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コラム
テレワーク導入の8つの手順|注意したいポイントも解説

UPDATE : 2021.03.26
時間や場所の制約にとらわれず、働くことのできるテレワーク。多くの企業で導入が進んでおり、特にこの数年は働き方改革や新型コロナウイルス感染症の流行で導入が加速しています。
しかし、「うちの会社はまだテレワークを実施できていない…」という企業も決して遅すぎるということはありません。
いざ導入しようと考えた際には、事前に何を検討すればよいか、どのような手順を踏めばよいかが分かりにくいものです。この記事では、テレワークの基本と導入手順について解説しますので、スムーズなテレワーク導入のためにも、ぜひ参考にしてみてください。
INDEX
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テレワークとは
- 在宅勤務
- モバイルワーク
- サテライトオフィス勤務
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テレワークを導入するメリット
- 生産性の向上
- 人材確保
- 業務コストの削減
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テレワーク導入時に注意したいポイント
- コミュニケーション量が減る
- 情報漏洩のリスクが高まる
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テレワークを導入する8つの手順
- 1.テレワークの導入目的を決める
- 2.テレワークの対象範囲を決める
- 3.社内規則・業務について現状把握する
- 4.導入計画を立てる
- 5.実施環境を整える
- 6.社内説明会を開く
- 7.テレワークのトライアルを開始する
- 8.導入効果を評価する
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テレワーク導入時に申請できる助成金
- テレワーク定着促進助成金
- そのほかの助成金・補助金
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テレワークを導入した企業の成功事例
- 導入が難しい職種もテレワークを実現している味の素
- 現場社員もテレワークを利用できるようになったパルコ
- 部門別にアプローチし業務効率化に成功した日本航空
- まとめ
テレワークとは
テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用して、場所や時間にとらわれずに働くこと、また、その働き方です。働く場所に応じて「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」の3つのスタイルがあります。
在宅勤務
テレワークの在宅勤務とは、自宅で業務を行うものです。自宅に敷設されたインターネット回線と、個人所有もしくは会社から貸与されたパソコンなどの機器を使って業務を行います。通勤がなくなることにより、それによる心身の負担がなくなり、またパンデミックの際には密集を避けられる効果があります。
モバイルワーク
移動中の車や電車、カフェなど、外出先で場所を選ばずに業務を行うテレワークのスタイルがモバイルワークです。主にノートパソコンやタブレットのような高機能なモバイルデバイスを用い、携帯回線や施設で準備されたWi-Fiスポットなどを活用して業務を行います。
仕事をする場所から解放されるようになるため、自社に戻らずに複数の訪問先を回りやすくなるなどのメリットがあります。
サテライトオフィス勤務
企業のサテライトオフィスやシェアオフィスやコワーキングスペースで勤務するスタイルがサテライトオフィス勤務です。
サテライトオフィスでは、什器やプリンターのような機器が準備されていることから、初期費用を抑えられます。また、通信費・光熱費も安く抑えられる傾向があり、敷金や礼金など不動産にかかわる費用がなくなるケースも少なくありません。
関連記事:「テレワーク」と「リモートワーク」はほぼ同義。使い分けや在宅勤務との違いなどを詳しく解説
テレワークを導入するメリット
テレワークのメリットにどのようなものがあるか、代表的なものをご紹介します。
生産性の向上
一般的にテレワークは通勤時間の削減が図れます。通勤のための心身の疲労を軽減させられることから、人的なリソースを最大限業務に向けることができます。
また、外回りの多いスタッフがモバイルワークを取り入れることにより、報告や次の資料の準備をモバイル環境で行えるようになるため、自社に立ち寄る必要がなくなります。
