
物流コラムドライバー不足を補うために!
現場を救うTMSとは
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目次
ニューノーマルな時代となり、消費行動の変化による物量の増加や働き方改革など、運輸・流通業界が取り組むべき課題はたくさんあります。本稿では、課題への対策として、物流システムの視点からシステムの連携や効果などを紹介します。
ドライバー不足を補うために!現場を救うTMSとは

ニューノーマルな時代への対応が、ビジネスでも求められています。人との接触を極力避けるための消費者行動の変化はビジネスの進め方に大きな影響を与えるとともに、物流需要の拡大をもたらしました。しかし、市場は拡大傾向にある一方、運輸・流通業界は慢性的な人手不足が続いています。その大きな原因は、業界のイメージにあるかもしれません。業務がきつく、長時間労働が当たり前の業界といったイメージが定着しているため、求人をしても人が集まらない状況にあります。こうした状況を変えるために、業務の効率化は重要な課題です。では、業務の効率化を図るには何から取り組めばよいのでしょうか。まずは配送、配車の計画を緻密に立てること、それらを総合的に管理できる環境を構築することが必要です。
また、国土交通省も推奨しているようにモーダルシフトのような柔軟な配送への対応や、倉庫管理も含めた物流システムの見直しも重要でしょう。本稿では、業界の現況を見つめ、輸配送現場が抱える課題を解決すべく、総合的なシステムの有効性を紹介します。
運輸・流通業界の現状

ニューノーマルな時代とともに生活様式もビジネスの在り方も、働き方も変化しており、多くの企業がこの大きな流れに対応するための対策を検討し、取り組みを進めています。
そうした時代の動きのなかで、今、運輸・流通業界はどのような状況なのでしょうか。いくつかの社会的変化の視点から、現状を探ってみましょう。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響
新型コロナウイルス感染症が全世界に拡大し、2020年3月以降には一部の国でロックダウンを実施、外部との接触や人の動きを完全に封鎖する措置を取っています。日本国内でも外出自粛が呼びかけられ、働き方においてもテレワークが推奨されるようになりました。
こうした社会や生活の変化は、消費行動に大きな変化をもたらしました。人との接触を回避するために、人々がECサイトを活用した購買方法を選択するようになったのです。このような消費者行動の変化は、企業のマーケティング戦略にも強く影響し、企業や小売店ではインターネットを活用した販売に力を入れるようになっています。この動きはBtoBビジネスにおいても同様です。こういったビジネス形態の加速度的な変化により物の流れが変わったことで、物流業界に大きな打撃を与えています。
販売チャネルの増加、物流需要の拡大
まず、BtoCビジネスにおけるEC市場の規模が、近年どのように変動しているのかを見てみましょう。経済産業省が2020年7月に公表した「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」のなかに示された「日本のBtoC-EC市場規模」によると、2019年の市場規模は19兆3,609億円となり、前年比で7.65%増加しています。2010年から9年間にわたって、増加が続いている状況です。
こうしたEC市場規模の拡大は、BtoCビジネスのみならずBtoBビジネスにおいても同様の動きを示しています。同じ調査で示されたBtoB-EC市場規模の変化を見ると、2019年の市場規模は352兆9,620億円となり前年比で2.5%の増加となっています。
つまり、BtoC、BtoBのどちらのビジネスにおいてもEC市場は確実に増加していると言えるでしょう。そして、こうした市場動向は、今までオンライン化を検討してこなかった小規模事業者を含む多くの企業において、ECやオンライン活用による販売機会拡大への動きをあと押しすることになりました。
このような動きによって購入・販売方法は多様化します。実店舗をはじめECサイトやSNSなど、さまざまなチャネルを連携させて企業は消費者との接点を持ち、互いに最適な方法で取引を行うようになります。また販売チャネルの増加、取引の多様化は小口物量の増加を招き、物流需要の拡大をもたらしました。
この変化によって、運輸・流通業界では、小口で大量の輸配送への対応が求められるようになり、顧客ごとの迅速で的確な対応が必要になってきたのです。
強まる人手不足感
厚生労働省が公開している「一般職業紹介状況(令和2年11月分)について」のなかに示された有効求人倍率を見ると、「輸送・機械運転の職業」では1.83倍、そのなかで「自動車運転の職業」は2.12倍です。これは求人してもなかなか人が集まらないことを示しています。
「労働経済動向調査(2020年11月)の概況」(厚生労働省)に示された労働者過不足判断D.I(注1)を確認すると、正社員等労働者の過不足状況において、調査産業計ではD.I.値が25ポイントであるのに対して、運輸業、郵便業では37ポイントを示し、人手不足感が高いと評価されています。
(注1:労働者過不足判断D.I.とは、労働者数について、「不足(やや不足、おおいに不足)」と回答した事業所の割合から「過剰(やや過剰、おおいに過剰)」と回答した事業所の割合を差し引いた値です。)
