INTERVIEW AI×バイオ技術で疾病リスクを可視化。健康寿命の延伸をめざす。| NECソリューションイノベータ

INTERVIEW

AI×バイオ技術で疾病リスクを可視化。
健康寿命の延伸をめざす。

デジタルヘルスケアサービス開発

加藤 信太郎

加藤 信太郎SHINTARO KATO

  • 情報科学研究科 修了
  • デジタルヘルスケア事業推進室
堀川 哲朗

堀川 哲朗TETSURO HORIKAWA

  • 法律学科 卒業
  • デジタルヘルスケア事業推進室
山本 弘樹

山本 弘樹HIROKI YAMAMOTO

  • 情報工学科 卒業
  • デジタルヘルスケア事業推進室

SUMMARY

2020年4月、NECソリューションイノベータはデジタルヘルスケア事業推進室を新設。AIとバイオ技術を融合したデジタルヘルスケアサービス「フォーネスビジュアス」を開発。血液中の約7,000種類のタンパク質を分析し、現在の健康状態や将来の疾患リスクをAIで導き出す。疾患予防や健康寿命延伸に貢献することを目指す。開発の背景には高齢化社会における労働力不足や健康寿命延伸の社会課題がある。企業とのアライアンスを組み、市場に広める役割を担っている。今後、アジアをはじめとした海外進出も視野に入れている。

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健康寿命を延ばすために何をすべきか?
血液中のタンパク質が、答えを示す。

2020年4月。NECソリューションイノベータに、デジタルヘルスケア事業推進室が新設された。「一人ひとりが健康づくりにしっかりと取り組める社会を目指し、その環境づくりをデジタル技術で実現するのが、私たちのミッションです」と話すのは、同部門で企画・開発推進を担当する山本弘樹である。その中で注目されているプロジェクトの一つに、AIとバイオ技術を融合したデジタルヘルスケアサービス「フォーネスビジュアス」がある。これは当社の子会社であるフォーネスライフ社と連携して行っているプロジェクトであり、「血液中の約7,000種類のタンパク質を分析することで、現在の健康状態や将来起こりうる疾患のリスクをAIが導き出し、可視化します。早期発見よりさらに早く、病気のリスクに備えることを目指すサービスです」と説明するのは、研究計画やAIによる疾患予測モデルの作成を担当した加藤信太郎だ。「例えば、4年以内に心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクや、5年以内に肺がんを発症するリスクがどのくらいあるのか示すことができます。また、何をすればその病気を避けることができるのか具体的に示すことができる可能性もあり、ただ長生きするだけでなく、健康寿命の延伸、高いクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の維持につなげることができると考えられます」。「開発の背景には、少子高齢化による労働力不足や、超高齢化社会において、いかに健康寿命を延ばすかといった、切実な社会課題がありました」(山本)。
アイディアの発端は、長年にわたって取り組んできた「アプタマー開発」である。「生物の遺伝情報を含む物質であるDNAなどを応用した技術で、標的分子(検査対象物など)に強く結合する核酸分子をアプタマーと呼ぶのですが、当社は、“アプタマー”を用いた新しいバイオセンサの研究開発を強みとしています」(加藤)。その研究過程で、米国のSomaLogic社の持つタンパク質の分析技術と出会い、新たな事業を考案。SomaLogic社と共に検査事業を行うフォーネスライフ株式会社を立ち上げ、デジタルヘルスケア事業推進室が、検査に付随するITサービスを構築することになった。

