ECサイトの5つの構築方法とは?各手法を比較して整理

小売業向けPOSシステム・トピックスECサイトの5つの構築方法とは?
各手法を比較して整理

EC業界では、近年、OMOに代表されるオンライン・オフラインの相互連携・融合の流れが起きており、自社ECサイトを構築・提供する企業が増えています。この記事では、EC業界の状況について整理しつつ、ECサイトの主な5つの構築方法についてメリット・デメリットを比較していきます。

EC業界の状況

まず、EC業界の現状について解説します。

最新のECの市場規模

日本ではECの普及が年々進んでおり、その市場規模は毎年拡大傾向にあります。
経済産業省による「電子商取引に関する市場調査」では、2020年の日本の一般消費者(BtoC)向けECの市場規模は約19.3兆円となっています。この数字自体は2019年とほぼ同じですが、内訳をみると新型コロナウイルス感染症で大ダメージを受けた旅行業界や、チケット販売が含まれるサービス分野が36.0%減なのに対し、家電・書籍・衣類等が含まれる物販分野は21.7%増、電子書籍や音楽・動画配信などが含まれるデジタル分野は14.9%増となっており、大幅に伸長している事実が分かります。
※参考:経済産業省 令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

越境ECの拡大

海外から日本のECサイトに訪問して購買行為を行うこと(もしくは反対に日本から海外のECサイトで購買すること)を、越境ECと呼びます。同調査では、2020年において越境EC(BtoC)により中国から日本のECを利用した購入が1兆9,499億円(前年比17.8%増)、アメリカから日本のECを利用した購入が9,727億円(前年比7.7%増)ほど発生しています。この数字は大きいといえます。このデータから、ECへ販路を拡大すれば、国内のみならず海外の需要も取り込める可能性が高いことが読み取れます。

新型コロナウイルス感染症やデジタル化の影響

上述した通り、新型コロナウイルス感染症により、いわゆる巣ごもり消費が加速したため、近年EC業界は活況となっています。ECを活用することで、店舗に足を運ばずに購入できるだけではなく、新型コロナウイルス感染症を踏まえて商品の受け取りにおいて、置き配の活用やハンコレスなど接触機会を減らす取り組みも進んでいます。物流網の発達とともに、注文してから手元に商品が届くまでの時間も短くなっています。また、OMOの動きに代表されるように、近年ではデジタル技術を活用して顧客の購買体験を高めていく取り組みも進んでいます。例えば購買の入り口をECとし、実体験が重要な部分は実店舗で補完するなど、オンラインとオフラインの融合という観点からもECの役割は今後高まっていくといえるでしょう。

以上、様々な観点からECの現況を整理しました。結論としてECは活況であり、今後もその状況は継続もしくは拡大していくと考えられます。

EC業界のトレンド

以下では、EC業界を取り巻くトレンドについて解説します。

D2C

D2C

D2Cとは「Direct to Consumer」の略称であり、メーカーが卸や代理店を通さずに直接ECサイトで販売を行うビジネスモデルを指します。近年ではASPやSaaSなどECサイトの構築ハードルを下げる仕組みが登場しており、また顧客側でもオンラインでの決済手段が一般化したことから、ECへの参入が容易となっています。

このような状況下で、実店舗がないメーカーでも卸や代理店へ頼ることなく直販が可能となりました。また、販路を持たない新興のメーカーでも参入がしやすくなったといえるでしょう。
さらに、販売促進の面でも、SNSやオウンドメディアなどのWebマーケティングの活用や、いわゆるファンベースマーケティングとして少数のファンと綿密にコミュニケーションをとる手法が認知されるようになりました。これにより、大規模な広告が打てない小規模の事業者でも、十分に戦えるようになったといえます。

OMO

OMO

OMOとは、「Online Merges with Offline」の略であり、いわゆるECサイトに代表されるオンライン上での購買体験と、実店舗に代表されるオフラインでの購買体験を融合し、より顧客の購買体験を向上させることを目指すマーケティング戦略です。
OMOの考え方を意識することにより、実際にその場で陳列方法や内装デザイン・BGMなどで体験を演出できるオフラインと、商品情報や口コミなど多様な情報を提供でき、また決済なども財布を取り出すことなくストレスフリーで実施できるオンラインでの体験を組み合わせることができます。

