初期費用200万円以下の無人店舗が登場 7つの最新事例とメリットや今後の課題を考察 | NECソリューションイノベータ

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コラム

初期費用200万円以下の無人店舗が登場
7つの最新事例とメリットや今後の課題を考察

UPDATE : 2021.06.25

中国やアメリカのコンビニやスーパーでブームとなった無人店舗。最新ICTにより非接触・非対面の決済が実現するため、コロナ禍を機に日本でも都市部を中心に普及が進んでいます。コンビニやスーパー以外の業種が参入するケースも今や珍しくありません。中には無人店舗の導入にかかる初期費用が、200万円以下に収まる店舗もあるぐらいです。

このまま国内で無人店舗の普及は加速していくのでしょうか。国内企業の無人店舗の最新事例と、無人店舗のメリットや導入の課題を詳しく解説します。

INDEX

  • コンビニ以外の業種も続々と参入 国内企業の無人店舗の事例7選
    • 地元の特産品が購入できるデジタルサイネージ型無人店舗(JR四国)
    • 最新ICTで未来のおもてなしを提供する無人書店(小学館/丸善ジュンク堂書店/セキュア)
    • ARデジタル試着×3D測定の靴無人店舗(羽田空港)
    • 初期費用200万円以下で店舗KPIの見える化を実現(アイスタイル/セキュア)
    • 本社ビルに顔認証で決済するレジレス型無人店舗をオープン(NEC)
    • オーダーメイドジーンズが注文できる無人体験型ショップ(FABRIC TOKYO)
    • 24時間営業の個室貸切型の無人ジム(ハコジム)
  • 無人店舗を運営する5つのメリット
    • 店舗の人件費削減や労働力不足の解消
    • 来店客の行動データを業務改善に活用できる
    • 顧客満足度の向上につながる活動に充てられる
    • 顧客層を拡大できる
    • 万引きや強盗などの犯罪を抑止できる
  • 全国への普及は程遠い 無人店舗の運営の課題
    • 採算が取れる出店地域・規模が限定される
    • 小売業界のデジタル人材の不足
    • 業種により完全無人の店舗運営はできない
    • 事前登録が必要なので使い勝手が悪い
    • 停電や故障時の対応を考えなければならない
  • まとめ

コンビニ以外の業種も続々と参入
国内企業の無人店舗の事例7選

人材不足の解消や新型コロナ感染症の対策に有効な無人店舗。最近コンビニやスーパーの無人レジだけでなく、様々な領域で無人店舗の実証実験が行われ始めています。一口に無人店舗と言っても、仕入れや陳列は人の手を使うケースもありますが、できるところから省人力化していく流れが進んでいます。ここでは、国内企業の無人店舗の事例を7つ紹介します。

*事例は最新情報を順に掲載

地元の特産品が購入できるデジタルサイネージ型無人店舗(JR四国)

JR四国グループでは、JR高松駅コンコースに四国の名産品や地場企業の商品などを販売するデジタルサイネージ型無人店舗を2021年4月27日に設置しました。この無人店舗は、ジョルダンが開発した次世代店舗システム「QRECS(キュックレス)」を活用したものです。

店舗にはデジタルサイネージとサンプル商品棚が併設されており、商品棚では商品の素材や商品を確認できます。商品購入はサイネージ上に表示されたQRコードを読み取り、Yahoo!ショッピング上で決済。購入した商品は指定された住所へ配送されます。Yahoo!ショッピングを利用するため、事前にYahoo!への登録が必要です。既存のeコマースと連携することで、店舗の在庫管理、決済、集客や個人情報保護などの問題をクリアしているのがポイントです。

最新ICTで未来のおもてなしを提供する無人書店(小学館/丸善ジュンク堂書店/セキュア)

2021年4月15日に小学館DIME編集部、丸善ジュンク堂書店、AIやセキュリティシステム・クラウドサービスを手がけるセキュアが、共同で新宿住友ビル地下一階にAI無人店舗「DIME LOUNGE STORE」をオープンしました。ここでは、DIMEの最新号やおしゃれなDIME別注グッズなどが購入できます。

