人事・総務コラム

マイナ保険証への完全移行はいつから?
健康保険証の有効期限と企業の実務対応を解説

コラム執筆者:北 光太郎氏掲載日:2025年9月1日

マイナ保険証への完全移行はいつから?健康保険証の有効期限と企業の実務対応を解説

政府のデジタル化施策により、2025年12月1日をもって従来の健康保険証の有効期限が終わり、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」への完全移行が予定されています。企業の人事労務担当者にとっても制度概要や従業員への影響を正しく理解し、準備することが重要です。本記事ではマイナ保険証と資格確認書の概要やマイナ保険証のメリット、企業の実務対応を解説します。

健康保険証の廃止とマイナ保険証への移行

政府はマイナンバーカード普及に伴い、健康保険証とマイナンバーカードを一体化する方針を打ち出しました。マイナ保険証とはマイナンバーカードを健康保険証として利用できる仕組みのことで、2021年10月から任意利用が開始されています。そして、2024年12月2日以降は現行の健康保険証の新規発行が停止され、既存の健康保険証の有効期限は2025年12月1日までとなりました。つまり、2025年12月をもって健康保険証は廃止され、以降は原則としてマイナンバーカード(または後述の資格確認書)での資格確認に一本化されます。これにより、医療保険制度はデジタル化とオンライン化が進む見込みです。

なお、自営業者やフリーランスなどが加入する国民健康保険の健康保険証は9月30日までが有効期限です。企業に務めている方が加入する健康保険と有効期限が異なる点にも注意しましょう。

2025年4月時点では、日本国民の78.5%がマイナンバーカードを保有し、そのうち健康保険証利用の登録をしている人は85.6%に上ります。一方で、2025年3月時点のマイナ保険証の医療機関での利用率はわずか27.26%に留まり、現場での活用が進んでいないとの指摘もあります。また、2025年6月17日には一時的なシステム障害などトラブルも発生しており、今後の政府の対応を注視する状況が続いています。

マイナ保険証の仕組みと従業員にとってのメリット

マイナ保険証を利用すると、医療機関の窓口でマイナンバーカードを専用カードリーダーにかざし、顔認証または暗証番号で本人確認することでオンラインで被保険者資格を確認できます。従来のように保険者情報が印字された保険証を提示しなくても、公的個人認証を用いたオンライン資格確認により常に最新の資格情報が参照される仕組みです。これにより、被保険者情報の確認漏れ防止や事務効率化が期待できます。その他、従業員にとってマイナ保険証へ切り替えることで得られる主なメリットは次のとおりです。

  • 就職・転職や引越しをしても継続利用が可能
  • 過去の診療・薬剤情報の共有で適切な医療
  • 高額療養費制度の手続き簡略化

就職・転職や引越しをしても継続利用が可能

マイナンバーカードが自らの身分証兼保険証となるため、転職や異動で保険証の資格取得・喪失があっても、カードはそのまま健康保険証として使い続けることができます。そのため、新しい健康保険証の発行を待つ必要がなく、在職中に保険証が手元にない期間が生じる心配も解消されます。ただし、企業の取得・喪失手続き自体は継続して必要になるため、企業の手続きが完了したタイミングで保険者が切り替わります。

過去の診療・薬剤情報の共有で適切な医療

マイナ保険証を利用すると、医療機関や薬局で過去の診療内容や処方薬の情報、特定健診結果などをマイナポータルから確認することができます。(本人の同意が前提)
初診時に紙の問診票へ既往歴や服薬情報を記入したり口頭で説明したりする負担が減り、医師・薬剤師も正確な情報に基づいた診療や重複投薬の防止など、より良い医療サービスを提供できるようになります。
万一救急搬送される場合にも、カードがあれば救急隊や受入先病院で迅速に医療情報を把握できるため安心です。

高額療養費制度の手続き簡略化

従来、医療費が高額になる場合は事前に「限度額適用認定証」を発行申請し提示するか、いったん窓口で全額立替払いした後に高額療養費の支給申請を行う必要がありました。マイナ保険証を使えば高額療養費制度による自己負担額の上限適用が自動化され、窓口で上限超過分を一時立替する必要がなくなります。面倒な事前手続きや事後申請が不要になるため、従業員の経済的負担と手間を減らす大きなメリットといえます。