OMOを実現するためには、当然ながらECをはじめとしたオンライン側での取り組みが必要となります。取り組む施策にもよりますが、従来型の商品をカートに入れて決済・購入するというECサイトにとどまらず、オフラインとの連動を踏まえたECサイトの構築が重要です。

自社ECへ取り組む企業の増加

これらD2C・OMOに代表されるように、ECが実現できることやECに期待されている役割は、従来よりも拡大しているといえるでしょう。さらに、上述した通り、新型コロナウイルス感染症を背景として実店舗への訪問機会が減少し、ECへ移行していることも影響しています。
近年では多くの小売事業者・メーカーにおいて、自社ECの構築を行い、販路を拡大していく動きが進んでいます。

ECサイトの主な構築方法

それでは、自社ECサイトを構築するためにはどのような方法が考えられるのでしょうか。以下では、5つのECサイトの構築方法を紹介しつつ、それらのメリット・デメリットについて解説します。

ASPの利用

概要
ASPは「Application Service Provider」の略称で、日本語に訳すと「アプリケーションサービス提供事業者」です。この言葉通り、ASPはネットワークを通じてアプリケーションを提供するサービスであり、ECサイトの機能を提供するASPを用いることで、ECサイトを用意できます。事業者によっては、ECサイトに加えて販売管理・財務会計・在庫管理など幅広い機能を提供しているケースもあります。

メリット
最も大きなメリットはコスト面です。ASPはコストが安く、なかには初期費用が無料のサービスも存在します。また、クレジットカードはもちろん、キャリア決済やコンビニ決済などの幅広い決済手段を備えているサービスも多いです。さらに、導入にあたってシステム開発が不要であり、すぐに利用開始できることも魅力といえるでしょう。

デメリット
カスタマイズの余地はほぼなく、基本的にはサービス提供事業者が用意した機能に沿って業務プロセスを設計する必要があります。また、自社で販売管理システムなどの基幹システムを持っている場合、それらとの連携は難しいでしょう。

上記の通り、ASPは主にスタートアップや小規模事業者に向くECサイトの導入形態といえます。

クラウドEC

概要
クラウドECは、クラウドサービスの形でECサイトを提供します。ASPと概念は似ているものの、各社向けの個別カスタマイズを実施できる範囲が大きいことがポイントです。

メリット
クラウド型のためアプリ・インフラの運用保守が不要であり、手間がかかりません。セキュリティ面でも常に最新化されることが期待できます。また、一般的にインフラリソースの増減がしやすい設計となっているため、大規模な販促を行った後など多数のアクセスが予想される際にも、リソースを増強することでサーバダウンを避け、販売機会損失を防げます。さらに、ASPと比較してカスタマイズ性が高いこともポイントです。

デメリット
ASPと比較すると、コストが高くなる傾向があります。また、ソースコードや詳細なインフラ構成が開示されるわけではないため、クラウド提供事業者側にすべてをゆだねることになります。対応が悪い事業者を選定してしまうと、バグの多発などECサイトの品質が担保できないリスクがあります。

上記の通り、クラウドECは主に自社にシステムの知見が少ないものの、ECへの参入を検討している中規模企業に向くECサイトの導入形態といえるでしょう。

オープンソース

概要
オープンソースとは、無償で提供されているECサイト構築用のソフトウェアのことです。企業はオープンソースのプログラムを利用して、自由にECサイトを構築できます。

メリット
最も大きなメリットは低コストであることです。また、ベースとなる機能はオープンソース側に用意されているため、導入時にはデザイン設定や必要なカスタマイズを実施するだけでECサイトを構築できます。カスタマイズ実施においても、基本的なものであればプラグインとしてあらかじめ提供されているケースが多いです。さらに、カスタマイズ性が高いため、上述したデザインはもちろん、自社の基幹システムとの連携も自由に行うことができます。

デメリット
オープンソースを使いこなすためには、技術力が必要です。適切な初期設定を実施できなかったり、継続的なアップデートを実施しなかったりすれば、脆弱性を放置してしまい、セキュリティインシデントにつながるリスクもあります。特にオープンソースは多数の企業で利用されているため、脆弱性が狙われやすい傾向があります。

