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人事・総務コラム 特定社会保険労務士 菊地 加奈子氏・第4回
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人事・総務コラム 特定社会保険労務士 菊地 加奈子氏・第4回残業ゼロ法案導入の可能性は? ~裁量労働制と高度プロフェッショナル制度~コラム執筆者:特定社会保険労務士 菊地 加奈子氏  掲載日:2018年7月31日

残業時間の上限規制が法制化し、企業はこれまで以上に徹底した労働時間管理が求められるようになってきました。
一方で裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度など、時間にとらわれない働き方についても議論が進んでいます(裁量労働制法案については見送りが決定)。働き方改革関連法案の一つとしても注目されているこれらの制度について解説します。

労働時間にとらわれない働き方の必要性

労働時間にとらわれない働き方の必要性

労働基準法では労働の対価に対して賃金を支払うことを義務付けていますが、労働の価値を図るうえで最も重要といえるのが労働時間といえます。月給制であっても企業で働く労働者であれば所定労働時間が決まっています。1か月働いた時間に対し、その人の能力や職務内容で価値が付加され、賃金が決まる。それが「労働」のしくみです。
一方で時間がまったく考慮されず、業務ごとに報酬を受け取る働き方は「業務委託」に分類されます。二つの大きな違いは“上からの指示を受けるかどうか”で決まります。業務委託は一定以上のスキルや専門性があり、業務の進め方や方法について指示を仰がなくても期限までに完遂できれば本人にゆだねられるという点で労働者性がないと判断されるのです。

そのため、適度に気分転換をしたりじっくり静かに考える時間を作った方がより効率的に進むような業務は労働時間よりも成果物の質で判断した方が適切だということで、労働の価値を時間ではなく成果で判断することが求められます。
労働基準法の例外的働き方をする人たちをすべて排除するのではなく、労働者性を残したまま新しい制度に適用させたのが裁量労働制であり、その発展形としての高度プロフェッショナル制度です。

裁量時間制とは?

裁量労働制は、「専門業務型」と「企画業務型」に分けられます。専門業務型とは、新商品、新技術の研究開発等の業務、情報処理システムの分析、設計の業務、弁護士や公認会計士の業務など、専門性の高い業務として認められた19種の業務に限定されています。
企画業務型裁量労働時間制は、事業場において事業の運営に関する企画、立案、調査および分析の業務など企業における中枢業務で適用されます。いずれも労働者の裁量にゆだねる必要があるため、実労働時間に対する給与ではなく、労使で協議した時間を労働したものとみなして給与が支払われます。注意したいのが、みなし労働時間制や裁量労働制は残業代が払われないと思われがちなのですが決してそうではなく、業務の遂行にあたって法定の労働時間を超えた時間を必要な時間と定めた場合は当然に超えた分が残業代の対象となります。
また、業務委託との一番の大きな違いは使用者に安全配慮義務があること。すなわち、労働者の健康確保措置というものが義務付けられています。時間に対して賃金が支払われなくても労働者の実労働時間を把握することや協定した時間との大幅な乖離があった場合には改定が必要になることもあります。また、休暇の付与や健康診断の実施なども行わなければなりません。
このように、裁量労働はまったく残業代が支払われない、業務だけでなく自身の健康管理なども自己責任ですべて労働者の裁量にゆだねられているというわけではなく、労働者として守られている面もあるということです。

高度プロフェッショナル制度とは

働き方改革関連法案の中でも注目が高いのが高度プロフェッショナル制度。
「高度プロフェッショナル制度」とは、高度な専門的知識が必要で、時間と成果との関連性が高くない業務に従事する労働者について、一定の条件の下に、労働基準法で定められた労働時間などに関する規制が適用されないことを認める制度のことです。
対象となる業務としては、金融商品の開発・ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発等が想定されています。
労働時間の長さに関わりなく、労働の質や成果によって報酬を定めることを可能にすることを目的としている点は同じといえます。

高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の違い

2つの制度が認められるための条件や、法的な効果には違いがあります。
まず、「高度プロフェッショナル制度」は、現時点では、年収1075万円以上の労働者に限られることが予定されていますが、裁量労働制の場合、年収要件はありません。
また、裁量労働制は労使で協議した時間を超えて働いた分に関しては残業代の対象になりますが「高度プロフェッショナル制度」では法定労働時間というものも労使で協議した時間というものも存在しませんので、残業という概念がありません。
いずれも労働者本人の裁量にゆだねられているとはいえ、長時間労働に対する残業代支払いもなくなると、制度を適切に運用していくための高い意識や細やかな健康管理がますます求められるようになるでしょう。

執筆者プロフィール

菊地加奈子氏

菊地 加奈子特定社会保険労務士

早稲田大学商学部卒。社会保険労務士法人ワーク・イノベーション代表。
企業における両立支援を実現するための人事制度構築や労務管理を行う一方で、企業内保育施設の導入支援・運営委託を全国に展開。
自らも1男4女、5人の子どもを育てる母として自社内に企業内保育施設を設置し、短時間勤務者の専門職種が多数活躍する組織を運営している。
厚生労働省 中央介護プランナー、神奈川県ワーク・ライフ・バランスコンサルタント。