カスタマーサクセスとは?意味や役割、事例などを解説 | NECソリューションイノベータ

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コラム

カスタマーサクセスとは?
意味や役割、事例などを解説

UPDATE : 2022.03.25

近年サブスクリプションサービスの広まりと共に注目されるようになったカスタマーサクセス。「顧客を成功体験へと導くための取り組み」であるカスタマーサクセスについて、本記事ではカスタマーサポートとの違いや注目される背景、役割、もたらす効果について事例を交えて解説します。

INDEX

カスタマーサクセスとは?
顧客を成功体験へと導くための取り組み

カスタマーサクセスとは、直訳すると「顧客の成功」という意味で、「顧客を成功体験へと導くための取り組み」のことです。単に商品やサービスを提供するだけでなく、積極的に情報提供やサポートを行い、顧客の成功および自社における利益の両立を目指します。カスタマーサクセスを実践するビジネス手法の代表的な例として、サブスクリプション(継続課金)型のサービスがあります。

カスタマーサクセスという言葉には2つの意味合いがある

カスタマーサクセスという言葉には次の2つの意味合いがあります。

1.企業経営における価値観や戦略的なテーマとしてのカスタマーサクセス
企業の理念や戦略的なテーマとして「カスタマーサクセス」という言葉が使われるケースがあります。この場合、企業が「何を大切にしているのか」を表明する意味合いで使用されます。

2.業務や取り組みとしてのカスタマーサクセス
たとえば「カスタマーサクセス部門」などのように、部署名や肩書きとしてカスタマーサクセスが使用されているケースがあります。この場合は、「業務や役割」を意味する言葉です。

本記事では、後者の「業務や役割としてのカスタマーサクセス」について解説します。

カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違い

カスタマーサクセスと似た言葉として「カスタマーサポート」があります。大きな違いとして、顧客の課題を解決するための姿勢が挙げられます。

・「待ち」が基本姿勢となるカスタマーサポート
通常、カスタマーサポートでは顧客サイドからのアクションが起点。その目的は主に顧客からの問い合わせに対応し、疑問や課題、不満などを解決します。

・「攻め」が基本姿勢となるカスタマーサクセス
カスタマーサクセスでは、サービス(商品)提供側がアクションの起点。その目的は、自社のサービスや商品によって顧客を成功や成長へ導くことです。

言い換えるなら、カスタマーサポートは「顧客の声を聞き、課題を解決することで顧客満足度を高める」であり、カスタマーサクセスは「顧客の成功体験のために、課題を予測して先回りする行動」となります。

カスタマーサクセスが注目される背景

近年では数多くのサブスクリプション型サービスが提供されています。そのため、特に海外ではかなり早い時期からカスタマーサクセスの取り組みが始まっていました。日本においてもサブスクリプション型サービスの普及にともない、その重要性が注目されています。その理由としては次の3点が挙げられます。

市場の成熟化

現代のビジネスは、グローバル化が進み技術や経済の国際化が飛躍的に進化しました。その結果、世界中のどこにいても、(ある一定のクオリティを持つ)製品やサービスの提供を受けることが可能となっています。
一方で、新たな製品やサービスを開発しても数ヶ月のうちに類似品が生み出され、機能や技術、価格などで優位性を保つのが難しいコモディティ化が起こりました。そのため、プラスアルファのサービスによる付加価値で差別化を図る必要が生じたのです。

サブスクリプションモデルの広がり

前述したように、近年は多種多様な製品と選択肢であふれ、コモディティ化が進む中、顧客の意識は商品そのものを所有する物理的価値だけではなく、利用により得られる体験や喜びなども重視する傾向へと変化しました。そういった背景で広がりを見せたのが定額制サービスの「サブスクリプション型」のビジネスモデルです。

サブスクリプション型では、購入(契約)をしてもらうだけではなく、解約されずに「使用を継続してもらう」ことが重要です。そのため、顧客の利用状況やその時の状態に応じて、継続的に「体験や喜び」といった価値を提供し続けなければなりません。

CRM(顧客管理システム)の普及

ビジネスのデジタル化が進み、多くの企業で顧客管理システム(CRM:Customer Relationship Management)が導入されました。顧客一人一人に対応できる環境が整ったことにより、顧客満足度を向上させるための施策を容易に実施することが可能となったのです。

