経営意思決定のために会計データを利用した管理手法については、企業の規模や組織体制によって、以下の4つのレベルに整理できます。
- 売上&粗利でのマネジメント・サイクル確立
- 分権体制の確立
- 純粋な経営管理目的の指標の作成
- 将来予測
以下、上記4つのレベルについて解説します。
経営意思決定のために会計データを利用した管理手法については、企業の規模や組織体制によって、以下の4つのレベルに整理できます。
以下、上記4つのレベルについて解説します。
これは年初に売上高から営業利益までの予算を策定して、実績が集計できた際に、予算と実績を比較して、両者の差額を計算して原因を突き止める管理手法です。いわゆる「予実分析」です。予実分析をすることで、費用科目については、当初設定した予算と実績をかい離させないことで肥大化した組織に統制のある動きを与えることができます。言い換えれば、無駄な費用を抑える効果があります。売上高については、企業が成長するために必要な利益を獲得するための売上目標を達成できるかどうかの進捗度合を把握することができます。一般的には、以下のような表を作成することが多いと思います。
この管理手法には、以下のような課題を持つ企業があります。
結果的に、予実比較の数値や指標自体の作成に、膨大な時間と工数をかけているにもかかわらず、予算に信頼性のない企業が多く感じられます。予算を年初に策定した直後から、「達成できるわけがない」などと感じる社員が少なくない企業です。
さらに、予算と実績の間に乖離が生じた際に、「なぜ実績が予算通りにならなかったのか」という視点に偏った原因分析をする企業も多く見受けられます。このような偏った視点での予実分析の問題については、後述します。
会社規模が大きくなると、事業本部や事業部などの組織を設けて、意思決定を行う権限を委譲することで、より的確な判断をより迅速に行っていくことになります。そうなると、経営意思決定に必要な管理手法としては、会社全体から末端の事業単位までドリルダウンして、状況を把握できるようなやり方が有用になってきます。ドリルダウンのイメージは以下のような表の展開になります。
事業本部別や事業部別の損益情報などは、制度会計では求められていません。制度会計で求められている単位よりも細かい組織単位での情報です。したがって、税務申告や株主に報告するための決算書よりは、「より早く」「より頻繁に」作成され、各部門の責任者や経営者に報告され、彼らの意思決定に利用されます。経営スピードを上げる目的もあります。制度会計ほどの正確性を求めないことから「フラッシュレポート」などと呼ばれることもあります。
上記2つの管理手法もそうですが、従来の管理会計は、制度会計で求められている項目について、以下のように内容を広げてきた経緯があります。
そしてさらには、制度会計では全く算出する必要のない、以下のような指標も算出するようになります。
これらは企業が成長する上で注視すべき指標として、それぞれの企業の判断で使用されています。
上述した管理手法の根幹にある最大の問題点は、P-D-C-Aの「P」にあります。PDCAサイクルは、「P」の「プラン」、すなわち「予算」に信頼性がないとあまり意味がありません。多くの日本企業では、この「予算」に信頼性がないのに、予実分析に多大な工数をかけています。あまり意味はあるとは思えません。
「1.売上&営業利益でのマネジメント・サイクル確立」の最後に触れましたが、多くの日本企業は、予算と実績の間に乖離が生じた際に、「なぜ実績が予算通りにならなかったのか」という視点に偏った原因分析をしています。何が偏っているかというと、「実績」の分析に偏っている点です。実績はもう過去に終わっている活動の結果ですから、あまり細かすぎる追及をしても効果がありません。特に、経営意思決定をする上では役に立たないでしょう。「どうして実績が予算通りにならなかったのか」「それは費用を使い過ぎたからです」などと説明されても、経営者としては、もうどうしようもありません。
経営者の要求は、実績がそうなることを、もっと精度を上げて「予測」してくれるようになることです。正確な予測は、適切な資源配分につながるのです。いい加減な予算では、適切な資源配分はできません。盛りに盛った売上(適切な予測に基づかない売上)を予算計上した部門には、多額の費用予算をつけかねません。
したがって、予実分析でのあるべき視点は、「なぜ実績が予算通りにならなかったのか」ではなく、「なぜ正確な予算が組めなかったのか(予測ができなかったのか)」という視点です。そして、正確な予測をするために、差異が把握された予算を策定した「前提や仮定」を見直して、次なる「予測」の精度を上げていくプロセスに移行していくことが重要です。
このような経営意思決定のための「将来予測情報」の考え方や作り方については、セミナーでお話しいたします。
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