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行政や住民との連携で地域の緑化活動を活性化し、多様な生きものが共存する街づくりを支える。

[持続的成長を実現する経営基盤]

チャリティハーブガーデン活動
(企業市民活動の推進)

江東区役所
土木部管理課CIG推進係
浦 靖憲 様

2024年より現職。「みどりの基本計画」※1の推進を主業務にするほか「(仮称)江東区生物多様性地域戦略」※2の策定業務にも携わる。

NPO法人Green Works
副代表
三浦 香澄 様

都立公園、自治体の園芸関連講座の企画・運営および講師などの活動を行う。本活動においてはハーブの植栽デザインや企画運営のサポートとして携わる。

みどりネットKoto
副会長
東方 陽子 様

公園やマンションのコミュニティガーデンの園芸指導を中心に活動。2004年より江東区内のコミュニティガーデンのサポートを行い、2016年からアンバサダーとして活動に関わる。

事業支援部
平野 智也

2011年入社以来、企業市民活動全般を担当。本活動の事務局としてNPO法人Green Worksと連携のもと活動方針や計画を立案し、各取り組みを推進中。

以下敬称略

  • ※1
    江東区の魅力である水辺とみどりを活かした「みどりの中の都市(CIG :CITY IN THE GREEN)」の実現を目指し、区内の緑化の推進・保全に関する基本方針や目標を示した計画。
  • ※2
    江東区が2026年の策定を予定している、生物多様性の保全と持続可能な利用を推進するための地域戦略。江東区の特徴的な自然環境や都市環境を活かしながら生物多様性を守り、地域全体でその価値を共有し行動を促すことを目的とする。
プロジェクト概要

チャリティハーブガーデン活動は、NECソリューションイノベータの企業市民活動の一環として、東京都江東区の景観美化を目的に2006年にはじまった取り組みです。地域住民とともにラベンダーを中心としたハーブガーデンの維持・管理を担い、また加工品づくりや地域イベントでのチャリティ販売をしています。販売をとおして預かった寄付金は主に「花苗基金」※3の原資として活用されており、区内の緑化や持続可能な社会の実現に向けた東京都の地域戦略※4につながっています。

  • ※3
    NECソリューションイノベータが江東区からの委託を受け、コミュニティガーデン活動を支援する「みどりネットKoto」と連携して設立した基金。江東区内のコミュニティガーデン団体において、花やみどりを育てる花苗代に活用されている。
  • ※4
    東京都の地域戦略では、大都市東京ならではの2050年の目指すべき姿に「市街地内のみどりの質の向上」を掲げ、その前段となる2030年の目標として「自然地の保全管理」「自然の機能を活用した自然災害リスクの低減」などを挙げている。

― どのように課題を解決し、どのような未来を描くのか ―

【社会課題】
都市化による緑地の減少で多様な生きものの共存が困難に

都市環境では、開発に伴う緑地や農地の減少および分断が生態系の乱れを引き起こし、動植物の生息域が縮小しているため、生物多様性の保全が急務となっています。東京都は、行政、都民、事業者、民間団体(NPO・市民団体)など、様々な組織と連携・協働しながら取り組みを進めることで、2030年までにネイチャーポジティブ※5の実現を目指す「東京都生物多様性地域戦略」を策定しました。2050年には「市街地内のみどりの質の向上」※6を達成し、都市とみどりの調和をはかるとともに、一人ひとりが生物多様性を自分ごととして捉えて行動できることなどを大都市東京のあるべき姿として掲げています。

  • 都市化による緑地の分断や生きものの生息域の縮小は、多様な生物の共存を妨げる可能性がある
  • 市街地内の緑地の保全により憩いの場を創出し、人々のWell-being向上につなげることが期待されている
  • 緑地の保全活動に地域住民が参加して生物多様性への理解を深め、共感や協力体制の拡大を促すことが求められる
  • ※5
    生物多様性の損失を止め、自然を回復軌道に乗せることを指す概念。自然再興とも訳される。2022年12月、COP15(生物多様性条約第15回締約国会議)やG7などでも扱われ、国際的な認知度が広がりはじめている。
  • ※6
    都市部の緑地や自然環境を単に面積として増やすのではなく、そのみどりが持つ環境価値や機能をより高めるための生物多様性の保全、都市環境の改善、地域コミュニティの活性化などの取り組みを指す。

【社会的ニーズ】
多くの組織と協働し、都市空間の「みどりの質の向上」を目指す

都市空間全体で「みどりの質の向上」をはかるには、⾏政、事業者、⺠間団体などの各組織が連携しながら⾃然を活⽤した解決策(NbS)※7となる取り組みを推進することが大切です。
チャリティハーブガーデン活動は江東区におけるモデルケースとして機能しており、緑地の拡充により地域の生きものの生息環境を確保するだけでなく、四季の豊かさをもたらし人々の過ごしやすさにも貢献する施策として期待されています。

