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人事・総務コラム 戦略人財コンサルタント 鬼本 昌樹氏・第5回
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人事・総務コラム 戦略人財コンサルタント 鬼本 昌樹氏・第5回人事に期待される役割とは コラム執筆者:戦略人財コンサルタント 鬼本 昌樹氏  掲載日:2019年1月18日

はじめに

1回目では、経営の成長戦略を実現する人事について理解を深めてみた。今回は、その人事の役割について、認識を深めてみたい。

成長戦略を具現させるための人事の役割とは何か

米国ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授が「Human Resource Champions」の書籍で発表したものを紹介してみたい。人事の役割について、いまから20年前に発表したものではあるが、日本企業は未だにこの役割に到達していないように思える。
その人事の役割とは、

  1. Strategic Partner (戦略的なパートナー)
  2. Administrative Expert (人事管理のエキスパート)
  3. Employee Champion (従業員のチャンピオン:従業員の代表として経営に伝える人)
  4. Change Agent (変革のエージェント)

ウルリッチ氏は、これまでの伝統的な人事では、人事の内部顧客である経営陣、管理職を含めた全従業員の高度な要望に対して、応えることができないと述べている。高度な要求とは何だろうか。当時の米国企業には、多くの解決すべき要求があったようだ。たとえば、世界進出した企業ではアメリカ標準からグローバル化への変革、従業員満足度の向上、ワークライフバランス、コンピテンシー(発揮された能力の意)の向上や人事評価の見直し、価値連鎖などの要求があった。今から、20年以上も前の話である。米国企業は、グローバル規模のビジネス戦略を展開していたが、この戦略を具現化させるための人事の役割は、もはやこれまでの伝統的役割の延長上にはなかった。特に、戦略的なパートナーと変革のエージェントの役割は、人事がこれまで全く想像すらしていない役割だと言ってもよい。しかも、伝統的な人事を何年も、何十年も担当してきた者にとっては、人事=聖域という思いが強かったようだ。

振り返ってみれば、変革の始まりも、会計のビッグバンから始まり、経営、製造、品質などと進み、聖域なき改革が行われてきた。なぜか、人事の改革は避け続けてきたものの、とうとう最後の改革として、人事にもメスをいれる時に入った。欧米企業は、この人事の仕組みを変えるだけでなく、役割そのものを変える人事改革を確実に進めた。その結果、欧米企業のトップ100を見れば納得できるのではないだろうか。

人事に期待される役割とは

役割のパラダイムシフトを起こすために

では、具体的に戦略的パートナーとは何だろうか。経営陣が人事に求める要望に、これまでのパターン化された定型処理業務中心から脱出して、経営に近い人事のアドバイスやアイディアが求められた。たとえば、イノベーションを起こすためにどのような人材が必要なのか、また、日本企業の脅威(20数年前の話)に対して人事的にはどのような対応をしなければならないのか、M&Aによるシナジー効果では、買収企業の従業員をどのように活用すればいいのか、などの質問・疑問に対し、人事のプロとしての的確なアドバイスが求められるようになった。すなわち、人事に対する事務作業レベルの業務から、経営戦略を支援するレベルに一気にあがった。経営戦略には、成長戦略や差別化戦略、さらに、変革戦略もあれば縮小・撤退戦略もある。このいずれの戦略においても、人員の配置は大きな課題であり、これを間違えると致命傷さえある。

経営陣は、戦略は立案しても、執行するのは「ヒト」である従業員である。経営陣が適切に人を掌握して配置ができなければ企業の存続は危ない。人事のプロとして「ヒト」の適材の配置とタイミング、部分最適化を脱出し全体最適化の視点から経営にアドバイスをすることが戦略的パートナーと言われている。

戦略的パートナーになるためには、人事自身が大きく生まれ変わらなければならない。まず、役割が変わるために、意識も言動も変えなければならない。言動を変えるためには、パートナーとなるための知識や能力を身につけなければならない。その手順を、以下のようにまとめてみた。

  1. 経営陣の期待や要望を明確に理解・納得する。
  2. 期待や要望に応えるための条件を整理する。
  3. 企業における経営理念、使命、ビジョン、事業計画、事業戦略を理解し腹落ちさせる。 ・外部環境と内部環境を分析し、 ・経営戦略を知り、実現するための成功要因を洗い出す。 ・成功するための課題を理解する。特に、人材の課題に関しては、課題解決を検討する。 ・実行可能な解決案に対し、根拠やファクトを準備する。
  4. 経営陣としっかりとした対話ができる能力と知識、態度を身につける。 ・この目的は、経営陣の良き理解者、フォロワーになるため。
  5. 現場の管理職と対話ができる能力と知識を身につける。 ・この目的は、管理職への支援や助言、問題解決を行うため。
  6. 従業員と対話、面談を行う。 ・この目的は、管理職との関係性、個人の要望や願望、やりがい、状況の把握を行うため。

これらを行うことによって、経営が目指す戦略を知り、それを実行する環境・状況を知り、現場を知り、従業員を知り、支援・助言・問題解決を、経営陣や管理職、従業員に行うことができる。さらに、戦略的パートナーになると、変革の必要性を感じる状況が必ずでてくる。人事は、経営陣に対しても、また、管理職や従業員に対しても幅広く見地があるため、全社を巻き込んだ変革には適任者となる。経営陣によるトップダウンの変革は、意外にも成功はしていないことがわかる。欧米優良企業100社を見てみると、ボトムアップによる変革が目立つ。経営陣は、方向性は示すが変革のリーダーにはなっていない。これは能力や経験の問題ではなく意図的に仕組んでいる。この変革のリーダーを務める適任者が人事であるとウルリッチ氏は述べている。
 人事が変革のリーダーとなるためには、まず、人事自身が変革を起こさなければ始まらない。これは、自分の体に自分でメスを入れるような痛みを伴うかもしれない。これができない場合、これができる中途採用者を採用する、または、外部の専門コンサルタントを起用することになる。人事がどこまで自分達自身で変わることができるか、著者も、かつての人事屋から戦略的人事部門へと生まれ変わることができたのは、覚悟と信念からパラダイムシフトへと繋がったと思っている。

執筆者プロフィール

鬼本 昌樹

鬼本 昌樹戦略人財コンサルタント 代表

京都大学理学部、カルフォルニア州立大学ロングビーチ校理学部卒。
日本オラクル、GEキャピタル、米国ニューバランスにて、人事部長、経営企画部長、人事役員、取締役副社長を経験。強い企業を作る人材の活性化、人事部の役割の高度化で貢献する。
現在、人材活性マネジメント、労働生産性、人事部の戦略的役割への変革支援を経営人事コンサルタントとしておこなっている。
タレントマネジメントは10年以上の実績を持つ。
社会保険労務士、ファシリテーター(米国資格)、行動心理学(米国資格)