カスタマーサクセスの役割

続いて、カスタマーサクセスが担う役割について、より細かくひも解きます。

LTV(顧客生涯価値)最大化

カスタマーサクセスが目指すべき最大の目的はLTVの最大化です。LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは、「ある顧客から生涯にわたって得られる利益」を意味し、購入したサービスや製品の利用を開始してから解約するまでに自社にもたらされた利益の総額を指します。以前までの買い切り型の消費であれば購入時がLTVのタイミングでしたが、サブスクリプション型においては、顧客が契約を継続し続ける限りLTVは増え続けることになります。このように、LTVの最大化を達成するにはサブスクリプション型のような継続的サービスが適しており、継続的サービスの成功には次に挙げる「継続率の維持」と「顧客満足度向上」が不可欠です。

継続率の維持

継続して利用してもらうには、まず顧客が製品やサービスを十分に使いこなし、価値を感じてもらう必要があります。そのため、製品やサービスを利用するうえで、疑問や不満を感じることがないか顧客へのきめ細かなサポートが欠かせません。
たとえば、アンケートなどを用いた聞き取り調査を実施するなど企業側から積極的にコミュニケーションを取り、疑問や不明点を解消するための働きかけを続けていけば、顧客の信頼感も上がり継続率も向上していくことでしょう。そのサービスや製品が仕事や生活に欠かせないものとなれば、長期間にわたる継続的な利用が期待できます。

顧客満足度向上

製品やサービスに不満が募れば、顧客は解約へと気持ちが向かいます。そうならないためにも、顧客満足度を常に意識しておくことが重要です。
一般的に顧客満足度は購入(契約)直後がもっとも高く、その後、徐々に下がっていく傾向があります。高い顧客満足度を維持するためには、改善と改良を繰り返し、製品やサービスの価値を提供し続けなければなりません。そこで重要となるのが顧客とのコミュニケーションであり、アンケートやヒアリングなどを継続的に行うことで得られた「気づき」を、製品やサービスにフィードバックして改善につなげる仕組み作りが重要です。
フィードバックによる改善は、利便性の向上につながるだけではなく、顧客にとって「自分が欲しかった機能が実装された」という喜びにつながり、さらなる満足度の向上が期待できます。

利用拡大(アップセル・クロスセル)

「継続率の維持」と「顧客満足度向上」が実現できたのなら、次に狙うのは「利用拡大」です。利用拡大の例としては、アップセルとクロスセルがあります。

・アップセル:よりグレードの高いサービスに移行してもらう
・クロスセル:別の商品・サービスを追加で購入してもらう

たとえば、オプションサービスを追加する場合がクロスセルとなり、標準プランからプレミアムプランに変更する場合がアップセルです。アップセル・クロスセルを達成することができれば、企業の収益増大につながり、LTVのさらなる向上が期待できます。当然ですが、顧客がアップセル・クロスセルの利用拡大に応じるには、基本となる製品やサービスに満足し「成功体験を得られている状態(カスタマーサクセス)」状態であることが大前提です。

カスタマーサクセスがもたらす効果

カスタマーサクセスが機能すると、さまざまな効果が得られます。ここでは、代表的な3つの効果を紹介します。

解約率の減少

カスタマーサクセスは顧客との積極的なコミュニケーションが不可欠であると先に述べました。そのようにコミュニケーションを図ることで、顧客が抱えている疑問や不満を拾い上げることが容易になります。先手を打った対策を実行できれば、将来起こりうるトラブルや顧客のネガティブな感情の発生を抑え、結果的に解約率の減少へとつながります。

ロイヤリティの獲得

製品やサービスでの差別化が難しい現代では、顧客が感じる企業(ブランド)へのロイヤリティをいかに高めていくかが重要です。顧客が達成したい目標を明確にし、達成するためのアシストを積極的に取り組み続け、製品やサービスの改善を継続していけば、顧客にとってその企業やサービスは目標に向かって共に進むパートナーのような存在となります。
その結果、顧客は企業やサービスに対してロイヤリティ(信頼や愛着)を感じるようになり、アップセルやクロスセルに対しても積極的に検討してもらえるようになります。

LTVの最大化による安定収益

LTVが向上すれば、安定的な利益を得られるようになります。また、アップセル・クロスセルでLTVのさらなる増大も期待できます。企業目線では、長期にわたって安定的な利益が見込めるため、経営面においても大きなメリットとなるでしょう。