「DIME LOUNGE STORE」は、セキュアが開発・運営する「AI STORE LAB」内に置かれた無人店舗です。顔写真で認証を行い、退店ゲートを通ると購入画面が表示されます。クレジットカードを登録していれば、決済ボタンをタッチするだけで買い物は終了です。センサー技術を活用することで、購入者が棚から商品を取った際に、正面のモニターで商品の詳細をチェックできます。手に取ったものの、購入しなかった商品の情報や万引き検知も可能です。

AIや顔認証など最新ICTを駆使した「DIME LOUNGE STORE」(画像提供:セキュア)

ARデジタル試着×3D測定の靴無人店舗(羽田空港)

羽田空港では2020年12月から、ARを使った靴のデジタル試着とフィットスキャナーで足の3Dサイズ計測を行う1坪サイズの無人店舗「Flicfit(フリックフィット)」を運営しています。AR試着では靴を履いた際の外観をシミュレートできるため、実際に履いているかのような姿で確認できます。

試着できない通販(EC)は「実際のサイズがわかりづらい」という理由で、靴は購入に結びつきにくい傾向にあります。同店舗では3Dサイズ計測を行い、選択した靴・サイズのフィット率をパーセンテージで表示。オンラインでも靴選びに失敗する確率が下がるでしょう。

決済はクレジットカードとAmazon Payで行い、購入した靴は後日自宅に郵送で届きます。店舗は在庫を抱える必要がないため、保管スペースなどの問題に悩まされる心配もありません。同店舗は、今後も利用者側とメーカー側の双方がメリットを得られる販売形態を目指しています。

初期費用200万円以下で店舗KPIの見える化を実現(アイスタイル/セキュア)

「DIME LOUNGE STORE」を手がけたセキュアは、化粧品・美容品総合サイト「アットコスメ」を運営するアイスタイルとコラボして、2020年7月から「AI STORE LAB」で化粧品などを販売する無人店舗の実証実験を行っています。5坪の小さな店舗の入店・退店は、顔認証IDプラットフォームサービスの「FreeiD(フリード)」を活用。小さなテナントであったため、無人店舗を運営するための初期費用(什器、顔認証ゲートなどを除く)は200万円以下に抑えられたと言います。

天井や商品棚にAIカメラやセンサーを50基以上設置し、来店客の導線や混雑状況の把握などが可能に。店舗KPIの見える化を実現しています。商品棚にはカメラ付きモニターを設置。棚の商品を手にするとアットコスメに投稿された口コミが表示されるので、利用者の生の声を参考にしながら買い物ができて便利です。

本社ビルに顔認証で決済するレジレス型無人店舗をオープン(NEC)

NECは2020年2月に、同社独自の顔認証技術を活用することでレジを通さずに決済が完了する「NEC SMART STORE」を本社ビル内にオープンしました。コンビニをイメージした同店舗は、顔認識技術のおかげで利用者は立ち止まることなく入店できます。商品を手に取りそのまま退店すれば決済は終了します。

店内には30台のカメラを設置。買い物客が棚から商品を取り出したり戻したりする際には、重量センサーなどの技術で商品を特定します。複数人が同時に買い物でき、途中で商品を棚に戻す動作をしても問題ありません。店舗の運営は、同社が小売業向けに構築した売上・顧客管理などの店舗システムと、Cludpick(クラウドピック)社のデータ解析システムとの連携で実現しています。

オーダーメイドジーンズが注文できる無人体験型ショップ(FABRIC TOKYO)

オーダーメイドスーツを販売するFABRIC TOKYOは、2019年9月から無人・3Dスキャンで採寸し、Webからカスタムオーダーできるアパレルショップ「STAMP」を都内に展開しています。LINEでユーザー登録した後は、都内に2拠点あるスキャンボックス(採寸のみをする無人店舗)に希望日を予約して来店。入店後は3Dスキャナーで身体をスキャンすると、わずか数秒で全身500万か所の3Dデータが登録されます。

