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VR・ARソリューション / 特集・コラム
NEC VR現場体感分析ソリューション
開発者インタビュー
ミッションクリティカルな領域の教育訓練や危険体感訓練、
安全遵守教育、検証レビューなどにVRを活用することで、
お客様の課題解決を支援します。
2018年9月27日掲載

森口 昌和 イノベーション戦略本部
先端技術事業創造グループ マネージャー
はじめに、本ソリューションのコンセプトを教えてください
VRの利用が国内で認知され始めたのが5年ほど前であり、その頃ヘッドマウントディスプレイが世の中に普及し始めました。昔からVR自体はありましたが、それがより技術の発展により、安価で高性能な製品が使えるようになってきたということが、当社がVRソリューションの開発をはじめた経緯です。
5年ほど前から技術研究開発をおこない始めましたが、当初は検証レビュー、検証用途での実現でした。実際に工場で使われている3D CADをベースに、それをVR化することによって何か新しい付加価値は生まれないかという考えから技術研究開発をスタートしました。
はじまりは検証用途でしたが、それ以外にもさまざまな用途が見えてきました。日本と海外とをネットワークでつなげて、同じVR空間内で作業をおこなう遠隔コミュニケーションの用途であったり、設計段階でVR空間内で実物を見られるようにデジタルモックアップとして利用することで、手戻りを低減するなどの用途です。
さらに2016年度、VR元年を経てお客様から新たなニーズが出てきました。それが教育訓練へのVRの利用です。特にVRの利点としては、実際の現場では体験できないようなことを、仮想空間で体験できるということが大きなポイントといえます。このポイントを上手く利用することで、主にミッションクリティカルな領域、例えば車両火災、発電所の事故など、何かミスをした場合に大きな問題につながるもの、失敗から学ぶという経験が論理的にできないようなケースを、VRで現場を再現することで、教育訓練に応用することが増えてきています。
そういった経緯もあり、本ソリューションのコンセプトは、ひとつは教育訓練の用途、もうひとつは検証レビューの用途です。本ソリューションは広い領域にわたるプロジェクトの経験を積み重ね、VRの開発・導入を検討しているお客様のさまざまなニーズにお応えします。

どのようなお客様にご利用いただくことを想定していますか
前述の通りミッションクリティカルな領域、例えば航空、自動車、電車、電力、通信など、どのお客様もエンドユーザーに大きな問題が発生し、安全安心に関わるような課題を抱えているお客様からのニーズが非常に多いです。当社としても、教育訓練や危険体感訓練の用途や、安全遵守教育の用途を想定しています。
また、それをより発展させてチームワーク作業ができるようなマルチユーザーシステムを使うことによって、遠隔コミュニケーションであったり、マルチユーザー検証の用途で一緒に議論し合うような、次世代の教育訓練に取り組みたいというお客様を想定しています。
VRは実写を使った映像コンテンツとフルCGのコンテンツがありますが、
本ソリューションはフルCGのコンテンツを選択しています。フルCGを選択している理由を教えてください
本ソリューションをご提供させていただく場合は、基本的にフルCGを選択しており、実写を使うことはありません。実写を使ったコンテンツにはさまざまな制約があります。例えば、実写の建物は拡大はできても、建物の中にまで入ることはできません。フルCGであれば、建物の中にまで入ることができます。また、物をつかんだりなどの現場作業をおこなうにはフルCGである必要があります。
つまり現場を見るだけであれば、実写の映像でも実現できますが、本ソリューションのコンセプトである、現場作業を再現する場合にはフルCGが最も適しています。

フルCGコンテンツの制作について教えてください
フルCGコンテンツを作るにあたっては、お客様のご協力も必要になります。一例を挙げますと、フルCGコンテンツを作る場合、現場の写真や、現場の作業を再現するための動画などを提供していただく必要があります。
それ以外にも、3Dスキャン技術を使う場合は、実際に現地に伺ってスキャンをしてフルCGに取り込む場合や、現場の作業を拝見しながら、お客様の課題や教育の方針についてお聞かせいただき、フルCGに適用するケースなどがあります。また、VRで実現するシナリオに関する資料を提供いただく場合もあります。
さまざまなセンサーを利用してVRの中で現場作業をおこなえるコンテンツを実現していますが
現場作業を再現する上で重要となるセンサーについて教えてください
現在、一般的なVR体験としては、ヘッドマウントディスプレイを使って、視覚・聴覚をメインに体験し、ゲームコントローラーを利用して行動を実現するケースが多いのが現状ですが、当社では市販のヘッドマウントディスプレイやコントローラーだけではなく、さまざまなセンサーを利用して、実際の現場作業を再現しようという試みをおこなっています。
当社で次世代ヒューマンインタラクションといっているポイントですが、一例を挙げますと、力覚・触覚デバイスです。VR空間で物をつかもうとした場合、これまでのVR体験では実際に手が知覚することはありません。しかし、力覚・触覚デバイスを使用するとVR空間で物を触ったときに、指や手に振動を与えることで、本当に物をつかんだ、触ったなどの感覚を与えることができます。このようなデバイスで、VR空間で現場作業を知覚することが可能になります。他にも、首降りの位置トラッキングで視界が変わるだけでなく、目の動きを認識して視界を変えることができます。これを教育訓練に利用するなどのケースも出てきています。例えば、熟練者は作業をする上で注意すべきポイントを常に見ているが、初心者は見ていないなど、定量的な分析に応用することも可能です。また、最近では匂いデバイスなども登場し、嗅覚を知覚させることも可能です。
本ソリューションでは、このようにさまざまなデバイスの統合的な利用を実現し、現場作業を再現しています。