時間の節約により、本来行うべき訪問先の増加や、訪問先ごとのサポートの充実化を図れるようになります。
関連記事:「テレワーク時代の人事政策 -抜本的な働き方改革、生産性向上へ向かうために」
人材確保
テレワークの導入は、離職者数の低下と採用機会の増加も期待することができます。
厚生労働省が発表した2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概要・5 離職理由別離職の状況によりますと、結婚や出産・育児、介護・看護などの個人的理由は、すべての離職理由の11.5%に及んでいます。テレワークで働く場所の制限がなくなれば、こうした事情を抱えたスタッフも、生活と仕事のバランスを調整しながら在職し続けられる可能性が高まるでしょう。
また、場所を問わずに勤務できることから、これまで対象にならなかったような遠方在住の人材も採用できるようになります。
業務コストの削減
テレワークの推進により通勤の必要性が著しく小さくなり、通勤費の削減が見込めます。通勤が不要になれば、オフィスのサイズを縮小したり、オフィス自体が不要になったりとオフィスコストの削減も可能となります。
また、サテライトオフィスで勤務した場合は初期費用やランニングコストの削減に加え、営業職のような外出の多い部門の拠点をシェアオフィスにした際には、スタッフの人数分よりも小さな規模の契約にすることで、費用をさらに圧縮できます。
テレワーク導入時に注意したいポイント
メリットの大きいテレワーク。しかし、やみくもに導入すればよいというわけではありません。ここでは、発生しやすい課題とその対応について解説します。
コミュニケーション量が減る
テレワークでは従業員同士のコミュニケーションが減少します。思わぬ伝達ミスや確認漏れ、業務効率の低下を招く可能性があります。
業務上の打ち合わせだけでなく、ちょっとした立ち話、休憩室やランチでの雑談を含めたものがオフィスのコミュニケーションです。それらと比べた場合、オンライン会議ツールなどを活用しても、コミュニケーション不足となってしまうのがテレワークの課題と言えるでしょう。ツールの上手な活用や、些細なことでも気軽に電話をかける、オンラインMTGをこまめに設定するなど、話しかけやすい雰囲気づくりに気を配ることが重要です。
関連記事:「【在宅勤務にも対応】社内コミュニケーション活性化の方法“8選”!」
情報漏洩のリスクが高まる
オフィスの外で作業をすることが増えるテレワークでは、情報漏洩のリスクが高まります。
カフェやコワーキングスペースでは、後ろからパソコンの画面を覗かれたり、通話の声を第三者に聞かれたりする可能性があります。施設などで提供されるWi-Fiの中には通信が暗号化されていない危険性もあるため、覗き見防止ソフトの使用、フリーWi-Fiは使用しないなどの対策を行う必要があります。
また、在宅勤務で自宅の機材を使用するケースでは、セキュリティレベルの低さが問題になることも。パソコンを家族と共用で利用する場合、家族の誤った操作でコンピューターウイルスに感染し業務に影響が出ることもあります。
モバイルワークでは盗難・紛失の可能性も高まるため、テレワークに利用する端末のセキュリティ管理をどのように行うか、しっかりと対策を考える必要があります。
関連記事:「テレワーク導入によるセキュリティリスクとは?企業が行うべき対策も解説」
テレワークを導入する8つの手順
利便性と注意のポイントが分かったところで、導入手順の検討を進めましょう。テレワークの推進では、端末やICT環境を整えることと同じくらい労務環境や規則面を整えることが大切です。
これらの注意点を8つのポイントに分類し、説明します。
1.テレワークの導入目的を決める
テレワーク導入のメリットの項では「生産性の向上」「人材確保」「コスト削減」などを紹介しました。テレワークを導入するにあたり、どのメリットを得たいのかを明確にすることで、製品やサービスの選定や導入後の効果測定が楽になります。
2.テレワークの対象範囲を決める
テレワークは限られた業務・対象者に対してスモールスタートではじめ、状況を確認しながら対象範囲を広げていく方が定着・成功しやすくなります。テレワークは主にデスクワークの業務に対して適用しやすく、人やモノに直接触れる業務では適用しにくくなるためです。
例えば、育児や介護の事情で在宅勤務にしたいというスタッフを対象に、育児期間や療養期間を認めるルールを作ってから始めてみる、プログラマーなど作業場所を選ばず、作業環境と集中力のバランスが重要なスタッフから在宅勤務やモバイルワークを始めてみる…など、適用範囲を決めてからスタートし、軌道に乗ったら対象範囲を広げていくと良いでしょう。
3.社内規則・業務について現状把握する