カスタマーサクセスの事例

具体的なカスタマーサクセスの取り組みと、そのために利用されているさまざまなツールについて、代表的な例を4つ紹介します。

CRMを活用し顧客のゴール・KPIの達成に向けて支援(Salesforce)

カスタマーサクセスの草分けとも呼べる存在が、セールスフォース・ジャパンが提供しているCRM(顧客管理システム)の「Salesforce」です。カスタマーサクセスという用語は、同社の創業者であるマーク・ベニオフ氏が発案。同社では「顧客の管理」ではなく「顧客の目標」を視点としたカスタマーサクセスへの取り組みを進めており、膨大な顧客データを自動的に管理できる「Salesforce」を活用し、顧客の課題と目標に向けて具体的なKPIにまで落とし込む活動を行っています。
なお、NECソリューションイノベータでは、豊富な活用ノウハウを基にした「Salesforce定着化支援サービス」を提供しています。

徹底的にオンボーディングの成功に向けて取り組む(Sansan)

法人向け名刺管理サービスを提供しているSansan株式会社では、カスタマーサクセスのプランとして、「オンボーディング(*1)マネージメント」サービスの提供を行っています。また、オンボーディング支援だけではなく、個別のコンサルティング支援や対面のユーザートレーニングなど、顧客の利用率向上を目的としたさまざまなサービスを提供していることが特徴です。同社が行っている取り組みは、カスタマーサクセスのタッチモデル(*2)をプランに落とし込んで提供している点が注目されています。

*1オンボーディング:
オンボーディングとは、船や飛行機に乗っているという意味の「on-board」をベースにした言葉。製品などを一通り使える状態にするまでのプロセスを示す。

*2タッチモデル:
LTVに応じて顧客を分類して、それぞれの層に対して最適なアプローチを行う手法 。

サービスを使いこなせるだけでなく顧客の感情まで重視(Slack)

セールスフォース・ジャパンが提供するビジネス向けのメッセージアプリ「Slack」では、「Slackを使うことで顧客の業務が改善するか」をカスタマーサクセスの重要なポイントとしています。
顧客が必要としている価値を提供できているかを「導入(アダプション)」、「成熟度(マチュリティ)」、「感情(センチメント)」の3軸でスコアリングし、カスタマーサクセスの戦略を組み立てています。導入時の定着支援といった「使いこなせる」だけでなく、感情まで重視していることが特徴です。

顧客が成功に至るまでの中長期的ロードマップを描く(Adobe Experience Cloud)

MAやAI分析、カスタマージャーニー管理にデジタル広告プラットフォームなどさまざまな機能を展開可能なAdobe Experience Cloud。高機能で多機能なこれらのサービスを使いこなしビジネスに活かしていくには、低くはない技術的なハードルも存在します。そこでAdobe社のカスタマーサクセスは、顧客それぞれのステージに応じ、中長期的なサポートを展開。製品の真価を発揮しビジネスに役立てられるように、組織レベルでの定着に向けた取り組みを行っています。

カスタマーサクセスを始めるために

カスタマーサクセスを実現するためには、まずは顧客のデータを蓄積することが重要であり、蓄積したデータが増えれば増えるほど、インサイト発見率向上や分析の精度向上につながります。そして、蓄積した大量のデータを活用するには、CRMの存在が欠かせません。

CRM(顧客管理システム)の活用

顧客情報のデータベースとしてExcelが活用されているケースもありますが、大量のデータを扱い、企業全体でリアルタイムな共有を行うことには適していません。また、顧客情報が担当者ごとに偏りがあると、ノウハウが溜まらず、属人化の加速を招きます。カスタマーサクセスを実現するには購入履歴や契約情報はもちろん、問い合わせやアンケート回答などのコミュニケーション履歴や、顧客情報を漏れなく一元管理でき、なおかつ属人化を避けられるCRM(顧客管理システム)の活用が重要なポイントとなります。

まとめ

近年、カスタマーサクセス部門を持つ企業が増加しています、今後、サブスクリプション型のサービスのさらなる普及にともない、カスタマーサクセスの重要性は高まっていくことでしょう。カスタマーサクセスの実現には、SalesforceをはじめとするCRMの活用が欠かせません。カスタマーサクセスを効率的かつ効果的に顧客情報を一元管理できるCRMを活用し、自社製品・サービスのLTV最大化を目指してみてはいかがでしょうか。