教育やトレーニングにVRを使用していますが、
教育やトレーニング後のデータの可視化について教えてください
本ソリューションは行動パターンや手順の学習だけではなく、技能伝承に利用することができます。例えば、全身センサーを使用し、熟練者の作業から得られたデータをVR空間にインポートして、さまざまな角度から熟練者の動きを閲覧したり、熟練者の動きにVR体験者の動きを重ね合わせて、どうすれば熟練者のような動きができるかを学習するなどの利用が可能です。
また、さまざまなセンサーを使用して、頭、手、身体の動きなどのVR空間で得られたデータを保存し、体験者が過去の自分の動きと比較することで、成長過程を知ることなどができます。このようにVR空間で体験するだけではなく、体験から得られたデータを元にして、さらなる教育やトレーニングに利用することができます。

お客さまの課題を知るために現場を検証すると思いますが、
現場を把握する上で、気をつけているポイントはありますか
VRを導入するにあたっては、お客様の課題、さらにお客様さえ気づいていない潜在的な課題を知って、はじめて価値あるVR体験をお客様に提供できると当社では考えています。
気をつけているポイントのひとつは、お客様の潜在的なニーズを知ることです。例を挙げると、ある建設業のお客様から三大災害を防止するためのVRコンテンツの制作をしたいというご相談をはじめに受けました。しかし、お客様からヒアリングをするうちに、お客様が得意としている専門領域における事故防止が、お客様の課題なのではないかと考えて、提案させていただき、適用したケースなどがあります。
気をつけているポイントのもうひとつは、実際の現場を見て、さらに実際に働いている現場の人から話を聞くことです。これにより、お客様に適したサービスを提案できると考えています。

実際に導入したお客様の評判はいかがですか
また、どのような成果が上がっていますか
本ソリューションを導入するにあたっては、プロトタイプを制作してから導入するという手順があり、導入に進んだお客様からの評判はよく、継続してカスタマイズや機能追加をするお客様が多いです。
世の中にある一般的なVRは、一度体験すると飽きられることもありますが、当社は長期的継続的に利用可能なVRの企画を重視しています。
実際、新入社員の研修でVRを利用しているお客様からは、VRを導入したことによって試験の合格率が上がったという声があります。本質的な理解を”身体で覚える”には繰り返し練習が必要ですが、業務の合間を利用してトレーニングをおこなうケースにもVRは適しているようです。

導入したお客さまから新しい要望などがあれば
教えてください
マルチシナリオの要望が増えてきています。火災訓練のVRを例にマルチシナリオについて説明します。火災が発生したとき「火が胸より下なら消火器で消す」、「火が胸より上なら避難する」というシナリオがあるとします。このシナリオもマルチシナリオのひとつといえますが、重要なのは「火の先端が胸の位置にあるときに避難するのか」、「火の中心が胸の位置にあるときに避難するのか」ということが主観的であるため、体験しないと正しい判断をすることができないという点です。
これを火災訓練の有識者からの意見を聞きVRで再現したことで、「逃げる」、「消す」の判断を体験から学習できるようにしました。また、火の発生するポイント、火の大きさなどさまざまな状況を体験するたびに毎回違うシチュエーションから学べるように複数のシナリオを用意しています。このように、VRでトレーニングをおこなうたびに新しい発見があるような状況を作ることで、現場に柔軟に対応するための教育につなげることが、基本的なマルチシナリオの考え方です。また、本ソリューションを導入したお客様からは、このようなマルチシナリオのニーズが非常に増えてきています。
NEC VR現場体感分析ソリューションの今後のビジョンについて教えてください
複数のデバイスやセンサーを統合して現場作業をどれだけ実現できるかという研究開発をおこなっています。例えば、自動車の開発では、これまでは新しい技術を開発しても、試作車を用意して、実際に走らせてテストしていたものが、全てVRに置き換えられたら、実際に試作車は用意する必要はなくなりますし、技術的な試作品も不要になり、運転中の安全性などの評価も全てVRで実施することができます。これまで必須であったテスト工程が全部VRに置き換えられるので、必要だったフェーズがなくなり、研究・開発フェーズのイノベーションのひとつになると考えています。
また、本ソリューションでは長期目線で継続的な利用価値のあるVR体験のご提供を目指しています。マルチユーザーやマルチシナリオもその1つです。例えば、教育用VRでは、体験するたびに新しい発見・気づきを学ぶことができれば、継続的な利用価値があると思います。また、レビュー用VRでは、遠隔コミュニケーションによりVR会議として継続的に利用することもできます。さらには、AI技術と連携し、多くの人がVRを利用するたびに、その利用の仕方に合わせてシナリオがアップデートされれば、時代遅れのないVR体験をすることができます。このようにVRは、これまで無意識に諦めていた可能性を実現することができるので、まずは一度ご相談ください。
VR・ビジネス領域の仮想現実
NEC VR現場体感分析ソリューション
バーチャルリアリティ(VR)技術とモーションセンサー技術を組み合わせ、仮想空間に現場を具現化して研修や検証を行うことで、危険認知や安全遵守教育、設計検証などの品質向上や効率化をご支援いたします。特に安全性やコスト、シーンの再現性などVRの特長をいかすことで、お客様に最適なソリューションをご提供いたします。