人事・総務コラム

社員の離職を防止するために
一番重要なこと

コラム執筆者:曽和 利光氏掲載日:2023年7月12日

社員の離職を防止するために一番重要なこと

離職の問題が顕在化してきている

リモートワークが進み、社内のコミュニケーション量が減ったり、コロナ禍中に停止していた転職活動を再開する社員が増えてきたりしたことなどから、近年再び社員の離職が各社で問題視されてきています。これは世界的な傾向でもあるようで、“Mega Resignation”(大離職時代)などとも呼ばれています。また、国際情勢や為替変動などから経済的見通しが不安定であるにもかかわらず、日本においては少子化による構造的な人手不足を背景に、企業の求人ニーズは高止まりしていることもこれに追い打ちをかけています。さて、では社員の離職の理由のコアは何で、その対策として何が考えられるのでしょうか。

まずは人間関係の状況を把握する

社員の離職が生まれる原因は多岐にわたり、特定の一つのことがクリティカルということはありません。ただ、離職についての様々な調査で一貫して上位に理由として上がってくるのは「人間関係」です。特に、直属の上司との人間関係は、離職を決意する最も重要な要素であることは間違いなさそうです。私は日頃組織に対する人事コンサルティングを行っていますが、離職の原因を追求していくと、上司とのパーソナリティの相性が悪い人の離職率が高いことはとてもよくある現象です。ですから、まず離職防止のベースとして、社内の人間関係がどのようになっているのかを把握することから始めるのがお勧めです。

パーソナリティテストで「見える化」

このAI・データサイエンス時代においても、まだ多くの企業が自社組織のデータを利用・保持できておらず、自社の社員がどんなパーソナリティ(性格・能力・価値観)の人たちから構成されているのかを明確に言える企業は多くありません。もちろん経営陣や現場リーダー、人事担当者の皆様が日々感覚的には捉えているとは思うのですが、人間が人間を認識する際には様々なアンコンシャスバイアス(無意識の思考の偏り)によって多くの歪みが発生するものです。可能であれば、何らかのパーソナリティテストを社員の皆さんに実施して(できるだけトップを含む全員に)、パーソナリティを「見える化」しましょう。

どんなタイプ・組み合わせが良いのかをみる

パーソナリティテストによって個々人の特性を理解するのはもちろんなのですが、クラスター分析などによって社員を似たパーソナリティの群に分類してみることもお勧めです。そうすると、役職や職種毎のばらつきや、高業績者・低業績者・早期退職者(退職者データが取れれば)の特徴などもはっきりしてきます。そして、上司・部下のタイプを調べてみることによって、どういうタイプの組み合わせの場合に、高業績・低業績・早期退職が発生しているのかもわかります。そうすればこれを配置の参考にすることができます。

パーソナリティ最適で配置を行う

良好な人間関係は良好なパフォーマンスにつながるため、端的に言えば、できる限り全社の配置を良い成績を出している組み合わせに修正していくということです。もちろん、人間関係の相性だけで配置を決定できるわけではありませんので、完璧にはできないでしょう。ただ、新卒や若手の配置、ローテーション中の総合職の配置などであれば、スキル的に「必ずここでなくてはいけない」ということは少ないはずです。その場合、できるだけパーソナリティでの最適配置を心がけるということです。実際、この最適化を行うだけでも、離職率が下がったりします。そのくらい配置のパーソナリティでの最適化の威力は強いものです。

人を変えるという難しいことをしなくてもよい

この方法が良い点は、極端に言えば、社員個々人は何も変わらなくてもよいということです。離職防止と言えば、よく「マネジメント力の強化」だとか「コミュニケーションの活性化」「採用での求める人材像の再定義」などの対策が検討されます。これらはもちろん重要ですし、実現できれば効果も高いのですが、如何せん難しいものです。そんなに簡単に個々人の言動を変えることはできません。労力も時間もコストもかかります。しかし、配置の最適化は、個々人は何も変わらず、関係性だけを変えるだけです。「やりやすい人と仕事ができる」ようにすれば、仕事がやりやすくなるというのは至極当然のことです。

環境整備をしてから他の施策に取り組む

このようにまずは「環境整備」(職場環境の最重要なものが人間関係です)を行った上で、その他の施策に取り組んだ方が、それぞれの施策の効果も高まります。管理職のマネジメント能力に問題を感じているのに、何も「やりにくい部下」をなんとかマネジメントする努力をさせなくてもよいのではないでしょうか。「やりやすい部下」をつけてあげれば、マネジメント能力が不足している管理職でもまだなんとかできやすいはずです。コミュニケーションの活性化でも同じです。「やりにくい相手」となんとかコミュニケーションさせるのではなく、「やりやすい相手」と合わせてあげれば、コミュニケーションはとても楽です。

相性を認識していることが重要

しかし、完璧に相性のよい配置などできません。相性の悪い相手と仕事をさせなければならないこともあるでしょう。ただ、それをきちんと認識しているのといないのとでは大違いです。管理職が「この部下には自分のパーソナリティをそのまま出しては合わない」と思えれば、「マネジメント方法を変えてみよう」となります。そうでなければ、「こいつは物分かりが悪い」と思うかもしれません。もともと相性が悪くても、理解していれば対処できますが、そうでなければ問題が起これば原因を部下のせいにしてしまうのです。

要は「個々人にあったマネジメント」を行うということ

このように、社員の離職を防ぐための最も重要なことは人間関係の把握と最適配置であると私は思います。本稿で述べたようにできるだけパーソナリティテストなどで可視化した上で検討することをお勧めしますが、それができなくても、この観点に注意して、配置などの人事を慎重に行うことだけでも効果があるかもしれません。「人を見て、法を説け」とはよく言ったもので、パーソナリティに合わせてマネジメントをしてあげるだけで人は仕事能力を発揮してくれるものです。この多様性の時代においては、このような1to1マネジメントの考え方がより重要になってくるのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

曽和 利光

曽和 利光

株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。現在、Y!ニュース、日経、労政時報、Business Insider、キャリコネ等、コラム連載中

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