テレワークの実行は、就業規則に違反していないことが前提となります。また、給与制度・勤怠管理・人事考課・情報セキュリティガイドラインなど社内にある様々なルールが、テレワークにどのような影響を与えるかを検討しなければなりません。
時間外勤務の実態を把握しづらくなったり、人事評価の基準があやふやになったりしては実運用時に困ります。
テレワークで変更になる業務や評価と社内ルールの整合性が取れるよう、現状をしっかりと把握しましょう。
4.導入計画を立てる
テレワーク推進にあたり、担当者や予算を決め、実行に関するスケジュールを組むことが大切です。テレワーク適用スタッフの業務や属性、テレワークの種類によって必要なハードウェア・ソフトウェア・ネットワーク環境が変わってきます。
これらを踏まえ、まずは下記の計画を立てると良いでしょう。
- 対象者の選定
- ツールの選定
- 導入時期の決定
- 期間や頻度の決定
- テレワークに対応した規則やガイドライン、方針の決定
- テレワーク対象者への教育
- テレワーク制度自体の評価や改善のPDCAをどのように回していくか
5.実施環境を整える
「4.導入計画を立てる」の項でも紹介したように、ツールや制度を決めなければ、対象者が安心してテレワークに向かうことができません。実施環境について、以下「ルール作り」と「ICTの環境」に分けて解説します。
就業規則の変更・テレワークのルール作り
就業規則をはじめ、給与制度や勤怠管理、人事考課や情報セキュリティガイドラインなどの社内ルールの中で、テレワークにかかわる部分を再度確認し、必要ならば改定しましょう。
例えば、就業場所を自社オフィス内のみとするような規定がある場合には変更したり、始業~終業時間の定義づけを行ったり、残業の概念をどのように取り扱うかを定めたりすることが必要です。
また、テレワークに必要なインフラを企業と従業員のどちらが準備するのか、検討することも重要になってきます。
<例えば>
- 自宅にブロードバンド回線を引いていない場合は?
- 自宅のパソコンが業務に適していない場合は?
- モバイルワークを適用するスタッフの通信費用をどうするか?
- オフィスアプリケーションやセキュリティソフトウェアなど、テレワークに必要なソフトウエアをどのように支給するか?
- マイクやWebカメラなど、テレワークに必要なハードウェアをどのように選定し準備するか?
これらを踏まえ、テレワーク用に業務用のパソコンを貸与するか、補助金を提供するか、社員への持ち出しを要請するかなどのルールを作成しましょう。
ICTツールの導入
テレワークを行うためには以下のようなICTツールが必要不可欠です。
- Web会議システム
- チャットツール
- グループウェア
- 勤怠管理ツール
- タスク管理ツール
こうしたツールはSaaSで用意されているケースが多く、自社ルールに合うツールを探すよりも、ツールに合わせて運用ルールを定める方がスムーズに決定できます。
6.社内説明会を開く
決定したルールや情報の取り扱いについて、社内説明会を開催しましょう。テレワーク対象者だけでなく上長や管理者にも参加してもらい、双方が納得し、協力しあえる体制づくりが求められます。テレワーク対象者の同僚などにも十分な説明がないと、部門内で不平等感が生まれることもあります。どのような目的で、どのような効果を目指してテレワークを行うか、理解を得ることが重要です。
また、新しく導入するICTツールについても操作説明会を行うと良いでしょう。実際にテレワークが始まるとサポートをしづらくなるため、顔を合わせやすいうちに不安を取り除いておきましょう。
7.テレワークのトライアルを開始する
余裕をもってトライアル期間を設けるとスタッフも安心できます。テレワークは働き方の大きな変革が求められる制度変更です。そのため、導入直後は制度面・ツール面ともにトラブルや障害、調整が発生することが想定されます。
開始直後の調整や、人事評価や待遇の面まで考えてのテストを考慮すると、繁忙期でないタイミングから始め、数か月のスパンでトライアルを行うと良いでしょう。
また、特に開始したばかりの頃はシステム面・運用面で手厚くサポートできる体制を整えておくことも大切です。
8.導入効果を評価する
事前に期待した導入の目的に応じて、その効果を測定しましょう。
- 目的は達成できたか
- 新たに生まれた課題はあるか
- その課題はテレワーク環境で解決できるか
などを確認し、本格導入の検討を行います。
効果測定は本格導入後も定期的に行い、対象者とのコミュニケーションを欠かさないようにすることが大切です。
テレワーク導入時に申請できる助成金
テレワークの導入には機器の購入やサービスの契約で初期コストが発生します。その負担を下げられる助成金を、省庁や自治体・財団に申請できるケースもあります。テレワークの計画時には、助成金の申請ができるかどうか、チェックしておくと良いでしょう。