資格確認書とは

資格確認書とは、マイナンバーカードを健康保険証として利用しない人向けに発行される健康保険の被保険者資格の証明書です。
前述のとおり2024年12月以降、原則として従来の健康保険証は更新されません。しかし、マイナンバーカードを持っていない人が医療を受けられなくなるわけではありません。政府はマイナンバーカードを持っていない、もしくはマイナンバーカードを健康保険証として利用登録していない人に対し、現在持っている健康保険証の有効期限内に資格確認書を無償で交付する方針を示しています。該当者には勤務先の健康保険組合や協会けんぽ、市区町村の国民健康保険担当窓口など各医療保険者から資格確認書が送付されます。(自治体によっては国保加入者全員に資格確認書を交付)資格確認書はマイナンバーカードによらず被保険者資格を証明できる健康保険証であり、病院や薬局の窓口に提示すれば従来と同じ自己負担割合で保険診療を受けることが可能です。いわば従来型の健康保険証に代わる証明書として機能します。資格確認書の様式や形態は保険者によって異なり、例えば協会けんぽでは、従来の保険証と同じサイズの黄色いプラスチックカードとして発行されます。

企業が取るべき対応と実務上のポイント

人事・労務担当者は、マイナ保険証への移行に合わせて社内手続きや従業員対応を見直す必要があります。ここでは企業が取るべきポイントを紹介します。

従業員への周知と情報提供

従来の健康保険証が利用できる有効期限(2025年12月1日)を、従業員に早めに周知しましょう。特にマイナンバーカード未取得の従業員には資格確認書が自動交付されることで、問い合わせが多く寄せられることが予想されます。マイナ保険証を利用する場合は高額療養費の手続き簡略化など従業員本人にメリットがある点も併せて説明すると良いでしょう。

入退社時の手続きフロー見直し

新入社員の社会保険加入時には、資格確認書発行の要否の確認と届出を忘れないようにしましょう。内定段階でマイナンバーカードの有無を確認すれば、入社後の手続きがスムーズにできます。退職時についても、従来通り健康保険証や資格確認書の回収手続きが発生します。従業員がマイナ保険証を利用中であっても、在職中に使っていた従来の保険証が有効なうちは自己判断で廃棄せず、資格喪失時に会社へ返却するよう指導しましょう。なお、2025年12月1日までに退職等で従来の保険証が無効になった場合は会社経由で保険者へ返却し、有効期限経過後は本人が破棄して構いません。

※参考:全国健康保険協会「令和6年12月2日保険証新規発行終了について

様式のアップデートと資格確認書の手続き

2024年12月以降、資格取得や扶養の手続きに使用する様式には資格確認書関連欄が追加されています。手続きに用いる書類も最新の様式にアップデートしましょう。また、協会けんぽの場合は資格確認書を持っている方で氏名変更や資格確認書の紛失があった際は「健康保険資格確認書交付申請書」を用いる運用に変更されています。従来の健康保険証の届出書類と異なる点があるため、注意が必要です。

まとめ:さらなる情報収集と支援の活用を

マイナ保険証への移行は従業員だけではなく、企業にとっても大きな変化です。従来の健康保険証の有効期限が切れる前にマイナ保険証のメリットや資格確認書について従業員に周知しましょう。また、健康保険証の廃止に伴い、手続きフローの変更も必要となる場合があります。変更点を把握し、早めの対応を心がけることが大切です。

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執筆者プロフィール

北 光太郎

北 光太郎

きた社労士事務所 代表
社会保険労務士

企業の労務担当として10年間実務を経験したのちに独立。社会保険労務士として中小企業の労務管理をサポートするとともに、Webメディアの記事やホワイトペーパー、業界専門誌などで人事・労務分野の記事執筆・監修業務にも注力。実務経験に基づいた専門性の高いコンテンツ制作を通じてメディアの専門性と信頼性向上を支援している。

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