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目次

需要が増え、市場が拡大しつつある物流。その業務を支えているのはWMS(倉庫管理システム)です。本稿では、WMSの基本機能と必要性を確認し、ロジスティクス実現に向けたシステム連携について紹介します。

  1. WMSの機能と重要性を考える
  2. WMSとは
  3. WMSの基本機能
  4. WMSの必要性(メリット)
  5. まとめ:倉庫業務の平準化・見える化にはWMSが重要

WMSの機能と重要性を考える

物の流れや物流量が変化するなか、荷物の誤配送や配送遅延といったトラブルの発生をいかに抑え、正確かつスピーディーに届けるにはどうすればよいのか。物流を担う多くの企業が頭を悩ましている課題です。このようなトラブルの一因は、倉庫業務にもあります。入荷作業をミスなくスムーズに実施できれば、在庫管理や出荷作業も効率的に行えると考えられます。しかし、日々、時間に追われる作業環境では手が回らず計画どおりに進まないのが現状です。本稿では、倉庫業務の効率化をサポートする倉庫管理システムについて説明します。

WMSとは

WMSはWarehouse Management Systemの頭文字を取った略称で、倉庫管理システムのことを指します。主に倉庫現場において、商品の入出荷管理や在庫管理を一元的にマネジメントし業務効率化や精度向上を目的としたシステムです。
WMSと似たシステムとして、ERPやWCSというものがあります。それぞれの違いについても確認しておきましょう。

ERPとは

ERPとは、Enterprise Resources Planning(企業資産計画)の略で、企業が持っているリソース(顧客、財務会計、サプライチェーン、人材など)を統合的に管理して、それらを効率的に運用することを目的に使用されます。
ERPを利用すれば倉庫管理も可能なのではないかと考えられますが、それは効果的ではありません。
倉庫管理というのは、倉庫内で取り扱う商品や倉庫内設備など、現場ごとにそれぞれのニーズが発生しやすい業務です。そのため、倉庫管理に特化したWMSを活用するのが最適だと考えられます。

WCSとは

WCSとは、Warehouse Control Systemの略で、日本語では倉庫制御システムと訳されます。
倉庫内で稼働しているマテハン機器やIoT機器を制御・監視するためのITシステムです。WMSのように人が行う作業を管理するためのものではありません。WCSを利用することで、庫内で使われている機器の動きをリアルタイムに制御することができるため、故障や突発的な誤動作などに迅速な対応が可能になります。

ロジスティクスの定義

物流の最適化を考える際に、ロジスティクスという概念が出てきます。ロジスティクスとはどういった考え方なのかを知るために、まずは物流の定義を見ておきましょう。
「物流」とはJIS(日本工業規格)の定義を見ると、「物資を供給者から需要者へ、時間的および空間的に移動する過程の活動」であり、「一般的には包装、輸送、保管、荷役、流通加工および、それらに関わる情報の諸機能を総合的に管理する活動」とされています。つまり、物の流れを管理する活動を意味しているのです。
では、「ロジスティクス」とは、どういった概念を指すのでしょうか。同様にJISの定義によると「物流の諸機能を高度化し、調達、生産、販売、回収などの分野を統合して、需要と供給の適性化を図るとともに顧客満足を向上させ、あわせて環境保全及び安全対策をはじめ社会的課題への対応をめざす戦略的な経営管理」とされています。
つまり、単に荷物を顧客に届けるだけではなく、最も効率的な物流を計画的に実行し、トータルな管理と最適化を図ることを意味しています。

WMSの基本機能

倉庫現場での業務の重要性がたかまるなか、WMSの利用はロジスティクスの実現には不可欠であると考えられます。では、WMSでどのようなことができるのかを見ていきましょう。
WMSの基本的な機能は次の3つです。それぞれの業務内容については、以下「物流を支える倉庫管理とは」の記事をご参照ください。

