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人事・総務コラム 戦略人財コンサルタント 鬼本 昌樹氏・第2回新たな人事部の使命コラム執筆者:戦略人財コンサルタント 鬼本 昌樹氏  掲載日:2018年1月9日

人事部の使命とは何か

人事部の使命とは何だと思うだろうか。

人事担当者でも明確に答えることは難しいかもしれない。実際に人事部長にお会いして確認しても、事務的な使命を言う人から、戦略的な使命を言う人までさまざまである。一方、経営者や管理職に同じことを聞いてみると、ほぼ事務的な使命のコメントが多い。戦略的な使命を果たしているコメントは聞かない。事務的な使命とは、たとえば、「サービスプロバイダー的な使命」や「人事手続きや制度作成の使命」などがその代表例であった。
今後の人事に期待する使命を聞いてみると、口をそろえて“戦略人事”と言う。これは、人事部が戦略的部門として機能することを意味する。その範囲も、本社だけでなく、国内・国外のグループ企業(連結決済の企業は必須)におよぶ戦略性を期待し、要求している。

人事と経営、人事と現場の管理職の間に、人事に対する意識の差は大きくかい離している。さらに、人事は現場を知らない。社員を知らない。各組織の組織戦略を十分に理解をしているわけでもない。また、人事の公的資格を持っているわけでもないのでスペシャリストというのは中途半端などというコメントは多かった。

人事部の使命とは何か

人事の顧客は誰か

この質問も人事にしてみると、「人事は営業や接待業ではないので顧客はいない」的な回答が返ってくる。顧客に対する認識が他の部門とは明らかに違っているように感じる。顧客の意味をさらに聞いてみると、商品やサービスを買ってくれるお客のことだと言う。間違いではないが、正解でもない。顧客には二種類の顧客がいて、人事が答えた顧客とは、外部顧客を意味している。P・F・ドラッカー氏の言う内部顧客(社内組織や利用者、従業員)のことを理解していないことが分かる。確かに広辞苑の定義は、外部顧客の記述しかないが、MBAでは内部顧客の定義もされている。

人事の内部顧客とは誰だろうか。
まず、一番重要な顧客として経営陣ではないだろうか。それは、経営の3大資源の“ひと”に対する重要な責任と役割を持っているからである。3大資源の内、もっとも重要な資源が“ひと”であると言う指導者は多い。人材の大切さを説いた名言も世界中にあふれている。“もの”やサービスは商品開発や営業、コンサルタント、エンジニアとった部門が担当し、“かね”は経理・財務が担当し、“ひと”は人事が担当する。それぞれが戦略を持って実施しなければ、経営目標の実現は厳しくなる。“ひと”における戦略-経営戦略を支える人事戦略を、人事が立案できない企業では、経営企画などが担当することになる。このような企業では、人事戦略は経営企画が担当し、人事は人事事務処理を担当していることも珍しい話ではない。

次の顧客は、現場の管理職ではないだろうか。経営戦略を具現化させるためには、現場の組織力が必要となる。ここでより具体的な求める人物像が浮き彫りになる。組織の戦略を実現させることができる人材の質と量の検討が必要となる。多くは、現場の管理職から必要な人材の定義と人数を確認し、特に、人員計画となる人数を予算枠に収める交渉をしている。組織戦略や事業戦略を自ら積極的に理解し、人事なりに必要な人材を分析する人事であってほしい。

次に従業員が人事の顧客となる。最近では、“適材適所の配置”が強調されている。個人の強みや特性・要望を活かした配置である。キャリアプランややる気の源泉、さらに、家庭の事情や状況も考慮した配置が求められる時代に入った。
“ひと”が最大限のパフォーマンスを出せる状況を整えてから、評価し処遇する人事制度を構築しなければならい。制度という名のルールで“ひと”を縛るような人事制度は排除しなければならない。
人事は現場に行って、あらゆる“ひと”と接点を持って現状を知り、現状の問題対応だけでなく、将来も見据えた問題を発見しなければならない。

再発してきた人事部不要論

日本の経済学者でもあり大学教授でもある八代尚宏著の「人事部はもういらない」(1998年)は有名な書ではないだろうか。人事が戦略的な使命を果たさないなら、人事は要らないと言っている。ある有名企業でも、「全員が人事」というスローガンで従業員が1000人を超えるまでは、人事部はいらないという。人事事務処理だけの部隊ならば、アウトソースしたほうが正確で速い、しかも安い。法的対応も専門家がいるので安心して外部委託できる。従業員情報は機密性が高いので外部に出せないと人事は人事を聖域化する。人事に食いつくと評価が下がり出世に響くと脅す。確かに人事の漢字を見てみると、「ひとごと」とも読める。こんな人事は不要になって当たりまえかもしれない。

話を戻すと、欧米企業の人事部の使命は、戦略的部門、経営や現場管理職のパートナーであり、従業員のパートナーでもある。人事部も潤沢に要員は増やせない。そのため、使命を明確に塗り替えて、役割分担も大幅に変えてきている。すなわち、戦略的パートナーの役割が大半を占め、人事の専門家としてのアドバイザー、変革エージェント、そして、サービスプロバイダーの役割が少し程度あるとい配分になってきた。人事の存在価値とは何か、を再度検討しなければ存在価値はなくなるのではないだろうか。

次回のタイトル:コンピテンシー基軸の人材開発

執筆者プロフィール

鬼本 昌樹

鬼本 昌樹戦略人財コンサルタント 代表

京都大学理学部、カルフォルニア州立大学ロングビーチ校理学部卒。
日本オラクル、GEキャピタル、米国ニューバランスにて、人事部長、経営企画部長、人事役員、取締役副社長を経験。強い企業を作る人材の活性化、人事部の役割の高度化で貢献する。
現在、人材活性マネジメント、労働生産性、人事部の戦略的役割への変革支援を経営人事コンサルタントとしておこなっている。
タレントマネジメントは10年以上の実績を持つ。
社会保険労務士、ファシリテーター(米国資格)、行動心理学(米国資格)