2021年6月時点で注文できる製品はジーンズのみとなりますが、シルエットやカラーなどのカスタマイズが可能で、3DデータとLINEのアンケート結果などから商品を提案。オーダーから3~4週間でフィット感の高いジーンズが自宅に届きます。決済方法はクレジットカード、Google Pay、Apple Payの3種類から選べます。今後、同店舗ではジーンズ以外のラインナップを増やす予定です。

24時間営業の個室貸切型の無人ジム(ハコジム)

24時間365日営業の個人貸切型の無人ジム「ハコジム」は、広島・福岡に10店舗展開しています。個室内でウエイトトレーニングを行うため、入退場時以外に人と会うことがありません。コロナに感染する不安もなく、自分のペースでトレーニングに集中できます。希望に応じて、複数人やトレーナーとのトレーニングも可能です。

会員制で月額料金を前払いにしているため、予約管理システムで予約するだけでトレーニング日の登録が完了。初回利用時の手続きで取得するICキーを照合し、メインエントランスから個室へ入室できます。完全個室の貸切ジムにもかかわらず月額3800円(税抜)と低価格で運営できる理由は、シャワーやアメニティの設備を排除し、トレーニング器具の清掃は利用者自身が行うなど、コストカットを徹底しているからです。

無人店舗を運営する5つのメリット

新型コロナウイルス感染症の影響で人間同士の接触をできるだけ避けたいと考える事業者にとって、無人店舗は大きな魅力です。非接触で買い物ができるため、感染症対策として有効だからです。しかし、無人店舗のメリットはそれだけではありません。感染症対策以外の無人店舗を運営するメリットを5つ紹介します。

店舗の人件費削減や労働力不足の解消

無人店舗が運営できれば、労働人口の減少や人件費削減に対応できます。総務省の調査によれば、2040年には人口における65歳以上の高齢者が占める割合は、35%を超える見込みとされています。超高齢化社会による労働人口の減少は、これからの日本にとって避けることのできない現実です。労働人口不足の問題を解消するのに、無人店舗は有効だと言われています。

仮に完全に無人化できなくても、店員1人が受け持つ店舗を増やせるようになると省人化が図れます。クラウドサービスを活用すれば、店員のリモートワークも実現可能です。また、人手が減ることは、人件費の削減に繋がります。コストパフォーマンスの良い無人店舗を運営できればメリットは大きくなるでしょう。

来店客の行動データを業務改善に活用できる

無人店舗では来店客の行動データをシステムで取得できるので、リアルタイムの購買行動が可視化できます。システムにより、手に取ったけれど商品棚に戻した商品情報の取得も可能です。そのため店舗は来店客が「なぜ購入したか」だけでなく、「なぜ購入しなかったか」までも分析できるようになります。

こうした来店客の行動データの可視化は、商品棚の陳列改善の効率化や在庫切れによる機会損失の予防、顧客分析のコスト削減など、様々な角度から業務改善に役立つデータを収集できるメリットがあります。

顧客満足度の向上につながる活動に充てられる

無人店舗により、店舗関連スタッフは運営に携わる時間を削減できます。捻出できた時間を新しいサービスの開発や、サービスの質を高める「人間ならでは」の活動に割り当てることで、顧客満足度の向上が期待できます。デジタルに任せられることは任せ、人間でなければ判断できない作業に注力していくことで、同業他社との差別化が図れるようになるでしょう。

顧客層を拡大できる

無人店舗を運営すると、有人店舗と比べて営業時間を延長できます。今まで定休日としていた日や営業時間外だった時間に新たに顧客を迎えられれば、これまでとは違う顧客層に接触する機会が増えるでしょう。そうすることで、競合との差別化のヒントが出てくるかもしれません。

万引きや強盗などの犯罪を抑止できる

無人店舗では、事前にIDやクレジットカードの登録が必要となるケースがほとんどです。身元のわからない顧客が入店しづらい仕組みとなっているため、自然と万引きを抑制できます。商品の購入はキャッシュレス決済が基本となるため、レジの現金を狙う犯罪も減るでしょう。タッチパネルやWebで商品を選び後日配送するスタイルの無人店舗であれば、在庫を盗まれる心配もありません。

