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コラム
金融システムの開発とは?
課題を解決した事例やベンダー選びのポイントを解説

UPDATE : 2025.05.16
金融システムとは、銀行や証券会社、保険会社などの金融業界で使用されているシステムの総称です。その内容は多岐にわたり、全容が見えづらいと感じている方も多いかもしれません。そこで本記事では、金融システムの主な種類から開発の流れ、ベンダー選びのポイントまで、すべて解説します。
INDEX
- 金融システムとは?
- 金融システムの主な種類
- ①勘定系システム
- ②営業店システム
- ③注文管理システム
- ④対外接続システム
- ⑤オンライン決済システム
- ⑥仮想通貨(暗号資産)取引システム
- 金融システムにおける課題と解決策
- 金融システムの選び方
- 金融システムの開発とその重要性
- 金融システム開発の流れ
- 金融システム開発の重要性
- 金融システムの開発会社を選ぶポイント
- ①ベンダーに金融システムの開発実績をヒアリング
- ②複数のベンダーから見積もりを取りコストを比較
- ③ベンダーの技術力やセキュリティ対策を確認
- 金融システムの将来展望
- ①デジタル化が進む金融システムの未来
- ②金融テクノロジーとシステムの関係性
- NECソリューションイノベータが提供する金融業務支援
- 金融機関向け
- 信用金庫向け
- まとめ
金融システムとは?
金融システムとは、銀行や証券会社などの金融機関で利用される基幹的なITシステムの総称です。私たちが自由に預金や送金、証券取引ができるのは、これらのシステムが正常に機能し、資金の流れを支えているから。金融システムは社会インフラとしての役割が大きく、ひとたび障害が起こると経済や生活に甚大な影響を及ぼします。
たとえば過去には、みずほフィナンシャルグループは2021年2月から9月にかけて8回ものシステム障害を起こし、金融庁から業務改善命令が出されました。また、2023年に起きた全銀ネット(全国銀行資金決済ネットワーク)のシステム障害も記憶に新しいのではないでしょうか。この障害により、主要な10の金融機関で他行宛ての振り込みが滞ってしまいました。
このような最悪の事態を起こさないためにも、金融システムには特に高い信頼性とセキュリティが求められています。
金融システムの主な種類
金融システムにはさまざまな種類があり、用途に応じて役割が異なります。主に次の6つがありますが、その内容を詳しく見ていきましょう。
- ①勘定系システム
- ②営業店システム
- ③注文管理システム
- ④対外接続システム
- ⑤オンライン決済システム
- ⑥仮想通貨(暗号資産)取引システム
①勘定系システム
勘定系システムは、銀行や証券会社などの金融機関が、取引データを正確かつ迅速に処理するための基幹システムです。銀行口座の入出金や残高管理など、金融機関のメイン業務を担っていると言っても過言ではありません。勘定系システムにはオンラインとオフラインの2種類があり、オンラインはATMの入出金など、オフラインはクレジットカードの引き落とし業務などを行っています。
②営業店システム
営業店システムは、銀行窓口やATMなど、金融機関の店舗業務をサポートするシステムです。預金・出金・振込などの各種取引や顧客情報を管理するための機能を備えています。紙幣や硬貨を扱う現金処理機(キャッシャー)、融資や資産運用相談などの各種手続きに使われる端末、通帳の記入を担う通帳伝票プリンター、印鑑照合用のスキャナーなど、店舗内で使われている機器や端末がこれにあたります。
③注文管理システム
注文管理システムは、株式やFXなどの取引を行う際に、顧客からの注文を受け付けたり処理したりするシステムです。OMS(Order Management System)とも呼ばれています。注文の受付から約定、決済までを一元的に管理できるため、取引の効率化を図ることができます。
④対外接続システム
対外接続システムとは、金融機関の内部システムと外部のサービスをつなぐシステムです。たとえば、銀行と収納機関、銀行とクレジットカード会社が対外接続システムでつながっていることで、コンビニでの公共料金の支払いやカード決済が実現しています。クレジットカードの処理を行うCAFISやCARDNETなどの決済センター、JICCやCICなどの個人信用情報機関など、国内外のさまざまな機関と接続されており、セキュリティ対策が特に重要視されています。
⑤オンライン決済システム
オンライン決済システムは、ECサイトなど、インターネット上で商品やサービスを購入する際に使用する決済処理システムです。クレジットカード払いや銀行振り込みのほか、電子マネー決済、キャリア決済、コンビニ決済など、あらゆる支払い手段に対応しています。受注管理や在庫管理の機能を備えたオンライン決済システムもあり、EC事業者にとっては欠かせないものとなっています。
⑥仮想通貨(暗号資産)取引システム
仮想通貨(暗号資産)取引システムは、ビットコインやイーサリアムをはじめとした仮想通貨の売買を行うためのシステムです。仮想通貨市場は年々時価総額が上昇しており、大企業や機関投資家も参入するようになりました。その市場の拡大に伴い、多くの仮想通貨取引システムが開発されています。こちらのシステムではブロックチェーン技術を利用して取引を記録し、送金や受け取りを可能にしていますが、サイバー攻撃の標的になりやすく、高度なセキュリティ対策が求められます。