上記の通り、オープンソースの利用は主に、技術力を持ち適切な保守運用ができる中~大規模企業に向くECサイトの導入形態と考えられます。

パッケージシステム

概要
オープンソースと近い形ではありますが、有償のパッケージシステムを利用する方法もあります。オープンソースと同様に、パッケージシステムにはあらかじめECサイト構築に必要な機能が備わっており、必要に応じたカスタマイズを実施したうえで、サーバーに設置することでECサイトを構築できます。

メリット
有償であるため、オープンソースと比較するとベンダのサポート体制が整っています。さらに、多数の企業に同じパッケージが導入されていることから、不具合の改善が行われており、ソフトウェアの品質が高い傾向があります。また、フルスクラッチと比較すると、構築に労力がかからないこともポイントです。

デメリット
オープンソースやASPなどと比較すると、コストが高い点がデメリットです。また、パッケージのバージョンアップの際には、カスタマイズの機能検証をはじめとして手間とコストがかかります。

上記の通り、パッケージシステムの利用は主に、ベンダの技術力を活用してECサイトを導入したい中~大規模企業に向くECサイトの導入形態と考えられます。

フルスクラッチ

概要
既存のオープンソースやパッケージシステムなどを利用せず、一からプログラム開発を行う形態をフルスクラッチといいます。どのような自社要件も実現可能であり、自由度が最も高いことが最大の特徴です。

メリット
上述した通り、自由度の高さが最大のメリットです。特に、最先端の技術を利用して他社が取り組んでいないようなサービスを提供する際には、スクラッチは有効な選択肢となるでしょう。また、開発リソースが潤沢であることが前提ですが、自社の判断のみで機能追加や改善が可能なため、新たなサービスを企画してから開発・リリースまでの期間を短縮できます。

デメリット
自社ですべてのプログラムを開発する必要があるため、膨大なコストとリソースがかかります。特に自社開発を行う場合は、高い技術力と人的リソースが必要です。技術力が不足していると、深刻なバグを引き起こしたり、セキュリティホールを放置したりしてしまい、経営に大きな被害を及ぼしかねません。また、委託開発を行う場合にも、社内に技術力を持った人材を確保したうえで、ベンダ側へ適切な指示を出さなければなりません。

上記の通り、スクラッチは主に、業界トップもしくはそれに準じる大規模企業に向くECサイトの導入形態といえるでしょう。

構築手法の選定ポイントまとめ

これまで整理してきたとおり、ECサイトの構築には様々な手法があり、それぞれの手法に向く企業・向かない企業が存在します。以下に、構築手法の選定ポイントをまとめました。

まずは、自社の企業規模により選択肢が異なります。スタートアップや小規模事業者は、ASPを最初の選択肢とするとよいでしょう。中~大規模事業者、もしくは小規模事業者であっても将来的な拡大を狙っている企業であれば、自社の技術力に応じてクラウドECやオープンソース、パッケージシステムから選択するべきです。技術力が高い企業であればオープンソースの活用も有効ではありますが、なかなか最先端のIT技術に精通した人材を社内に確保することは難しいです。自社にIT人材が乏しい場合は、クラウドECやパッケージシステムなど、ベンダ側の技術力を活用しやすい選択肢を選ぶとよいでしょう。
特に、中~大規模企業においては、既存で販売管理システムや在庫管理システムなどの自社システムを保有しているケースも多いはずです。OMOへの取り組みも考慮すると、顧客データの統合やアプリ連携などが必要となり、カスタマイズ性に優れるパッケージの利用が望ましいといえます。

まとめ

まとめ

この記事では、EC業界の状況について整理しつつ、ECサイトの主な構築方法のメリット・デメリットを紹介しました。
従来ではECサイトの目的は商品のオンライン販売によるチャネル拡大がメインでしたが、近年ではそれに加えてOMOへの対応や、ECサイトで収集できるデータ活用といった観点でも重要度を増しています。高まり続けるEC化率の状況を踏まえても、ECサイトの導入・移行・活用は企業における重要な戦略の一つと考えられるでしょう。

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