《連載》 BtoB営業に告ぐ 顧客主導のデジタル営業へシフトせよ!【第2回】お客様の4つの「不」を払拭しよう | NECソリューションイノベータ

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専門家コラム

《連載》BtoB営業に告ぐ
顧客主導のデジタル営業へシフトせよ!
【執筆者】石井友規氏
株式会社digsas CEO
【第2回】お客様の4つの「不」を払拭しよう

UPDATE : 2021.07.09

前回の記事では、社会全体のデジタル化によって、お客様は徐々に営業を求なくなっていくという話をしました。今回は、社会全体ではなく、お客様の感情にフォーカスしていきます。

突然ですが、「不信・不要・不適・不急」というフレーズを聞いたことはありますでしょうか?これは、お客様が購買に至るまでに生じる4つの心の壁を表しています。企業がモノを買う際、大きく2つの分類ができます。

  • コピー用紙やボールペンのように絶対に買わないといけないモノ
  • SaaSをはじめとする便利になる、あったら良いなというモノ

後者における、あったら良いなというNice to Have商材を買う際は、基本的に人は買わない理由を作っていきます。そして、合計で4つの不買の壁を乗り越え、「買わない理由がなくなったとき」にお客様は発注、ないしは上申をするという考え方です。

この4つの「不」の具体的な説明と、その乗り越え方をご説明します。

1.不信

お客様の感情はまず、「不信」からスタートします。

例えば、検索サイトで「セールステック 入門」といったキーワードで検索すると、様々な情報が出てくると思います。NECソリューションイノベータを例にすると、このようなページです。

今や、様々な企業のWebサイトにおいて、サイト上で閲覧できる情報以外に資料やホワイトペーパーなどをダウンロードする際には、フォームに電話番号やメールアドレスの入力を求められます。

そして資料をダウンロードしたら、インサイドセールスと言われる部隊から電話がかかってきます。「先程、資料をダウンロード頂きありがとうございます。今回はどのような理由でこちらの資料をダウンロード頂いたのでしょうか?」と。

みなさん、どう思いますか?僕ならこう思います。
「いや、お前誰だよ。」

この感情が「不信」です。

このように、資料をダウンロードした瞬間ならまだ良いのですが、企業によっては、2年前にダウンロードしたかもしれない資料の件で電話してくるとか、突然送りつけられた手紙をキッカケに電話してくるとか。まぁ、「お前誰だよ」って感じなんです。

不信の感情は4つの「不」の中で最も高い壁で、主にアポイントを取る時点の壁となることが多いです。私も自分で会社を経営するようになり、びっくりするくらい多くの電話をいただきますが、常々、「お前誰だよ」という感じになります。
では、この「お前誰だよという不信」をどのように乗り越えるのか?

そのためには、ちゃんとした会社であることを伝えるのです。
具体的に不信の壁を越えるために使えるフレーズとしては、以下のようなキーワードが活用できます。

  • 国内(世界)でXX社に使ってもらっている
  • 大手企業に使ってもらっている
  • 上場している
  • XXからXX億円の資金調達している
  • ピッチコンテストの受賞をしている
  • シェア1位
  • 顧客満足度1位
  • 継続率90%

しかしながら、この不信の壁を突破し、アポイントが取れたとしても、営業の初回訪問時に不信は完全に無くなっていません。私はよく「営業はお客様からみたら全員不審者である。だから、極力不審者オーラを消そう。」と言っております。具体的には、身だしなみや言葉遣いを徹底するなど、基礎的な部分が重要になると考えています。

そうして無事、不信の壁を乗り越えたらやってくるのが「不要」です。

2.不要

この「不要」というのは、「ああ、御社のことは分かったよ。でも、特にニーズを感じていないよ」というお客様の心理状態です。この段階では、お客様が不完全な状態であると理解して頂くことで、乗り越えることが出来ます。

めちゃくちゃ雑な例えですが、全員の血圧が160の街があったとします。周りと比較して、自分が高血圧だとは気づいておりません。そこに、「隣町はこうですよ。」というあるべき姿を見てもらうことで気づいてもらうようにします。

これをセールステック活用の例にすると、

『現在、営業の案件はExcelで管理されているとお伺いしましたが、例えば、営業会議で「今月の役員会で決まる」と言ってる担当営業者。かれこれ同じセリフを言い続けて3ヶ月目だとか。ある日突然「Aランクの商談が消えていた」なんてことはありませんか? 』