⾏政からの声

  • チャリティハーブガーデン活動は「事業者による先進的なみどりの街づくりを進める活動」として、区民が⾃然とふれあい生物多様性へ配慮するきっかけづくりの場になっているため、今後も行動変容を促す活動モデルとして期待したい

NPO法人からの声

  • ハーブガーデンをとおした園芸活動が、人々の生物多様性への意識醸成にもつながっている。今後は地域のグリーンインフラ※8の基盤となるような活動に成長してほしい

市民団体からの声

  • 花苗基金の取り組みにより、各コミュニティガーデンに様々な草花が生まれている。一年をとおしてガーデンに花が咲けば、集まる生きものも多様化するため、引き続き連携し活動を活性化していきたい

  • ※7
    NbS:Nature-based Solutions。河川沿いに植林したり緑地を設けることで、水害を防ぎ洪水リスクを低減するなど、自然の力を利用して生態系と人間いずれにも利益をもたらす方法で社会課題を解決すること。
  • ※8
    自然環境へ配慮しながらその恩恵を引き出し、人々のWell-beingの向上など複合的な社会課題への対応を目的とした取り組みのこと。(例:コミュニティガーデン活動、自然環境教育、景観形成など)

【課題とニーズを踏まえたチャリティハーブガーデンに関する主な取り組み】

NECソリューションイノベータは、チャリティハーブガーデン活動をとおして東京都や江東区、NPO法⼈Green Works、市⺠団体みどりネットKoto、地域住民、NECグループなど多様なステークホルダーと連携しています。この活動では、生物多様性に配慮したガーデニング手法を心がけ「栽培→収穫→活用→販売→寄付→栽培」といった循環型の取り組みを意識することで、参加者が生態系サービスや天然資源などの「自然資本」の恩恵に気づくきっかけを提供するとともに、人的交流の促進をはかることを目指しています。

[ガーデン整備:栽培]

新木場は埋立地という生きものが生息しづらい土地柄であり、在来種を持たない状態から、生きものが集える環境づくりを目指して取り組んできました。

<例:生物多様性に配慮したガーデニング手法>

  • ハーブは、乾燥した土地に合った品種(ラベンダー、ローズマリー、マートル、オリーブなど)を選定。年間をとおして花がリレーして開花する多年草を植え、ローメンテナンスで蜜源の絶えない空間づくりを行う
  • 環境省の「生態系被害防止外来種リスト」などを参照し、環境負荷の少ない植物を選んで、多様な生きものの蜜源となるよう多品種を植栽する
  • 刈り取った枝や雑草などはゴミとして処分せず、根元を覆うように敷くことで、土壌中の生物多様性や植物の健全な成長を促す

[ラベンダーまつり:収穫]

毎年、ラベンダーが満開になる6月にガーデン整備と地域交流を兼ねて「ラベンダーまつり」を実施し、当社やNECグループの社員、江東区内のコミュニティガーデン団体の皆様を中心にご参加いただいています。ラベンダーの香りの中で参加者同士が交流を楽しみ、摘み取ったラベンダーはチャリティ販売に活用しています。

[加工品づくりなど:ハーブの活用]

摘み取ったラベンダーを乾燥させて獲れた粒を全国各地の参加者(NECグループ社員)に送り、各々の自宅でサシェ(香り袋)をはじめとした加工品づくりに取り組んでいます。完成した加工品は、江東区民まつりなどの地域イベントでチャリティ販売します。そのほか収穫したハーブは、本活動の裾野拡大と知識啓発を目的とした社内講座の開催時に活用しています。

[江東区民まつりへのブース出店:チャリティ販売]

江東区最大級のイベントである「江東区民まつり中央まつり」にブース出店しています。2024年度はサシェやブーケのチャリティ販売、ハーブ石けんづくりを行い、2日間で約900名の方に購入や体験をしていただき盛況でした。販売するブーケには花苗基金で育った区内の花が使われており、地域内での循環を意識した取り組みになっています。

[花苗基金:寄付]

江東区民まつりで集まった寄付金は、主に江東区内のコミュニティガーデン事業における花苗代としてみどりネットKotoに寄付しています。江東区内のコミュニティガーデン団体はこの10年間で80団体以上にまで拡充しており、活動をさらに盛り上げるためにも花苗基金の重要性が増しています。

― NECソリューションイノベータが描く未来 ―

生物多様性に配慮したコミュニティガーデンづくり

世界では「生物多様性」への関心が高まり、東京都もこれにならい2050年に向けた取り組みの一つとして「市街地内のみどりの質の向上」を掲げています。こうした背景の中、当活動では多様なステークホルダーと連携しながら、生物多様性に配慮したコミュニティガーデンづくりを目指しています。将来的には定期的な生きもののモニタリングによる情報収集を行い、ガーデン内の動植物の現状をデータベース化することで、生物多様性保全に関する社会的な機運の高揚につなげていきます。

