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RPAコラム(人事部門) 池邉 竜一氏・第2回また変わる!?新卒採用ルールコラム執筆者:池邉 竜一氏  掲載日:2018年9月28日

また変わる!?新卒採用ルール

今日の経済活動において、人材不足が話題とならない日は無いほど、日本経済は、深刻な人手不足である。そんな中、人材調達の要である新卒の採用においては、加熱の一途をたどるばかりである。そもそも『新卒採用には、「公平・公正な採用」や学生の「学修時間の確保」などを目的とした『新規学卒者の採用・選考に関する倫理憲章』(以後、倫理憲章)というルールがあり、日本経団連が中心となって、新卒者の採用活動に関するガイドライン(主にスケジュール等に関する一定のルール)』※1が定められている。

しかし、こちら内容も移り気な状況で『日本経済団体連合会(経団連)の定例会見では、中西宏明会長が「2021年春以降に入社する学生向けの採用ルールを廃止するべきだ」と発言したことで、各方面に波紋が広がっている。企業にルール遵守を求めた安倍晋三首相、議論を歓迎する声をあげた経済同友会、早々に異論を唱えた大学など、その反応はさまざま』※2である。世界的に見渡しても、4月に新卒を採用して一斉に教育を始めていく仕組みは、日本独自のやり方であり、人事評価面や管理面から同期をつくり、競争をさせていくことは、高度成長期には機能したと言えるが、今日の多様化した市場ニーズに対応していく上では、陳腐化した制度と言える。

そんな状況下、最近では、この競争の在り方について、方法論の是非を問う話題が増えてきた。例えば、体育会系に所属していれば恒例と言える常識(先輩・後輩の年次差による序列)がそのまま経済活動の中でも温存されて組織運営の方法論、すなわち、軍隊的な指揮命令系統の維持に大きく寄与していた。しかし、今日の多様化した市場ニーズにおいて、常に移り変わる状況では、個々人で判断を下すことが重要な素養となり、統一された指示を待っているだけでは顧客を満足させることは難しくなってきた。

他にも陳腐化した話として、「文系」「理系」などの分け隔てを目安にして、業務の性質とマッチングするようなアサイン方法は、すでに「デジタルネイティブ」ともいえる世代においては、あまり意味をなさないと言える。そもそもデジタルとは、「0」と「1」の記号の羅列の世界であり、「デジタルネイティブ」世代は好むと好まざるとそのデジタル技術の恩恵と功罪の中で生きている。

また変わる!?新卒採用ルール

新卒世代はデジタルネイティブ世代

すべての知識がデジタルに置き換えられている世界、すなわち、ネットの世界には、すべての情報「人間の叡智」があると信じる「デジタルネイティブ」世代においては、リアルとバーチャルの境界線など感じることなく、疑問を覚えたなら、分からないことがあったなら、興味をもったなら、すぐさまネットで「探して」、これは「答え」だと信じられる情報にデジタルなロジックでたどり着く。そこにレコメンド機能が加わることで、そのロジカルな選択方法がさらに加速されていく。

このような生き方のなかで、彼らは、例えば、技術の伝承における徒弟制度のように、時間がかかるようなやり方は経験したことも、したいとも思わない。瞬時に何かを「知りたい」「わかりたい」刹那的な情報の消費に明け暮れている。

そんな「デジタルネイティブ」世代のことを世間では、あまりモノを欲しがらないと言う理由から別名「さとり世代」と名付けた。

モノを欲しがることが「正」であり、欲しがらないことは「悪」である立ち位置から、「さとり世代」と名付けることは一向に構わないが、そのような発想の基、今日の人手不足の状況下において新卒採用と向き合おうとしたなら、かなり悲惨な結果が待ち受けていると言えるだろう。

物事を体得する時間軸に変化が起きた!?

もはや、「デジタルネイティブ」世代にとって、例えば、寿司屋の下積みでコツコツと仕込み作業を滞りなく整えながら先輩職人の技術を盗み、長い年月をかけて、ひとつひとつ階段のステップを登り詰めていくような発想などない。
ネットで作り方の画像を探して、体験して、分からなければ、ノウハウを探して、また試して、それでもわからなければ寿司屋チェーンに体験入店で学ぶ時代。
「ずる賢い」のではなく、人間にしかできないことを本能的な経験をスピード感をもって欲する気持ち、すなわち、超速でユーザーエクスペリエンスを得たい気持ちが強いのである。

新卒が就職先のRPA取り組み状況を気にし始めた!?

そんな思考の持ち主に、社会人の先輩である我々が、「会社に入社したならば、まずは、人間関係のお作法や、物事の手順・手続きをしっかりと理解するため、会社の業務に慣れてもらうためにも定型化業務からスタートしよう!」などと言っていたりすると、せっかく採用できた新卒に、すぐに辞められてしまう羽目になりかねない。

もはや、「デジタルネイティブ」世代から見て、「企業におけるRPA導入」という情報は、つまらない業務を巻き取ってくれる部下(デジタルレイバー)を最初から自分に宛がってくれる前向きな会社だと好意的に受け止めるだろう。

今後の人事、採用戦略において、このデジタルレイバー導入を社内で積極的に取り組んでいることを「デジタルネイティブ」世代に情報発信して行くことは、若手の採用活動においては、ポジティブに働く時代がやってきたと捉えることが肝要である。

※1 MS-Japan HP内「3分でわかる」最新人事コラム第101回 より引用
https://www.jmsc.co.jp/knowhow/column/no101.html

※2 BUSINESS INSIDER JAPAN 経団連「東京五輪のために採用前倒し」計画が就活ルール廃止にすり替わった本当の理由 より引用
https://www.businessinsider.jp/post-174921

執筆者プロフィール

池邉 竜一氏

池邉 竜一一般社団法人日本RPA協会 理事

キューアンドエーワークス株式会社代表取締役社長。
1971年12月生まれ。大分県出身。慶應義塾大学経済学部卒業。
1999年7月、人材派遣業の株式会社アークパワー設立。2001年4月、同社代表取締役就任。2013年4月、キューアンドエーグループ傘下(NECネッツエスアイ連結対象会社)となり、2015年7月、キューアンドエーワークス株式会社に社名変更。エンジニア育成・派遣事業を中心に、テクニカル系コールセンターへの派遣、RPA市場においては業務改革(BPR、BPM)を通じてさまざまな人材の活躍の場を作り、新たな労働力の創出に取り組む。2016年7月、一般社団法人日本RPA協会の理事に就任。

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