テレワーク定着促進助成金
テレワーク定着促進助成金は、公益財団法人 東京しごと財団によるテレワークの定着・促進に向けた環境整備に対する助成金制度です。
常時雇用する労働者が2名以上999名以下で都内に本社または事業所を置く企業が対象で、都の実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加していることなどの条件があります。
助成金の上限は250万円(助成対象となる経費(税抜)に助成率(3分の2)を乗じた金額)。支給決定から3か月以内に完了する取り組みが対象です。
※テレワーク定着促進助成金の受付は2021年2月26日で終了しています。
そのほかの助成金・補助金
2020年度には厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」や経済産業省の「IT導入補助金」などの助成制度がありましたが、現在は募集が終了しています。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策として地方自治体や財団で助成金・補助金制度を設けている場合がありますので、申請が必要になったタイミングで補助金制度を探してみましょう。
補助金・助成金情報の検索サイト「補助金ポータル」などで確認できます。
テレワークを導入した企業の成功事例
テレワークを導入し、成果を出している企業もすでにあります。成功事例を自社のテレワーク導入計画の参考にしてみてはいかがでしょうか。
導入が難しい職種もテレワークを実現している味の素
味の素株式会社では2017年から「どこでもオフィス」と名付けたテレワーク制度を導入しています。経営企画・情報・人事・総務部門から構成される働き方改革事務局を設置し、全社への浸透を図っています。グループ社員が活用するコミュニケーションツールはテレワーク利用者の声を反映させて改善を図るなど、導入後も積極的により良い環境づくりを進めています。
普通ですとテレワークがしづらい工場の生産オペレーターも、工夫することで事務作業を集中して自宅でできるような日を作り、実現に向かうことができています。
現場社員もテレワークを利用できるようになったパルコ
商業施設「PARCO」で知られている株式会社パルコでは、在宅ワーク制度を2015年からトライアル実施、2017年3月から正式導入しています。部分的な運用をしながらテストと改善を繰り返し、テレワーク対象者と非対象者の不公平感がなくなるような制度作りを実現しました。
モバイルパソコンやスマートフォンを全社員に配布するなどICTの活用・拡充を行い、多様な働き方を可能にする社内制度も随時取り入れています。
導入後もあゆみを止めることなく、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づいた働き方をさらに見直し、すでに導入した在宅勤務やテレワークの制度を、さらに促進していくよう環境を整備しています。
一部の社員だけが利用できる福利厚生になるような不公平感が出ないよう、全社員が納得できるルールを設けることで、現場や接客部門が抱きがちな不公平感を払拭することに成功しています。
部門別にアプローチし業務効率化に成功した日本航空
日本航空では2014年から在宅勤務制度のトライアルをはじめ、改善しながらテレワーク制度を導入しました。また、2017年からはテレワークの制度を活用した「ワーケーション」(ワーク+バケーションの造語。観光地などでテレワークを活用し、働きながら休暇を取る制度)「ブリージャー」(ビジネス+レジャーの造語。出張先で滞在日数を延長するなどして休暇を取れる制度)を実現しています。
また、業務上、在宅勤務の対象外となるパイロットや客室乗務員には、紙ベースで持ち歩いていた緊急時のオペレーションマニュアルを、国の許可を得ることでタブレットへの配信に変更しました。これによりマニュアルのアップデートが効率化しています。
部門の特色に応じてアプローチを変えることで、現場の部門と間接部門の不公平感を拭い去るよう工夫しています。
まとめ
働き方改革は、長時間労働の是正を目指す法制度化などの外的要因と、企業自身が向上していく内的要因の両面から求められています。テレワーク制度の実現はその両面にアプローチできますが、利用ツールや実施方法を誤ると効果が表れにくくなってしまいます。
NECソリューションイノベータの「NEC 働き方見える化サービス Plus」は、テレワークにおける従業員の意識改革や生産性向上、課題解決などをサポートします。ご興味のある方は、リーフレットやホワイトペーパーをダウンロードしてみてください。
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