在庫管理機能

現時点で倉庫の「どこ」に「何」が「どれだけ」あるかを把握・管理します。これをロケーション別在庫管理と言い、WMSにおいて最も重要な機能となります。
また、在庫の属性管理も可能です。倉庫内に保管されている商品は、同じ商品でも先に入荷したものから順に出荷する先入れ先出し(FIFO)の考え方や、有効期限、製造ロットといったさまざまな情報も含めて在庫管理する必要があります。そのためにも、商品コードや在庫数以外に必要な項目も管理できることが重要です。

入荷管理機能

入荷管理に必要な機能は主に、入荷予定・入荷検品・返品入荷・ロケーション格納の4つです。
倉庫に届く商品情報を登録し、その後、実際に入荷した商品に対して、個数や状態といった情報を予定情報と照合し、定められた棚(ロケーション)に保管をします。

出荷管理機能

出荷管理に必要な機能は主に、出荷予定・在庫引当・ピッキング・仕分け・出荷検品の5つです。
出荷予定の商品に対し、倉庫内の在庫の有無を確認します。そのうえで、ピッキング指示に従って取り出し、間違いが無いかを検品したのち、納品書や送り状などの帳票を発行・添付して出荷します。
上記機能を活かす倉庫管理業務の詳細について、以下に説明します。

WMSの必要性(メリット)

人的ミスの防止(作業の効率化、精度向上)

従業員が目視によって行う確認作業では、チェックミスや勘違いといったヒューマンエラーがどうしても起こります。また、商品の保管状況を正確に把握することは、人力だけでは難しいと言えます。こうした人的ミスを防止し、作業の効率化、精度向上を図ることがシステム導入の最大の目的と言えるでしょう。

属人化の解消(働き方改革、業務継続)

倉庫内の業務は入荷のタイミングや商品情報、配送先の情報といったさまざまな情報が複雑に絡み合うため、経験を積んだ従業員が在庫管理や入出荷管理を担うことが多くなります。そうなると、特定の従業員に負担がかかるばかりでなく、担当者が不在になると業務がスムーズに行われなくなる可能性があります。そのような事態を解消し、平準化することによって、働き方改革や業務継続といった課題への取り組みにつなげられることも大きなメリットと言えます。

TMSとの連携で広がる可能性

TMSというのはTransportation Management Systemの略で、主に配車計画、運行管理、動態管理などの機能を有した輸配送管理システムのことです。TMSの詳細については、「ドライバー不足を補うために!現場を救うTMSとは」の記事をご参照ください。

WMSは物流のプロセスにおいては倉庫管理を担うシステムですが、TMSは商品が倉庫から出荷されたあと、届け先までの輸配送を管理する情報システムとなります。
WMSとTMSを連携させることで、倉庫業務は配送を考慮した出荷作業を行うことが可能になります。
例えば、配車計画によって計画立てたトラック車両別の配送ルート情報と積載商品の情報を活用することで、トラックが倉庫を出発する時間を考慮した出荷作業が行えます。これにより、どの出荷指示を優先的に行えばよいかをコントロールすることができるため、配送遅延を無くすことができます。
ロジスティクスを実現するためには、物流現場において単一のシステムだけを利用するのではなく、それぞれの業務に特化したシステムを連携させて業務を行うことも重要になります。

まとめ:倉庫業務の平準化・見える化にはWMSが重要

市場環境の変化により物流現場の業務は重要性を増しています。そのなかでも、倉庫業務は誤配送や配送遅延といったトラブルを解消するためにも、日々の物量波動に対応できるよう柔軟かつ正確・スピーディーに行う必要があります。これを実現するには、業務が停滞しないよう従業員の誰もが一定レベルの作業を行え、その作業状況がリアルタイムに把握できる仕組みをつくることが重要です。そのためには、WMSを利用した作業の平準化と見える化は欠かせません。WMSを通じて現場標準の運用ルールを定義し、リアルタイムな作業状況を確認しながら臨機応変に対処することで、消費者に品質の高い物流サービスを届けられるでしょう。

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