金融システムにおける課題と解決策
日本の金融機関における金融システムの導入は、部分的には進んでいるものの、全面的なデジタル化には至っていません。多くの金融機関はオンラインバンキングやモバイルアプリの導入を進めていますが、中小規模の金融機関では未だに手作業が多く残っています。
一方、金融システムを導入した企業もさまざまな課題に直面しています。サイバー攻撃への対応をはじめとしたセキュリティ強化、老朽化したレガシーシステムの更新、厳格な金融規制への対応、新しいサービスや技術への迅速な適応、運用・保守にかかる継続的なコストなどが主な課題として挙げられます。
解決策としては、クラウドやマイクロサービス化によるシステム刷新、AIによる不正検知の高度化、ブロックチェーンなど先端技術の導入、オープンAPIを通じたFinTech企業との連携強化、RegTech(規制対応テクノロジー)の活用による効率的なコンプライアンス対応など、さまざまな技術的アプローチが進められています。
金融システムの選び方
金融システムを選定する際は、まずそのシステムが自社に必要な機能(顧客管理、口座管理、取引処理、リスク管理など)を網羅しているかを確認します。次に確認するべきポイントは、画面や操作が直感的で使いやすいかどうかです。直感的なインターフェースと使いやすい操作性の金融システムを導入すれば仕事の効率も上がり、無駄も生まれません。
そのほか日頃から金融取引データを扱うため、高度なセキュリティ機能が備わっているかも確認しましょう。また、将来的な業務拡大に備えて、ビジネスが成長しても対応できる拡張性(スケーラビリティ)があるかどうかも検討する必要があります。導入後にトラブルが発生した際のサポート体制についてもぜひ併せて確認してみてください。
金融システムの開発とその重要性
続いて、金融システム開発の大まかな流れとその重要性について見ていきます。
金融システム開発の流れ
金融システムの開発は大きく分けて、要件定義、設計、実装、テスト、導入の順に進めていきます。

①要件定義:解決すべき問題や達成すべき目標を明確に定義し、実装したい機能をまとめる
②基本設計:要件定義をもとに全体のシステム構造を設計し、主要機能の概要を決定する
③詳細設計:基本設計を具体化し、各機能の詳細な仕様やデータ構造、画面設計などを行う
④実装:プログラミング言語を使用して、設計されたシステムをコード化する
⑤テスト:システムが設計通りに動作するか確認し、バグや不具合を修正する
⑥リリース:テストが完了したシステムを本番環境に展開し、ユーザーが利用できる状態にする
⑦保守/運用:システム稼働後の監視や不具合対応、機能改善など継続的なメンテナンスを行う
開発プロセス自体は、要件定義→設計→実装→テスト→導入という基本的な工程を踏む点では一般的なシステム開発と変わりません。しかし金融分野では、規模や性能、セキュリティ、法令順守など、多くの要素を考慮した慎重な設計・実装が求められます。
金融システム開発の重要性
高品質なシステムを構築するためのポイントは、まずユーザー体験を最適化した使いやすいUI(ユーザーインターフェース)設計です。UI設計が良くないと、ユーザーはストレスを感じて使う機会が減ってしまいます。次にポイントとなるのは、重要なデータを守る高度なセキュリティ対策。ここを怠ると、顧客の信頼を失うほどのシステム障害を起こしかねません。
他にも、将来的な事業拡張に耐えうるスケーラビリティの確保、業務効率化・自動化を実現する実用的な機能の提供なども高品質なシステムを構築するための重要なポイントです。もちろん、自社の業務要件に対応したシステムであることは必須です。
金融システムの開発会社を選ぶポイント
金融システムの開発を依頼する会社を選ぶ際は、総合的な評価が重要になってきます。まず確認したいのは、金融分野における開発実績が豊富で、業界特有の知識やノウハウを持っているかということ。また、高度な技術力を有し、複雑なシステムにも対応できる企業であることもポイントとなってきます。
他に見極めたいポイントは、金融機関向けシステムで求められる厳格なセキュリティ基準を理解し、万全のセキュリティ対策を講じているかということ。そのほか、提案内容と費用のバランス、企業の信頼性やプロジェクト遂行力、導入後のサポート体制なども含めて比較検討します。
①ベンダーに金融システムの開発実績をヒアリング
金融業界は高度なセキュリティやコンプライアンスが求められるため、ベンダー(開発会社)の選定にあたっては、まず金融関連システムの開発実績について詳しくヒアリングすることが重要になってきます。候補に挙がっている企業が過去にどのような金融システムを手掛けてきたかを確認し、自社の求めるシステムと類似するプロジェクト経験があるかを見極めます。金融分野で豊富な実績を持つ企業であれば、業界特有の要件や高い品質基準への対応ノウハウが蓄積されており、複雑な開発プロジェクトでも安心して任せられる可能性が高まります。金融業界特有の規制やガイドラインに精通しているかを確認しても良いかもしれません。
②複数のベンダーから見積もりを取りコストを比較
