日本の人事はもっと楽しく仕事していいと思う。面白法人カヤックの人事にアイデアが集まる理由。 | NECソリューションイノベータ

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インタビュー

UPDATE : 2021.09.29

社員全員が人事部という「ぜんいん人事部」をはじめ、ユニークな採用方法や社内制度などを次々と発表し、注目を集める面白法人カヤック。
いわゆる“バックオフィス”という考え方からは離れた、カヤックならではの人事部とは。
新卒採用の担当でさまざまな企画やイベント運営も担う、みよしこういちさんにお話しを伺いました。

インタビューに答えてくれた方

みよし こういち さん

面白法人カヤック 管理本部 人事

筑波大学大学院・数理物質科学研究科を修了後、就職せずボードゲームを作って生計を立てる。シナリオライターの学校やよしもとの学校を卒業後、面白法人カヤックの人事部に参加。
これまでに、バスで日本各地をまわる「旅する会社説明会」や検索ワードだけで応募できる「エゴサーチ採用」、ゲームの上手さで内定を出す「いちゲー採用」などの企画を手掛ける。

人事部であっても面白いコンテンツを出す。
それが面白法人としてのアイデンティティ。

―カヤックの人事部は、企画を積極的に生み出すなど、従来の人事の枠を超えているように感じます。
この体制はどのように作られていったのですか?

みよしさん:やなさん(※カヤックCEO 柳澤氏)が人事部にアイデアを出すことを求めてきたとき、出せる人物が人事部に何人かいて、自然と今のかたちになっていった感覚ですね。
僕自身は、やなさんから「バズれ」、いわゆる“話題になれ”といわれる中で、地道なリクルート活動と並行して、履歴書不要でGoogleの検索結果で書類選考を行う「エゴサーチ採用」や、ゲームの上手さで選考する「いちゲー採用」などの採用キャンペーンを行ってきました。

ゲームに捧げた情熱や時間も高く評価する「いちゲー採用」

―ユニークな採用キャンペーンは、リリースのたびに話題になっていますね。
実際に採用にも結びついているのでしょうか?

みよしさん:「エゴサーチ採用」や「いちゲー採用」なんかは今でもたくさんの応募があります。でも、大体のキャンペーンは始まった年と翌年が盛り上がりのピーク。話題がひと段落した採用キャンペーンを何年も使い回すのは違うし、定期的に新しいキャンペーンを打つべきだとは思っています。

―どんどんバズっていくことはやはり重要でしょうか?

みよしさん:バズることが第一かというと、そうではないと思いますね。意識しているのは、カヤックは企業活動そのものがコンテンツだということ。
“面白法人”と名乗っているからには、“面白い”が企業のアイデンティティでもあるので、いわゆるバックオフィスといわれる我々の部署も面白いコンテンツを出すべきだという思いが強いですね。 どういうキャンペーンにするかは、他でやっていないことを常に探したり、FacebookやTwitterで情報収集したりはしています。
でもそれより、社内外に対して、“あの人は何か面白いことをしそうだ”と思われるような雰囲気を出しておくことが重要かもしれません(笑)。エゴサーチ採用もいちゲー採用も、持ち込まれたひとつのアイデアを人事部で形にしたという経緯ですので。

―いつでも風呂敷を広げておく、というイメージですか?

みよしさん:そうですね。社員から何かアイデアが持ち込まれたときには「できない」とは言わずに、「ちょっと一回考えてみるわ」と持ち帰る。
結局実行できないことも多いけれど、ウェルカムな姿勢だけは貫いています。社員も僕のことは、「みよしさんは適当だからできるかどうかわからないけど、とりあえず思いついたら言ってみようかな」というゆるい認識だと思います(笑)。

面白い社員は社内に隠れている。その面白さをどうやって見つけ出すか。

―人事評価においてもカヤックらしさはあるのでしょうか?

みよしさん:360度フィードバックの中心に、「面白く働けているかどうか」という基準があることでしょうか。これによってカヤックの社員としてどうあるべきかの問い直しにもなっていると思います。
あと、社員全員がカヤックの社長になったつもりで会社のことを考える時間を持つ「ぜんいん社長合宿」も、年2回行っています。
チームに分かれてブレストし、プレゼンする時間を経て会社が成長できるのはもちろん、自分が今までかかわっていなかった“隠れた面白い社員”が発見できるメリットもあります。

―社員全員に自分を知ってもらう機会にもなるのですね。

みよしさん:そうですね。ただ、ここ数年は会社の規模が大きくなったことで合宿にも3、4班に分かれて行くことになり、“隠れた面白い社員”が発見しにくくなっているんですね。
今後規模が大きくなるにつれてこの問題はより顕在化していくでしょうし、面白い社員の発見方法は今後の課題のひとつです。

人事は“ロンリーワン”になりがち。他社の人事部ともノウハウを共有していいと思う。

―最近はオンラインも積極的に活用していると伺いました。

みよしさん:課外活動でオンラインイベントをよくやっていたので、配信ライブについてはすごく調べました。日本の人事の中ではいちばん知っている、といえるほどの知識を得たので、コロナ禍においてオンラインを活用することもかなり増えましたね。オンラインで人事に関するイベントも始めています。

―どのようなものですか?

