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RPAコラム(会計部門) 池邉 竜一氏・第3回
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RPAコラム(会計部門) 池邉 竜一氏・第3回業務の思惑違いで「RPAゾンビ」発症の怪!?コラム執筆者:池邉 竜一氏  掲載日:2019年5月14日

ステークホルダーごとに異なるインセンティブ

会計とは、過去から現在における会社の活動を通じて、事業の成果(P/L)と保有する経営資源(B/S)と、現金の受け取りや支払いの流れ(C/F)をまとめた決算を基準に企業価値を把握、評価する「ものさし」であり、過去から現在の経営状況を的確に把握して管理する「道具」である。

この会計において、大別して「財務会計」「税務会計」「管理会計」があり、それぞれのステークホルダーに対して、良好な関係を維持するためのインセンティブが各々に働く。

まず「財務会計」では、株主・債権者に向けて、ポジティブな印象を与えるインセンティブが働く。次に「税務会計」では、税務署に対して、多少なりとも納税義務を少なくみせるインセンティブが働く。その一方で「財務会計」では、損金(費用)参入の項目、時期など「税務会計」と意見が分かれる相反的なインセンティブが働く。最後に「管理会計」においては、会社の経営状況が把握できる指標を設定して、内部の経営管理者に向けて、ガバナンスに準拠した報告(経営管理者が好むスタイルの数字報告など)をするインセンティブが働く。

以上から「財務会計」「税務会計」「管理会計」には、それぞれのステークホルダーと向き合った時に働くインセンティブが異なることがわかる。したがって、業務プロセスにおける優先順位もコミュニケーションの方法も、報告回数など、各々で違ってくることは当然に理解できる。

業務の思惑違いで「RPAゾンビ」発症の怪!?

過剰な内部統制が発生源!?

ところが異なるインセンティブが働く業務性質であれども「会計」はひとつであり、統一の基準・共通言語・コミュニケーションをもって、それぞれの会計性質がもつインセンティブの働きは仲良くやっていく必要がある。つまり、「会計」業務に関わる「人」・「もの」・「金(予算)」を最適化した状態で進めていく必要がある。すなわち、現在の業務水準が維持、向上される共通の仕組みづくり(内部統制)が必要となる。

しかし、この内部統制自体、過度なリスクヘッジの観点で設計された業務であればあるほど、業務水準の「改善」やRPA化によるデジタルトランスフォーメーション(DX)への挑戦に対して、強力な抵抗勢力となり得る。もちろん、ミス・不正を防止するには、十分機能しているのだが、そこで毎日「働く人」のことをまったく考えていない仕様であることが多く見受けられる。そこに新たな価値を生み出す「改善」意欲が湧いてくる仕掛けなど存在しない。端的に言えば、「いいからやれ」的な仕様となっているに等しい。いずれにせよ、内部統制における監視を目的とした業務の設計では、生産性の向上を図ろうとするモチベーションやインセンティブが働きにくい状況である。ましてや、そのシステムが陳腐化しているのであれば、尚更である。

ムダ取りせずに臨むは「RPAゾンビ」の餌食

そこでRPAを導入すれば、それぞれの会計業務が考える優先順位やコミュニケーションの方法、報告回数など多様な業務のリクエストに対し、面倒臭がらずに黙々とやってくれる。まさに「人がやりたがらない業務」や「システムの陳腐化」をRPAが補完してくれるので、モチベーションが低下する問題は解決できる!

と思いたいところだが、、、

まずは「人がやりたくなければRPAにさせてしまえ!」と無駄な業務か否かも判断せずにRPAで自動化してしまえば、問題が解決されないまま放置されることにもなりかねない。例えば、RPA化によってミスや不正は根絶されたとしても、そもそも人がやること前提で発生していたミス・不正を監視するためのステップをそのままRPAで運用され続けること自体、もはや「不要」「不毛」である。わざわざRPA化して生き長らえても、ゾンビと化した業務が『RPAゾンビ』として社内を徘徊するだけである。

「RPAゾンビ」を鎮めるには

まずは、いつ、どこで、誰が何の業務を何の目的で行っているのか?また、そのステップや帳票に価値はあるか否かの見える化、すなわち「業務の実態」を把握する可視化によって、その業務を廃止・削減できないのか?部門間のやりとりが多すぎるのではないか?など見直すことが重要である。特に会計部門の担当者においては、それぞれの業務によって各々違うインセンティブが働き易い性質がある以上、同じような業務を他部門で重複・転記・確認したりしていることは往々にして起こりうる。

いずれにせよ「改善」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の“旗振り役”は「ムダを省く」決意を基に、生産性向上につながる業務そもそもの目的を強く再定義し、それを実現するために“責任者”は担当者の役割と分担を明確にする。それを受けて、“担当者”は責任と権限を認識する。この前提から改めて業務に取り組むことで効率性を阻害するムダを自ら「改善」したくなる仕組みが作られる。

このような仕組みが作られた上でRPAが協働されてこそ、真の「働き方改革」と言える。

何卒、『RPAゾンビ』が徘徊しない業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させていただきたい。

執筆者プロフィール

池邉 竜一氏

池邉 竜一一般社団法人日本RPA協会 理事

キューアンドエーワークス株式会社代表取締役社長。
1971年12月生まれ。大分県出身。慶應義塾大学経済学部卒業。
1999年7月、人材派遣業の株式会社アークパワー設立。2001年4月、同社代表取締役就任。2013年4月、キューアンドエーグループ傘下(NECネッツエスアイ連結対象会社)となり、2015年7月、キューアンドエーワークス株式会社に社名変更。エンジニア育成・派遣事業を中心に、テクニカル系コールセンターへの派遣、RPA市場においては業務改革(BPR、BPM)を通じてさまざまな人材の活躍の場を作り、新たな労働力の創出に取り組む。2016年7月、一般社団法人日本RPA協会の理事に就任。