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< 第3回 >
環境から社会全体へ
—HDTが描く未来

[事業成長のためのエンジン]

環境から社会へ広がる
HDTの可能性

[事業成長のためのエンジン]

環境から社会へ広がるHDTの可能性

< 全3回 >

< 第3回 >

環境から社会全体へ
—HDTが描く未来

左から
株式会社三菱総合研究所 先進技術センター 主任研究員 但野 紅美子 様
イノベーションラボラトリ プロフェッショナル 日室 聡仁
明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授 後藤 晶 様
以下敬称略

ヒューマン・デジタルツイン(以下、HDT)の可能性は、環境施策の検証にとどまりません。ヘルスケアや教育、災害時の避難行動、地域のエリアマネジメントやコミュニケーション構築など、人の理解と協力が欠かせない領域に広くニーズがあると考えられます。実際海外では、生成AI(以下、AI)を用いた仮想の町や都市を構築し、人の行動や相互作用をシミュレーションする研究が行われています。

NECソリューションイノベータは大学や研究機関と連携し、HDTの社会実装に向けた研究を進めています。その一例が、人やAIとの対話が、人の環境に配慮した行動にどのような影響を与えるかを検証した「ごみ処理ゲーム」です。

この実験では、経済学で用いられる公共財ゲーム(個人の行動が集団全体に影響する実験手法)をもとに、ごみ分別への協力をテーマに設定しました。具体的には、参加者同士で話し合えるケースと話し合えないケース、また、人だけで話し合うケースとAIが対話に加わるケースの比較です。その結果、参加者同士で話し合えるケースの方が、話し合えないケースと比べ、ゲームの後半におけるリサイクル行動が促進される傾向が見られました。さらに、AIが対話に加わるケースでは、その傾向が強まる可能性も示唆されています。

さらにNECソリューションイノベータでは 、三菱総合研究所と共同で、HDTを政策立案に活用する研究にも取り組んでいます。三菱総合研究所の但野紅美子氏は「ヘルスケアや教育、エリアマネジメントのように、社会全体で見るとやった方が良いと分かっていても、個人の納得感や行動が伴わなければ進まないテーマは多い。HDTは、そうした分野でより良い選択肢を検討するための基盤になり得る技術だ」と語っています。

一方で日室は、行動に結びつかない人を理解することにも課題があると感じています。HDTは行動に結びつかない背景を読み解く手がかりになる可能性がありますが、その実施には設計段階からプライバシー保護を組み込み、技術の利用範囲や判断のあり方を適切に定義しておくことが重要です。将来、HDTを活用していくためには、どこに使うべきか、どこには使うべきでないのかの判断軸を透明化し、社会的な理解を得ながら慎重に進めていくことが求められます。

日室は「将来は『まずHDTで試してみる』ことが、マーケティング活動や政策検討の選択肢のひとつとして当たり前になるかもしれない」と展望します。環境領域での取り組みは、その第一歩です。
HDTは、施策を実施する前に人がどのように受け止め、どのような行動につながりそうかを確かめるための手法として、今後様々な場面で活用されていくことが期待されています。

プロジェクトのポイント

気候変動や資源循環といった環境課問題は、社会全体で解決すべき重要なテーマです。しかし、環境に配慮した行動は一人ひとりに委ねられており「重要性は理解されていても、なかなか行動に結びつかない」のが実情です。そのため自治体などでは、行動を促す様々な施策(制度や仕組みづくり)を講じていますが、どの施策が本当に効果的なのかを見極めることは難しく、実施してみるまで成果が分からないという課題があります。
NECソリューションイノベータは、こうした課題を解決するため、仮想空間で人の行動を再現するヒューマン・デジタルツインを活用し、行動変容を促す施策の効果を事前に検証する新たなアプローチに取り組んでいます。

UPDATE:2026.04.21