みよしさん:人事や管理部門の方々に向けた人事勉強会です。例えば5、6人で集まってすごく濃い会議をしたとして、確かにすごく深堀れるんだけど、閉鎖された空間なので多くの人に伝わらないですよね。
かといって100人や200人規模になるともはやセミナーで、知っていることしか話さなくなる。話者自身も話すことに面白みを感じなくなるんですね。
これを解決しようと生まれたイベントで、僕や柴田さん(※カヤック人事部長)を含めた数人で集まって“最近の課題”をテーマにブレスト。
心理学の知識などを持つ社外人事の方に、将棋番組の解説者のように「今の話はこういうことですよ」と、リアルタイムで解説してもらいます。

リモートでの取材に答えるみよしさん

―このイベントをする目的についてはどうお考えでしょうか。

みよしさん:ふたつの意味があって、ひとつは、人前で2時間議論する場を持つことで僕たち自身の気づきが多いこと。
ブレストを公開して、観客から反応をもらい、解説することを繰り返すことが、さまざまな課題解決につながり、カヤックの糧にもなっていきます。
もうひとつが、他社の人事に僕たちの活動を真似して欲しいということ。これまでは、基本的に自分たちの仕事に関する発表ってしていなかったんです。
そうすると、オンリーワンじゃなくてロンリーワンになると思っていて。つまりフォロワーがいないことが僕らのネックなんですよね。
いろんな施策をやったり、採用キャンペーンをやったりしても、メディアに取り上げられることも少ない。
そもそも人事の仕事というのは、メディアに取り上げられる領域ではないところで頑張っている部分もありますが。

―たしかに、会社の活動として取り上げられることは少ないかもしれません。

みよしさん:そうやっていつの間にかロンリーワンになってしまいがちなところを、ノウハウを共有しながら情報発信して、フォロワーが増える環境になればいいのではと。
「結局カヤックだから、人事でも面白いことができているんじゃないか」と言われることもあります。
でも、採用キャンペーンひとつとっても実は作り方がちゃんとあって、他社も全然真似できちゃうんですね。
業種によっては僕たちの作り方をそっくりそのまま真似してもいいし、もしくは社風に合わせてカスタマイズして、着地をずらして作ってもらっても全く問題ないと思っています。

人事が楽しく仕事できることは、会社全体にとっても意義深いこと

―カヤックの人事が自慢できるところは、どういうことだと考えますか?

みよしさん:何かに迷ったり困ったり、最近考えていることだったり、テーマがあるときに会議をするとすぐにブレストになる部分はいいなと思います。
代表取締役CBO(チーフブッコミオフィサー)が人事にいることもあって、ブレストしながら課題解決していくことも多いし、「今日の会議は3つもアイデアが出てよかったね!」ってみんなが思うほど充実した時間になる。
人事がみんなちゃんと話せて、それぞれアイデアを持っていることは、とても健全だと思います。

会議の様子

―優秀な社員を抱えていると、必然的にそうなるのでしょうか。

みよしさん:優秀でユニークな社員が集まるようには心がけていますが、だからといって多様なアイデアが集まりやすい訳ではないと思いますね。
6年ほど前に、著名な外資の企業から「人事の研修をしてもらえないか」とオファーをいただいたことがありました。事前に担当の方から「うちの人事のメンバーは課題をオープンに話さない」と聞いていたのですが、実際に話してみるとすごく空気がよかったんです。課題解決に向けた議論もしっかり行われました。「聞いていたのと全然違って、さすが優秀な人たちだなぁ」と思っていたんですが、実は研修の場と仕事の現場では振る舞いが違うらしいんですね。
会社に帰ると真面目で大人しくなっちゃうらしくて。「そんなことがあるんだ!」って驚いたことがありました。

それで感じたのが、日本の人事はもっと楽しく仕事をしたほうがいいということ。
引いては人事が楽しく仕事できるように、会社全体の目線を変えたほうがいいということです。
人事が真面目ということは、裏を返せば、会社が「人事とは真面目に振る舞うべし」と考えているからで。意外と人事の人たちも、根っからの真面目ではないんじゃないかって思うんですよね。
実際僕も、そういった会社に入れば猫をかぶるだろうなって思いましたし。
人事の中だけで何かを解決するということではなく、人事が何かを話したり問いかけたりしたときに、他の部署からいろんなアイデアが出てくる状態が、どんな会社にとっても理想だと思います。
そういった意味で、人事はもっとフリーでいい。「人事は真面目」とするような空気ではなく、もっと楽しく仕事できる環境を作っていくべきですね。

まとめ

面白く働けているかを中心に据えた360度フィードバックや、ぜんいん社長合宿など、ユニークな取り組みで社員の成長ややりがいを育む面白法人カヤック。
みよしさんが話す通り、人事にアイデアが集まるような企業風土が醸成されれば、会社も社員もさらに成長し、人事という部門の幅ももっと多様に広がりそうです。