システム開発を外部に委託する際には、複数のベンダーに見積もりを依頼して、コストや内容を比較検討します。その際、各社が提示した金額だけでなく、含まれる機能やサービス内容、保守サポート範囲などもしっかり確認しましょう。ただ安価なものを選ぶのではなく、提案されたシステムの品質や提供されるサポート体制も含めて総合的に評価して、最適なパートナーを選ぶことが重要です。24時間体制のサポートや迅速なトラブルシューティング、定期的なシステムアップデートなどが提供されていると安心かもしれません。費用に関しては、プロジェクトの詳細を明確にし、複数の開発会社から見積もりを取ることで適正な費用感を把握できます。
③ベンダーの技術力やセキュリティ対策を確認
金融システムには高度な技術が要求されるため、最新技術や業界標準に精通し、高い開発スキルを持つチームかどうかを見定める必要があります。また、データ暗号化や脆弱性対策、アクセス権限管理など、セキュリティ面での取り組みも重要になってきます。特に金融業界では、セキュリティが最優先事項となるため、厳格なセキュリティ基準を満たし、継続的に安全対策を実施している企業を選ぶことが不可欠です。
金融業界はテクノロジーの進化が非常に速いため、最新の開発技術やプラットフォームに対応している会社を選びたいところです。たとえば、ブロックチェーン技術やAI、機械学習、クラウドコンピューティングなど、最新のテクノロジーを駆使していると良いでしょう。
金融システムの将来展望
モバイルバンキングやオンライン取引、AIを活用したリスク管理など、デジタル化は新たなサービスの提供やビジネスモデルの創出を可能にしています。デジタル化は今後ますます金融システムに影響を与えていくことは容易に想像がつきますが、その未来を知るにはデジタル化が金融システムにどのような影響を与えるのかを把握することが重要になってきます。
デジタル化が進む金融システムの未来
金融システムは、今後さらなるデジタル化の進展によって大きく変革していくことが予想されます。キャッシュレス決済の普及やAI・ビッグデータの活用などの最新技術は、金融サービスをより便利で高度なものに変化させていくことでしょう。
また、ここ数年で多くの金融機関がクラウドを積極的に導入しました。これまでオンプレミス型で運用していたサーバーやシステム環境をクラウドに置き換えたことで、コストの削減を実現。さらにブロックチェーン技術の導入によってリアルタイムかつ安全な取引基盤が構築されるなど、金融機関の業務効率化も一段と進む見込みです。
金融テクノロジーとシステムの関係性
金融システムの発展においては、FinTechとの連携も重要な位置を占めます。オープンAPI連携によって銀行のシステムとFinTechサービスが結びつき、新たな決済手段や資産運用サービスが次々に登場しています。QRコードを読み取って支払うスマホ決済、ユーザー同士で送金が可能なPayサービスをはじめとした決済方法のほか、クラウドファンディングやソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)、暗号資産など、ここ数年でさまざまなサービスが定着しました。金融機関もこうした技術を積極的に取り入れることで、顧客体験の向上や新たな収益機会を創出することが期待できます。
NECソリューションイノベータが提供する金融業務支援
NECソリューションイノベータでは、金融機関と信用金庫に向けて金融業務支援システムを提供しています。一つは金融機関向けの「取引履歴検索システム」、もう一つは信用金庫向けの「為替集中業務アウトソーシングサービス」です。二つの金融業務支援について詳しくご紹介します。
金融機関向け
NECソリューションイノベータが提供する「取引履歴検索システム」は、取引履歴の照会にスピーディーに対応し、トータルコストも削減できる金融機関向けシステムです。顧客からの取引履歴確認依頼や税務調査、警察からの照会といった各種照会に対し、誰でも簡単に操作できる画面と強固なセキュリティ機能によって、迅速な検索対応を実現。各営業店から専門の部署や専任のオペレータに申請して対応する従来のシステムでは、どうしても手間やコストがかかっていましたが、本システムではそれらの問題点を幅に削減しました。たとえば従来のシステムでは光ディスクの導入が必要でしたが、本システムではオープンなハード環境で動作するため、導入費やメンテナンスコストを抑えることができます。また、Webシステムであるため、従来人手を介していた取引履歴の照会を、営業店から直接行うことが可能となっています。
信用金庫向け
NECソリューションイノベータが提供する「為替集中業務アウトソーシングサービス」は、信用金庫の為替集中業務を一括して受託するアウトソーシングサービスです。各信用金庫の振込(為替)事務を、専門センターで一括代行。為替業務をアウトソーシングすることで、平常時・ピーク時を意識する必要はありません。また、FISC基準に準拠した高い安全性を確保しているため、安心してお使いいただけます。導入によって人員配置や設備投資、システム保守の負担が軽減され、事務コスト削減と業務効率化を実現します。
まとめ
金融システムは、資金の流れをスムーズにし、経済全体の安定と成長を支える重要な社会インフラです。金融機関の店舗業務をサポートする営業店システムからオンライン決済システムまでその内容は多種多様ですが、種類ごとの役割を理解し、直面する課題に適切な技術で対策することが、安全で効率的なシステム運用につながります。高品質な金融システムを構築するには、綿密な開発プロセスの遂行と信頼できる開発パートナーの選定が欠かせません。