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専門家コラム
《連載》BtoB営業に告ぐ
顧客主導のデジタル営業へシフトせよ!
- 【執筆者】石井友規氏
- 株式会社digsas CEO
【第4回】カスタマードリブンな営業組織にシフトせよ

UPDATE : 2021.09.24
これまでの連載において、第1回では「営業は“売る”という固定観念は古い」ということ、第2回では「営業という職種はお客様からの信頼度が徐々に下がりつつある」こと、第3回では「お客様の期待に応えるために営業組織がするべきこと」をお話してきました。
元セールスフォース・ドットコム最年少営業部長で株式会社digsas CEOの石井友規氏が、最終回の今回は、あらたな営業組織のあるべき姿について考察します。
INDEX
目指すべきはカスタマードリブンな営業組織
これからの営業組織に必要なのは「カスタマードリブン」です。カスタマードリブンとは、「お客様」を起点とした考え方による行動のことを言います。
旧来から会社や営業は「お客様のために」と言われ続けていましたが、現在が過去と大きく異なる点は、情報量にあります。インターネットの普及により、ありとあらゆる情報にすぐにアクセスできるようになりました。それにより、営業だけが持っている情報が少なくなり、お客様との間にある情報格差が無くなったのです。
裏を返せば、このデジタルな行動をデータから把握し、それをお客様との接点として捉えることができたら、非常に大きな関係を築くことができるのです。
こうした現在のお客様の行動様式に対応し、「データをもとに、お客様が本当に求めている情報を的確にお渡しすることができる組織=カスタマードリブンな営業組織」と定義します。
これからの営業組織が目指すべきは、この「カスタマードリブンな営業組織」です。
カスタマードリブンな組織に不可欠なチーム対応
お客様は購買行動において、非常に多くの情報をもとに意思決定しています。 かねてより定番の営業ヒアリングフレームワークであるBANT(Budget:予算、Authority:決裁権、Needs:必要性、Timeframe:導入時期)といった内容は営業側の都合であって、お客様の意思決定を加速させるか?という観点においては、実際何の役にも立たないでしょう。
多くのお客様は、価格、スケジュール、サポート、営業の対応、口コミ、友人の紹介、実際のユーザーの事例・・・など多くの情報を必要としています。 旧来の組織構造では、「まずマーケティングチームがお客様の興味関心を惹く⇒ 営業チームが売り込みを行う⇒ サポートチームがフォローアップをする」といったような流れになっていると思います。
しかしながらお客様は、流れの中で都度変わる担当者に対して同じことを説明して情報を得なくてはならず、非常にめんどくさいと感じるはずです。
本来であれば、問い合わせをして有人対応せずとも、
- 概要資料
- 事例
- サポート
- 価格
などの情報を知りたいはず。そう考えると、マーケティング、営業、サポートといったように、組織を縦割にしてしまうことは売り手側の都合でしかありません。
では、お客様が製品やサービス購入の決め手となる情報をストレスなく得るにはどうすればよいのでしょうか?そのためには、お客様の目線に立って、これらをすべて一気通貫で同じチームとして対応することが不可欠です。そうしてはじめて、本来のお客様のニーズを満たせると言えるでしょう。
マーケティングの段階から、営業的なアプローチを。サポートの時点でも、マーケティング的なアプローチを。そうしたシームレスな対応が求められるのです。


BtoB購買でもデジタル上の販売チャネルが必須
お客様の目線に立てば、Web上から購買できるチャネルを用意しておくことも必須となるでしょう。
今や、購買の意思決定者の多くはミレニアル世代です。ミレニアル世代とは、1980年から1995年に生まれた世代と定義されていて、現在(2021年)は26歳~41歳。インターネットが進化した時代に成長し、デジタルに高い親和性を持つ世代をさします。 彼ら、彼女らの44%はBtoBの購買においても、営業担当者を介さない購買を望んでいます。
- *Source: 2018 Gartner B2B Buying Survey
つまり、Amazonで本を買うかのごとくBtoBの商材においても、お客様がWeb上ですぐに購買可能なチャネルを用意することによって、変化するお客様のニーズに答える必要があるのです。
また、このようなデジタルのチャネルを作ることによってお客様の動向がデータとして蓄積され、蓄積されたデータを1か所に集約・分析すれば、お客様のニーズを満たすための重要な指標となります。 成約したお客様の企業規模、業種、役職なども分かり、今後の見込み客に寄り添う製品・サービスの開発、販売戦略の立案などに活用できます。
最重要任務はお客様の意思決定の支援をすること
BtoBにおいて、営業が「売る」ことよりも、お客様が「買う」ことが非常に難しい時代になっていることは以前にもお話しました。ここでカスタマードリブンな営業組織として対応すべきことは、「お客様の意思決定を支援する」ことです。
例えば、次のような情報をあらかじめ提示するのです。
- 事前に検討するべき要件
- 見落としがちな内容のチェックリスト
- よくある反対意見と、その対策
- ビジネスプロセスのAs is-To be
- セキュリティやSLA
等
今までであれば、お客様から聞かれ後に対応していた情報も、カスタマードリブンでは事前にお客様に提示し、スムーズな意思決定を支援していくことが必要です。
お客様の目線に立ち、お客様が「買う意思決定をする」ために必要な事柄を洗い出し、しかるべきタイミングで提示し、お客様の意思決定を支援することこそが、カスタマードリブンな営業組織の最重要任務なのです。
営業こそ「デジタル人材」へ変革せよ
今起きているお客様の変化や様々な可能性について述べてきましたが、私が強く提言したいのは、営業がデジタル人材にシフトするべき、ということです。
あらゆるビジネスや生活スタイルがデジタルにシフトし、お客様も変化しています。しかしながら、あなたの会社の営業組織はいかがでしょうか?新しいITツールの提案をしている一方、自分たちの業務は未だにアナログ。勘や経験に頼ったお客様対応を行っているのではないでしょうか?
お客様のデータが蓄積されていけば、それらを活用したカスタマードリブンな営業組織にシフトしていくのは当然と言えます。まずは今までの営業という概念を横に置き、自分たちの組織をデジタル化する。その点に目を向けてみましょう。
営業がデジタル人材となれば、お客様に「私は、私達は、こうしています」と説明することができます。これ以上に強い説明は他にないはずです。 今こそ、BtoB営業はデジタル営業にシフトする時です。
例えば、SFA(Sales Force Automation)などのシステムを利用している企業も多くあるでしょう。実際の利用方法はどうなっているでしょうか。自社の売上や見込み金額の“管理”や、営業の行動“管理”という、管理のためのツールとして利用されていませんか。
これではすべて自社の“管理”にベクトルが向いてしまっています。すべてのベクトルを「お客様」に再定義し、デジタルを「お客様の意思決定支援」を支援するツールとして使う。これらをITチーム任せではなく、自分たちで企画立案する。
そのような組織ができたとき、きっとカスタマードリブンな営業組織になっていることでしょう。

■執筆者プロフィール
石井友規(いしいゆうき)
株式会社digsas CEO
大手SIerにて数々の最年少営業記録を更新。株式会社セールスフォース・ドットコムでは、SaaSビジネスの基礎を学び、日本最速での年間予算達成や、当時史上最年少となる29歳で営業部長に抜擢。日本企業のサブスクリプションへの変革と収益の向上を支援するため、Zuora Japan株式会社へ入社。営業として世界1位の成果を残す。売り手に依存するだけではなく「買い手によるIT投資の自己推進力の向上」が必要と考え、2019年11月にdigsasを創業。