さらに、運輸・流通業界で重要な業務を担うドライバーに着目した人的状況を見ると、国土交通省が公表している「トラックドライバー不足の現状について」では、2018年4月現在の有効求人倍率は2.68です。全業種の平均が1.35であることから考えても、人手不足が深刻であることが見て取れます。同様に厚生労働省が公表している2021年2月の有効求人倍率で確認すると、輸送・機械運転における自動車運転の職業は2.18、全業種の平均が1.04となっています。この3年近くの間で、ドライバー不足の状況は改善していないと言えるでしょう。
ドライバーの高齢化(労働人口の減少)
日本国内において労働人口の減少が問題になっており、経済産業省の「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について(平成30年9月)」によると、今後、生産年齢人口比率の減少が加速するとされています。全体的な高齢化社会の進行と、求人をしても人が集まらない運輸・流通業界の状況を考えると、ドライバーの高齢化が推測されます。また、大型車両を運転するドライバーには特殊免許が必要であることから、求人条件も厳しくなり、若年層への求人が進まず高齢化に拍車をかけていると考えられます。
輸配送現場の課題
市場が拡大するなか、その対応が難しい状況を抱える運輸・流通業界において、輸配送の現場はどのような課題を抱えているのか見ていきましょう。
属人化した配車/配送業務の改善が必要
配車/配送業務は複雑に絡み合う複数の情報を把握し、最適な組み合わせを選び、計画設定しなければなりません。例えば、加味すべき制約条件として挙げられるのは、車両基地、物流拠点、配送先の位置情報に加え、道路交通情報による混雑状況の変化、積み荷の性質、車両の特性や位置情報、ドライバーの経験や労働時間などの多数の情報です。これらを総合的に見ることは、誰にでもすぐにできる業務ではありません。経験を積んだドライバーや長年この業務を担っている担当者が行うケースが一般的です。言い換えれば、配車/配送計画の立案業務は限られた人にだけ可能な、属人化した業務になりやすいということです。こうした状況は事業継続の妨げとなり、また、プロセスの見直しや無駄な作業の削減などにも取り組みにくい状況を生み出しています。配車/配送業務を見える化し、標準化することで誰でも対応できる業務にすることが必要です。
配車/配送の効率化が必要
最適な輸配送を実現するためには、配車/配送計画を立案します。しかし、車両や担当ドライバーごとにもそれぞれの物流制約要件があり、交通情報や配送先の周辺環境なども都度変化するものです。また、特定の積み荷を1カ所の配送先に届けるケースもあれば、積み荷を複数の届け先に分散して配達することも少なくありません。このように複数のパターンが存在する配車/配送計画において、現状に即して、現実的で柔軟な計画を立案することが求められます。
長時間労働の改善が必要
ドライバーの業務をはじめとする、運輸・流通業界では長時間労働が問題になります。複数の原因が複雑に絡み合った結果でもあるのですが、例えば、車両に積み込む商品をピッキングする作業の遅れや、荷降ろし時間の長期化によって、ドライバーの待ち時間が発生するといったように、輸配送全体の工数が多い分だけ長時間化の可能性は高まると考えられます。配送順を意識した荷積み作業など、一つひとつの工程を効率化することで長時間労働の改善を図る必要があります。
TMS(輸配送管理システム)について

運輸・流通業界で最適な輸配送を実現するために、導入するシステムとして注目されているのが輸配送管理システムです。輸配送管理システムはTransportation Management Systemの頭文字を取ってTMSと呼ばれます。では、どのような機能を持ったシステムなのかを見ていきましょう。
TMSとは
TMSは主に、配車/配送計画、運行進捗管理、貨物追跡、運賃計算などの機能を有したシステムです。商品が出荷される前の管理、つまり配車/配送計画から、倉庫から出荷されたあとの配送進捗管理、輸配送が完了した後の請求書発行・入金管理といった管理業務までを実行できるものも含まれます。
配車/配送管理とは
配送先や積み荷の内容、道路交通事情や到着時刻といったさまざまな情報を把握し、運搬車両を割り当て、輸配送業務を効率的かつ安全に実行しなければなりません。こうしたプロセスを順調に行うための具体的な計画が、配車/配送計画と呼ばれる業務です。車両基地、物流拠点、配送先の位置情報に加え、道路交通情報による混雑状況の変化、積み荷の性質、車両の特性や位置情報、ドライバーの経験や労働時間などの多数の情報を総合して、車両ごとの最適なルートの策定を行います。
配車/配送計画では、その日の配送先をどの車両でどのルートを使って配送していくのが最も効率的であるのかが重要になります。また、倉庫から商品を出荷し顧客への配送を完了するまでのプロセスを管理し、配送予定を可視化します。
配送計画立案には、配送するエリア状況、刻々と変わる道路交通情報、車両条件、ドライバーの状態、積み荷の情報、運行コストなど、複数の要素を集め、いくつもの組み合わせのなかから最適なものを選びます。
