同様に従業員が勤勉であるというイメージが世界的に根付いています。しかしその実態を分析してみると、日本とは大きな違いが垣間見えるのです。
ドイツの1日あたりの平均労働時間は5.6時間/日となっており、日本の7.1時間/日を大きく下回っています。ドイツが少ない労働時間で順調な経済成長を遂げている背景には、タイムマネジメントの概念が浸透しているという事が挙げられます。ドイツで評価される人材とは、与えられた仕事を時間内にこなせる従業員です。ドイツの法定労働時間は日本同様に8時間となっており、1日10時間以上の労働は罰則の対象となります。

ドイツでは学生時代に仕事を学べる「デュアルシステム」によるスキルアップも特徴的な施策の1つです。小学4年生の段階で「高校進学」「職人」「実技取得」のどれかを進路として選択し、学生の間に将来必要となるスキル習得を始められます。人生の早い段階で特定職種に必要なスキル・知識が身に付くので、大人になってからの転職が比較的少ないというのもポイントです。

オランダの場合

オランダは世界的に見ても「理想的なワークライフバランス」を実現していると言われています。労働制度と休暇制度が充実している事がその大きな要因です。
例えば育児休暇については子どもが8歳になるまで取得可能、所得が100%保証される父親休暇や配偶者の出産後4週間は2日の育児休暇が法律で認められています。産前産後休暇については出産前後16週間取得可能で、こちらも所得が100%保証される上に雇用者は申請を拒否出来ません。その他休暇制度についても、原則的に雇用者が拒否出来ないというところまでを含めて法律が整備されています。

なお、オランダはフレキシブルワークの先進国としても有名です。在宅勤務と出社を組み合わせたテレワークの導入や、週3勤務の実践など多様な働き方が以前から認められています。さらに、非正規雇用者の扱いが正規雇用者と同等の水準となっている事もオランダにおける労働環境の大きなポイントです。世界規模で考えると日本は休暇が取りづらく、ワークライフバランスも調整しにくい職場環境で働いている人の割合が多いと言えます。

まとめ

海外諸国の実情と比較すると、日本特有の職場環境が抱える問題点も見えてきますね。
こうした問題点を解決するためには、「自社の働き方」について正確に現状を把握する事が大切です。