全国への普及は程遠い 無人店舗の運営の課題

無人店舗には様々な可能性があることを紹介しました。完全な無人店舗を体験していなくても、コンビニやスーパーで無人レジを使った経験のある人は、そうした便利さに気づいているでしょう。しかし、店舗運営の完全無人化には、様々な課題があります。その中でも主な課題を5つ紹介します。

採算が取れる出店地域・規模が限定される

無人店舗の運営にはカメラやセンサーの設置、アプリや決済システムの使用料金、端末の導入などの設備維持費が発生します。売り場の人員が不要になっても、商品補充やリモートで運営業務をサポートする人員が必要となるケースがほとんどです。運営にどれだけの人件費が必要となるのかを十分に見積もりした上で、システムの使用料を支払っても採算が取れる店舗でなければ導入は難しいでしょう。

また、現状では同時決済やカメラで追跡できる人数の上限もあることから、大規模店では容易に展開できません。そのため、無人店舗を運営して採算が取れそうなエリアや規模は、今のところ限定的です。今後の技術向上や設備、システムなどの低価格化に期待が高まります。

小売業界のデジタル人材の不足

無人店舗の運営は、AIや顔認証、センサー技術、サイネージなど様々な最新ICTの導入が不可欠です。しかし、運営側で最新ICTを使いこなすデジタル人材が少ないことも課題とされています。

業務改善に必要なデータ分析では、自社業務を熟知した上で分析力を持つスタッフが求められます。こうした人材を育成しなければ、収集したデータを有効活用できません。技術スタッフの問題は、SaaS形式のサービス拡大で解決できる可能性があります。しかし、データ分析スタッフは自社で地道に育成することが求められます。

業種により完全無人の店舗運営はできない

業種により完全無人の店舗を運営できません。例えばコンビニでは、商品補充やたばこ、酒などの年齢確認が必要な商品の販売には人員が必要です。公共料金の支払いや宅配便業務も自動化は難しいでしょう。業種・業務により自動化できるもの、できないものがあるので自社業務の棚卸しを行い、どこまで自動化できるかを把握しておくことが大切です。

事前登録が必要なので使い勝手が悪い

無人店舗の運営では、決済の簡略化や万引き防止などの観点から、利用者の事前登録が必要となるケースが多くあります。気軽に来店できる有人店舗と比べて、初回利用の手間がかかるので「使い勝手が悪い」と捉える利用者もいるでしょう。スマホのアプリ登録やWeb画面から決済の操作を行うこともあり、高齢者などは利用のハードルが高いケースもあります。

LINEやYahoo!ショッピングなどの登録情報と連携可能な無人店舗システムを導入することで、事前登録の手間を簡略化するなど初回利用のハードルを下げる工夫が必要です。

停電や故障時の対応を考えなければならない

無人店舗はAIやカメラ、センサーなどICTを活用するため、システムや電気設備の障害時には大きな影響を及ぼします。災害や大規模停電、店内のシステムで障害が発生した際にどのようにリカバリーすればよいか、BCP(事業継続計画)の観点から対策を考えておくことも求められます。

また、自動決済時に製品や数量が間違っていた際、どのように修正・対応するかも明確にしておかなければなりません。これらの運営計画を綿密に立てる必要があるでしょう。

まとめ

中国やアメリカで先駆けて普及が進んだ無人店舗。コロナ禍を機に、日本でもコンビニをはじめ様々な業種で展開しています。将来迫りくる超高齢化社会による労働人口不足への対応や、既存システムでは把握できなかったリアルタイムの来店行動の可視化など、業務改善に役立つ様々なメリットがあります。その一方で、無人店舗を運営できる業種や出店地域、規模が限定的であるなどの課題も少なくありません。

解消すべき様々な課題があるため、国内での無人店舗の普及はまだ実験段階と言えるでしょう。しかし、商業施設や店舗の無人化・省人化、顧客体験の向上を目指す動きが加速しています。今まで以上に無人店舗で便利に買い物できる日は近づいているのかもしれません。