というように、不完全な状態に気づいて頂くのです。

3.不適

3番目の壁が「不適」です。

不信の壁を越え、不要の壁を越えた段階だと、基本的にその製品はそのお客様にとって価値があるものとして間違いはありません。ただ、買う側からしてみたら、

「この営業の説明が上手で、簡単って言っているけど、本当に使いこなせるんだろうか」という感情になるのです。

この不適という段階は、

「買っても使いこなせない」
「うちにとっては高価すぎるかもしれない」
「これが最適な選択なんだろうか」

という心理状態になります。

ここでは、

  • 導入後のサポート体制
  • 活用イメージ
  • 事例
  • 価格の説明
  • 機能の説明

を懇切丁寧に説明する必要があります。勢いに乗ってここをゴリっと進めてしまう営業も多いのですが、それは間違いです。それはタダの押し売りです。

4.不急

3つの壁を乗り越えてなお現れるこの「不急」は、「あったらいいな(Nice to Have)」の商材を販売するときの最大の失注理由です。

「おたくはドコの誰かも分かって、商品も良さそうで、使えそうだ。でも今じゃない」

営業の最大のテーマとして扱っても良いであろう、“でも、今じゃないとダメなの?” です。
つまり、今買う理由が必要なのです。今買う理由というのは、カッコよくいうと「コンペリングイベント」といい、何かしらの差し迫った状況が必要となります。

例えば、ハードウェアの保守期限切れや営業のエースが辞めてしまうとか、利益が出たから消化しておきたいとか、そういうのがコンペリングです。しかし、コンペリングをお客様任せにしていては、いつまで経っても待ちのスタンスです。ですので、コンペリングを積極的に営業が作りに行かなくてはなりません。

具体的にはこんな感じです。
「大規模なウェビナーを実施するとなれば、大量の見込みのお客様情報を入手しますよね?」

「何件くらいです?500件ですか?」

「では、その500件に当日中にお礼メールを送り、追加説明の要否やウェビナー自体のフィードバックを得る体制はありますか?」

「難しいですよね。実はこういったウェビナーって、一番先に連絡してきた企業から買うお客様は6割を超えているらしいです。このままだともったいないかもしれませんよ。」

このように、積極的にコンペリングイベントをお客様と共通認識化していくことが大切です。

そして、このコンペリングイベントですが、どうにもこうにも無い場合の最後の手段が、期限付きのディスカウントになります。この期限付きのディスカウントを武器にゴリッとクロージングしてくる営業も多いです。

ただ、不信、不要、不適の壁を越えずにディスカウントの話をする営業は、絶対にNGです。裏を返せば、不信、不要、不適を越えていればディスカウントの話をするのは交渉の範囲内です。営業側はもちろん、購買側の方も「期限付きのディスカウント」に惑わされることなく、しっかりと検討が出来ているか確認いただければと思います。

そして最後に、この不急の段階で、期限付きのみでゴリゴリとアプローチをすると何が起きるか。

この図の通り、また不信に戻ります。

期限付きディスカウントは極めて売り手都合の理由であるため、これに頼ってクロージングをするのではなく、実際のお客様のありたい姿を実現する価値を訴求するべきなのです。

まとめ

じつは、この4つの不にはもう一つポイントがあります。

・不信
→数字や事実に基づいた、丁寧な説明
【論理的】

・不要
→感情にアプローチする情熱的な説明
【パッション】

・不適
→とにかく丁寧な説明
【論理的】

・不急
→今契約するメリットを熱量高く説明
【パッション】

人と人とのコミュニケーションですので、 パッションを伝えることの重要性は言わずもがなですが、それだけではなく、勢いで誤った判断をしないためにもロジカルに考えて頂く。

このサンドイッチが非常に重要となるのです。

もっと言えば、買い手側も、ロジカル目線で納得出来るか、パッション目線でこの企業と付き合っていきたいか。双方の目線で考えていただけるとミスマッチが減っていくのではと思います。

次回は、今までの内容を踏まえて、営業組織の構築やオペレーションに言及していきます。

■執筆者プロフィール

石井友規(いしいゆうき)

株式会社digsas CEO

大手SIerにて数々の最年少営業記録を更新。株式会社セールスフォース・ドットコムでは、SaaSビジネスの基礎を学び、日本最速での年間予算達成や、当時史上最年少となる29歳で営業部長に抜擢。日本企業のサブスクリプションへの変革と収益の向上を支援するため、Zuora Japan株式会社へ入社。営業として世界1位の成果を残す。売り手に依存するだけではなく「買い手によるIT投資の自己推進力の向上」が必要と考え、2019年11月にdigsasを創業。