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EBPM支援サービス
自治体ソリューション「PowerAssistant」・行政業務ソリューション概要
政策資源を有効活用するための方法としてEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)の重要性が高まっています。自治体においてもEBPMの推進が求められる一方で、データ不足や分析環境の整備などの課題があります。EBPM支援サービスは、EBPMに必要となる公的統計データと分析機能を一括で提供しEBPMの課題解決を支援します。

新着情報
- 2024年7月
EBPMの課題
導入期の課題
- EBPMを始めたいがどこから手をつけてよいか分からない。
- テーマはあるがデータが未だない。既存のデータで簡単に始められないか?
- 政府統計e-Statを活用しようと思うが、データが大量にあってブラウザと格闘しなければならず挫折してしまう。
発展期の課題
- 可視化ツールや通常の分析ツールは持っているが、政府が要求する本格的なEBPM、「政策の効果検証」のやりかたが分からない。
- 大学などの他機関と共同研究や委託研究を行いたいが、データのやりとり、分析結果の共有を簡単に行う仕組みがない。
EBPM支援サービスで課題解決を支援
EBPM支援サービスは、行政機関の職員がEBPMを簡単に始めるためのクラウドサービスです。政策立案に必要となる公的統計データと分析機能を一括で提供します。さらに、本格的な政策効果検証のための分析機能も提供します。

政府統計分析機能によるEBPM導入・仮説発見アプローチ
新たな政策の検討や、現在の施策の改善のヒントを得るためには、公的統計データの分析による団体間比較が有効です。政府統計分析機能により、予め用意された1,000種類以上の統計指標から、自団体の特徴や課題を発見することができます。各指標を人口千人当たりで割った値など、弊社独自の追加データも提供します。

政策効果分析による効果検証・仮説検証アプローチ
信頼性の高い政策の効果検証を行う場合には、施策と目標の間の因果関係まで説明可能な、計量経済学に基づいた本格的な分析が必要となります。政策効果分析機能では、計量経済学の代表的な統計的因果推論手法のテンプレートを提供し、検討対象の政策に対する質の高いエビデンスを得ることができます。クラウド上での共有ディスクも提供し、関係者間でのデータや分析結果の共有を行うことも可能です。

導入効果
統計データの収集分析工数を大幅に削減
政府統計分析機能では、人口規模や、自治体区分(「政令市」や「中核市」、総務省が小規模団体を分類した「類似団体」等)などを指定し比較対象団体を簡単に選択することが可能なため、統計指標の選択と比較団体の選択が数十秒で完了します。そのため、政府統計e-Statデータを職員がブラウザから直接検索、ダウンロードして分析する場合と比較して大幅な工数削減が見込まれます。これにより、職員のデータ収集工数やデータ分析環境構築のコスト削減を支援します。

施策効果を定量的に明らかにする
政策目標に対する施策の効果を測定するためには、施策未実施の場合の目標値がどのような値であったのかを、信頼性の高い方法で推計することが必要です。本サービスが提供する統計的因果推論手法を用いることで、施策の効果を定量的に測定することが可能になります。
事例
■豊中市様
統計的因果推論を用いた当社のサービスを用いて、2022年7月~12月に豊中市と産業施策の効果検証を実施しました。
豊中市では、2019年1月より、産業誘導区域に対する奨励金制度の拡充や新たな補助金の創設を行い、企業立地施策(注1)を推進してきましたが、税収の増加額など施策の費用対効果を十分に検証できず課題となっていました。
そこで豊中市は、当社のサービスを用いて施策の効果を定量的に分析しました。
その結果、税収効果として2019年から4年間で統計的に有意な確率で固定資産税約2億円の増収効果がみられました。さらに、産業集約効果として工業系用途地域での工場床面積が78,387m2、倉庫床面積が12,679m2増加し、企業立地施策の有効性を確認することができました。

この豊中市の取り組みは、総務省の「Data StaRt Award ~第8回地方公共団体における統計データ利活用表彰~」(注2)で特別賞を受賞しました。
総務省の審査では、「差の差分析(注3)まできちんとできておりEBPMの模範的なやり方であること、素晴らしいEBPMの取り組み事例である」といった点が評価されました。
この成果を踏まえ、当社は2023年7月に「NEC EBPM支援サービス」をリリースしています。

生成AIによる政策提言機能
政策目標に関連する統計指標と他の統計指標間の相関を分析した結果一覧から、生成AIを用いて、政策立案に資する重要な統計指標5つ抽出し、抽出した指標との相関関係の解説、さらに抽出した指標すべてを俯瞰した政策案を提言する機能を提供します。
これにより、政府統計データの効果的な活用を支援し、職員の負担軽減をしつつ、AIによる多角的な分析を通じて、新たな視点で政策立案に寄与する政策案の創出をサポートします。

【生成AIにより強化された機能の特長】
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政策立案に資する重要な統計指標を選定
生成AIの活用により、これまでの相関係数の高さのみで判定するのではなく、有用性の低い指標などを除外して、政策立案に資する重要な統計指標を選定し、提示できるようになりました。これにより従来、統計指標間の相関関係を理解して重要な統計指標を見極めていた職員の作業をサポートします。 -
相関関係の詳細な解説を表示
選定された重要な統計指標と自団体の政策目標との相関関係について、生成AIを活用することで、詳細な解説を提供できるようになりました。これにより、職員にデータ分析の専門知識がなくても、統計指標間の関係性を理解しやすくなり、政策立案に向けた取り組みを効果的にサポートします。 -
全体を俯瞰した政策案の提案
選定された重要な統計指標を基に、生成AIが具体的な施策案を複数提案します。これらの提案は、データに基づいた客観的な視点と、AIの広範な知識を組み合わせて生成されるため、新たな視点から政策アイデアを得ることができます。
2024年度は、本機能をβ版として標準機能に無償で組み込み提供し、来年度以降、さらに機能を強化した正式版を有償オプションとして提供を開始する予定です。この期間を通じて、利用者からのフィードバックを積極的に取り入れながらツールを進化させ、自治体におけるEBPMのさらなる質的向上を支援し、自治体の意思決定プロセスの効率化と高度化に貢献します。
(参考)本サービスにおける生成AIの活用について
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生成AIの出力結果そのものは正確性や有効性などを保証できるものではないため、利用者にて提案内容について検証と判断を行う必要があります。
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本サービスの生成AI機能は、政策立案作業の初期段階におけるアイデア出しや、新たな視点の発見に特に効果的です。生成AIの特徴を理解した上で、その出力を創造的な思考のきっかけとして利用者が活用することで、より革新的で効果的な政策の立案をサポートするものです。
これらの点を踏まえ、生成AIと人間の専門知識を組み合わせることで、より質の高い政策立案プロセスの実現を目指したサービスとなっています。
- (注1)
- (注2)総務省統計局「Data StaRt Award~第8回地方公共団体における統計データ利活用表彰~」:
https://www.stat.go.jp/info/guide/rikatsuyou/index.html
- (注3)差の差分析:
時系列データの効果検証に用いられる統計的因果推論の手法。
本分析では差の差分析の発展形であるCausal Impactモデルを使用。
Causal Impact:
差の差分法をベイズ構造時系列分析により発展させた統計的因果推論モデル:
Brodersen, Kay H., et al. "Inferring causal impact using Bayesian structural time-series models." The Annals of Applied Statistics (2015): 247-274.