活動をとおした地域交流と人々の行動変容を促進

本活動は2006年の開始以来、当社だけでなく江東区各地のコミュニティガーデン団体と連携した取り組みとして地域に根づきつつあります。地域住⺠や各団体、社員同⼠の交流を創出しながら、⼈々が⾃然や⽣物多様性の価値を認識し、⾃分ごととして捉えていく⾏動変容のきっかけづくりになっています。今後もガーデニング活動をとおして憩いの場を提供し、一人ひとりのWell-beingの向上につなげていく考えです。

Project Story

都市のみどりを創造する再現性あるモデルとして期待

浦 靖憲

近年、社会全体で生物多様性への配慮が求められています。江東区では「みどりの基本計画」の後期改定が予定され、国や東京都の生物多様性戦略を受けた「(仮称)江東区生物多様性地域戦略」が2026年3月までに策定される予定です。江東区が目指す「みどりの中の都市(CIG :CITY IN THE GREEN)」の実現には区民、事業者、区が協働し、それぞれの役割を果たすことが重要です。
本活動は、区民との協働や緑化活動団体への支援など、江東区における緑化活動の先進的事例であると認識しています。
将来的にはこの活動が、ほかの事業者や地域にも広がって相互作用が生まれ「地域住民の行動変容を促す活動モデル」として地域全体の緑化や生物多様性への貢献が進むことを期待しています。

循環型の取り組みを構築することでグリーンインフラの基盤に

三浦 香澄

Green Worksは誰もが楽しく参加できるコミュニティガーデン活動を通じ、気候変動や生物多様性への気づきを促すことを目指しています。NECソリューションイノベータさんとは江東区経由で紹介を受け、ハーブ植栽に関するアドバイスや品種選び、植栽イベントの企画など、活動の基盤づくりを支援してきました。
公共のガーデンには多様な植物がありますが、ハーブは鑑賞だけでなく食材やクラフト材料として活用できることが魅力です。本活動ではこの特徴を活かして、社員や地域企業、地域住民が参加できる仕組みが構築されています。特に年間をとおした循環型の取り組みは、活動の持続可能性と社会貢献性を実現しており、共感しながら今日までご一緒してきました。
今後は土壌や生態系への理解を深める勉強会や地球環境を学ぶイベントを通じ、生物多様性への意識をより高めていきたいです。緑化の質が重視される時代に本活動を地域の基盤とし、グリーンインフラとしての価値をさらに高めるため、引き続き連携して取り組んでいきます。

花苗基金を活用し生物多様性に配慮した環境を広げたい

東方 陽子

みどりネットKotoは、2016年より江東区からの委託を受けて区内のコミュニティガーデンを支援し、地域住民とともにみどりに親しむ体験や活動を実施しています。NECソリューションイノベータさんが地域への還元を検討する中で、寄付先としてマッチングしたことがきっかけでつながりました。
チャリティ活動は途上国の就学支援をはじめ、東北、熊本の震災復興支援や環境保全団体への寄付など多岐にわたってきました。その中で「花苗基金」を通じた地域のコミュニティガーデンへの継続的な支援には、活用団体から「寄付金のおかげで適した花苗を購入できるようになった」と喜びの声が寄せられており、大変感謝しています。
今後、NECソリューションイノベータさんには、生物多様性を学ぶ場として、ガーデン活動をさらに周知いただくことを期待しています。私たちはその受け皿として花苗基金を活用し、多様な生きものが生息できる環境づくりを共に進めていきます。

地域のみどりを広げ、持続可能な未来へ歩む

本活動のきっかけは、2005年から続けている社屋周辺の清掃活動でした。社員から「ゴミ拾いだけでなく、花壇づくりをとおして街を美しくしたい」という声があがり、地域の景観美化と地域交流を目的にハーブを活用した植栽を企画しました。また、デスクワークが中心となる業態を踏まえ、活動を通じて五感を刺激することで、社員自身のWell-beingや環境意識向上にもつなげたい考えがありました。
活動開始にあたり、江東区の紹介でGreen Worksさんや東京都と協力体制を築きました。2014年からは花苗基金を通じてみどりネットKotoさんと連携し、地域の緑化推進やコミュニティガーデンの活性化に貢献しています。基金で育てた草花はチャリティ販売用ブーケにも活用され、地域全体の緑化意識を高める一助となっています。
今後は当社も大都市東京における小さなみどりのネットワークの一員として、生物多様性の視点で活動を可視化し、社員をはじめとした人々のさらなる意識向上に貢献していきます。また、本活動を通じて、自然資本の価値を多くの人々に認識してもらい、地域とともに持続可能な未来を築いていきたいです。

平野 智也

UPDATE:2025.03.14

参考情報