RPAコラム(管理部門) 池邉 竜一氏・第5回ホワイトカラーは何する人ぞコラム執筆者:池邉 竜一氏 掲載日:2019年8月21日
RPA導入を希望される企業のご担当者様に「オフィス・本社の人は、いったい何を作っているのですか?」と聞いてみると、実は、もごもごと説明がつかずに口ごもってしまう人が多い。その理由を聞いてみると、「一言でいえない」との答えが多く返ってくる。
そこで、趣旨を変えて「生産現場の人は、いったい何を作っているのですか?」と質問してみると、多少の表現の違いはあれども概ね「モノ作り」と明快な答えが返ってくる。
なるほど、ホワイトカラーの業務は一言で表現できず、生産現場の仕事ははっきり「モノ作り」といえるこの違いは、いったいどこからくるのだろうか?
その原因は、日々執り行っている業務のアウトプットが見えるか見えないかの違いであることにたどり着く。つまり、モノづくりは、現場で現物を現実的に手にとって見ることができる。原材料を仕入れて、加工して製品に仕上げる。モノづくりとは、良い品質の状態で効率的に加工を行い、いかにして生産性を高めていくかを常に考え「改善」し続けているサイクルであるといえる。
一方でホワイトカラーの業務における最終目的は、いったい何であろうか?あらゆる費用を取りまとめて、会計を締め「決算」を行い、経営管理者と株主に報告することだろうか?

ヒントは生産現場にあり!?
その解を考えていく上でのヒントとして、生産現場における「原材料」→「加工」→「製品」の流れを応用してホワイトカラーの業務の流れを考えてみると色々と見えてくる。
まず生産現場の「原材料」は、ホワイトカラーの業務における「情報の発生」に置き換えることができる。または「ドキュメントの発生」(文書・証書・記録)と言い換えることもできる。
この「原材料」=「情報(ドキュメント)の発生」の次にくる「加工」においては、そのまま「情報の加工」と言い換えることが出来る。それを「判断できる状態」にまで仕上げることが、すなわち、生産現場でいうところの「製品」になる。ホワイトカラーの業務とは、「情報の発生」から「情報を加工」して「判断・決断できる状態」までの一連の情報の流れ(入力→処理→記憶→出力)といえる。
そもそもホワイトカラーの役割としては、情報処理する事務作業全般とそれをマネジメントする管理者に大別できる。つまり、必要な情報を必要なときに必要な人に伝える業務プロセスを実現するためのスピードや精度を「改善」し続けるサイクルがホワイトカラーに求められているのだ。
IT投資の「つなぎ」にRPAは効く!?
そして、そのホワイトカラーの業務を効率的に行うための土台として支えてきたのが情報処理システムである。しかし、これを常に最新の状態に維持・管理することは、経営者の理解を得ることや予算の確保含めなかなか一筋縄ではいかないもので……。
「あるべき姿」を実現する上でのシステム投資に予算的な制約があることは当然であり、それを考慮せずに物事を前に進めることはできない。
場合によっては、「あるべき姿」の手前の「可能なかぎりあるべき姿」を通じて、現場での「改善」意欲を高めることも重要な取り組みである。いわゆる「つなぎ」として、RPAが語られ始めたことは大変喜ばしいことである。
その事例としては、以下4点。
- まずは、不定期にルールの変更が求められるシステムは、その都度システム改修していると、際限なく費用がかかるため、RPAを採用して、その一部を実装する取り組み。
- 次にRPAの持つ代表的な機能の一つである情報収集を行う「クローリング機能」を活用して、為替レートや相場など独自の管理会計指標(KPI)の基になるデータを収集し、報告書を完成させる取り組み。
- さらには、自社内に眠る様々なデータをRPAで繋ぎ合わせて、例えば、営業サイドの管理ツールと会計管理ツール、人事系管理ツールの個人データを横串しにすることで、個人の生産性を計る指標として仮想API連携のような取り組み。
- 最近では、統計解析、AI、ディープラーニングなど予測を立てるデータ収集をRPAが担う取り組みも増えている。
デジタルトランスフォーメーション戦略における真の抵抗勢力とは
このように表現すれば聞こえがいいのだが、現実のところ、上下関係による権威や横関係の他部署との縄張りが引き起こす負の抗争によって、これら取り組みの要である情報の流れが詰まる。受け渡しが途絶えるのはよく聞く話である。
情報化時代といわれて久しい昨今、あらゆる情報の収集を行うことで意味ある相関関係を模索することは、自社の中でダイヤモンドの原石を探すような行為に等しい。
しかし、その情報収集の一部が無関心な人によって阻害されることは実にもったいない。
やはり、経営、管理、担当者が同一の目線で、目標、活動、成果を目で見て管理することができる情報処理の共通言語化に取り組むこと、すなわち、「業務の可視化」に取り組むことこそ、今後の経営における最優先課題といえる。