こうした工程の全てを管理するのが配車/配送管理と呼ばれる業務です。配車/配送管理の詳細については、以下「配車/配送管理システムの導入事例から考える、業務効率化とは」の記事をご参照ください。
配車/配送業務の属人化を回避
上記で確認したような配車/配送計画を立案するには、積み荷の状況、届け先の状況、道路事情、車両状態、ドライバーの情報など、複雑に絡み合うそれぞれの制約条件を加味しながら、最適な組み合わせを選び出し、迅速に指示を出す必要があります。こうした業務には、豊富な経験が必要です。言い換えれば、長年この業務に携わっている担当者でなければ、担えない業務になっていることが少なくないでしょう。このような業務スキルの属人化により、担当者の異動あるいは退職が決まると、スムーズに業務が遂行できなくなるだけでなく、事業の継続自体が困難になる可能性もあります。
しかし、例えばULTRAFIX/配送計画のようなTMSを活用することで、業務を標準化することが可能です。システムの自動計算技術によって業務の標準化がされれば、高度なノウハウを持たない社員が担当することになっても高精度な計画立案ができるようになります。その結果、人的コストの削減や事業継続性向上への取り組みを推進することにつながります。
輸配送状況の見える化
車両をはじめとした配送手段となる移動体の動き、ドライバーの状況などを総合的に把握・記録・管理していくことで、輸配送の最適化を図ることが可能です。またドライバーの荷待ち時間を短縮するためには、トラック予約受付 バース予約サービスの活用も有効でしょう。こうした輸配送状況の見える化は、ドライバーの働き方改善を実現するだけでなく、顧客からの荷問い合わせにも即座に対応できる環境を整えることにもなり、顧客満足度を高めることが期待できます。さらに、輸配送状況の見える化によって、所要時間や輸配送に関わる諸情報を把握し、以後の最適配送ルートの策定に役立てることが可能です。輸配送状況の見える化については、以下「動態管理システムを活用して、配送進捗の見える化を実現」の記事をご参照ください。
積載率の最大化
限られたスペースである荷台への積載率を最大化することで、売上向上を図りたいと考えるケースは少なくありません。実際に、効率的で無駄のない積み付けにより積載率を5%程度向上させることによって、輸送に必要なトラックが1台削減できたケースもあります。言い換えれば、積載率を上げられれば、少ないトラックで多くの輸配送が可能になるのです。一方で、商品の積み付けは安定性や重量バランスを考慮して適切に行わないと、輸配送時に事故の原因にもなります。そのため、慎重かつ最適な方法を選択しなければなりません。また、積載した商品の破損を防ぐためにも、適切な積み付けは欠かせません。積み付けを行う際は、単に積載率を高めるだけでなく、輸配送時の安全性と商品の破損防止の視点から最適解を導き出すことが重要なのです。そのために行われるのが、積付計画です。このように荷崩れを防ぎながら積載率を向上し、さらにはベテランの担当者でなくても最適な積付計画が立案できるような環境を実現するには、積付計画システムの導入が有効です。安全性を担保しながら積載率の最大化を目指すための積付計画システムについては、「積み付け計算で積載率を最大化!積付計画システムのすすめ」の記事をご参照ください。
輸配送コストの削減
商品が入荷した段階から、倉庫内での管理、出荷に関する配車/配送計画の立案、荷積み、動態管理など、総合的に輸配送を見える化し、把握することで、それぞれの段階で生じる無駄を削減することが可能です。その結果、受注能力を高めること、売り上げを増加させることといった成長戦略につなげることができます。また、長時間労働の解消や事業継続への取り組み、社員の労働負担の平準化など、良好な就労環境づくりにも効果が期待できるでしょう。それぞれの改善を進めることで、輸配送コストの削減を実現できると考えられます。
まとめ:就労環境の改善、人手不足への対策としても輸配送管理システム活用は必須
需要が増え市場が拡大するなかで、運輸・流通業界の人手不足への対応と環境問題への取り組みなどに解決策を見いだすことが求められています。物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)にも輸送網の集約、輸配送の共同化、モーダルシフトへの取り組みを支援し、物流業務を効率化させようとする動きが見て取れます。WMSやTMSなど物流管理システムを連携させることで、業務を総合的な視点で見直し、デジタル化することが解決策のひとつだと言えるでしょう。
自社における物流事業がどのような課題を抱えているのかを中長期の視点から洗い出し、自社で実践できる施策を見極める必要があります。また、個別の企業の課題解決策を業界全体の課題解決へとつなげることが重要です。こうした総合的な取り組みを目指すためには、客観的な視点と専門知識、業界での取り組み事例を豊富に有する専門企業からの提案を受けることが効果的です。
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デジタル化と人材最適化を考えるニューノーマルな時代における物流業務、特に倉庫業務の課題と解決策とは。物流量の変化や慢性的な人材不足などの業界動向の変化に伴う課題を解決するヒントをご提供します。
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