インタビュー写真1

検査をして終わり、では意味がない。
結果を踏まえ、行動変容してもらえるか。

フォーネスビジュアス」プロジェクトは、ITサービスと検査サービスの二方向から開発が進められた。山本が、企画段階でこだわったのは、ユーザーの人物像を明確にすること。「『サービスを必要としているのは、何歳位の人でどんな仕事をしていて、会社での立場はどうで、どういう性格の人なのか』『どのようなタッチポイントからアプローチをすれば、継続してサービスを利用してくれるのか』。チーム内でディスカッションを繰り返しました。検査をして終わり、では意味がない。『検査結果を踏まえて、どう行動変容してもらえるか』が重要だからです」。一方、検査サービスの開発を担当した加藤は、将来起こりうる疾患をAIで予測するアルゴリズムの作成と評価に苦心していた。「SomaLogic社で作成した予測モデルは、欧米人の集団を利用して作成されているため、日本人にも適用できるのか検証する必要があります。また、日本人の集団を用いたAIの数理モデルの開発も、NESで独自に行っています」。しかし、国内では前例のないサービス。専門家や社外研究機関とコラボレーションをしながら、「どのタンパク質がどの疾患と強く関連しているのか」を探し出したり、バイオマーカーを組み合わせて健康状態を予測したり、地道な研究を重ねたという。「その過程で、新たな知見を習得する喜びがありましたし、医師から『将来、医療をサポートする存在になっていくかもしれないね』と言われた時には、『データから新たな価値を創造できた』という手ごたえを感じました」(加藤)。

インタビュー写真2

アライアンスや他商材との組み合わせで、
トータルヘルスケアソリユーションを展開。

堀川哲朗は、ヘルスケア関連のコンサルタントをしていた前職の経験を活かし、フォーネスビジュアスを含むデジタルヘルスケアサービスを、市場に広める役割を担っている。「当社には様々なヘルスケア商材があるので、それらを組み合わせて、“トータルヘルスケア”という視点での展開も進めています」。堀川が特に力を入れているのは、企業とアライアンスを組んで、市場へのシナジー効果を創出する戦略だ。「ポイントは、顧客が取り組みやすく簡単に実行できるもので、尚且つ効果が出るものを、きちんとセレクトすること。そして、ユーザーごとに個別メニューを提供できるような仕組み作りをすることです」。例えば、スポーツジムとの連携の検討。「フォーネスビジュアスアプリにて、ユーザーの身体の状態の合わせた最適な運動メニューを提案し、行動変容につないでいただくコンテンツを企画中です。その後、疾病予測の効果検証、研究までを行うことを目標としています。フォーネスビジュアス検査は、7,000種類のタンパク質を解析する技術で、あなたの『将来の疾患予測』と『現在の体の状態』を可視化することができる検査です。よく遺伝子解析を利用した検査サービスと比較されますが、タンパク質は遺伝子と異なり、食事や運動といった生活習慣によって日々変化していく点に違いがあります。我々はこの検査技術を活用して、ユーザーの今の身体の状態によりそったヘルスケアサービスを実現したいと考えています。」「また専門的知見を保有する企業と連携し、アプリにオーラルケア(歯の健康)のコンテンツを組み込む案も進行中です。睡眠・運動・食事といった単体ではなく、データをもとにしたトータルケアソリューションを提案できるところも、社会的意義が大きい点だと思います」。

インタビュー写真3

日本が変われば、世界が変わる。
将来の海外進出も視野に。

「デジタルヘルスケアは、日本経済を活性化することにつながる」と、山本は考えている。「心身の不調によって社員のパフォーマンスが低下すれば、生産性も下がり、企業の損失に繋がります。健康経営を目指す企業を支援するサービスによって、社員がいきいき健康に働きながら、日本全体が活性化していくことを目指したい。」(山本)。「健康であることは、自分の家族を守ることでもある」と、堀川も言葉を添える。「突然、がんになったり認知症になったりすることで、家族全員の人生が変わってしまうこともあります。単純に、『あなた一人が健康でよかったですね』ではないのです」。加藤にとって仕事のモチベーションは、「人の未来を変えられること」だという。「生活習慣改善に向けたフォロー機能は人の健康意識を変える大きなきっかけになります。私自身も検査を受けてみましたが、日ごろの生活習慣で『なるほど』と思い当たることがたくさんあり、『このままではいけない』と、意識や行動が変わりました。将来的には、同じような検査結果に対しても、一人ひとりの生活スタイルに合わせたより細かな個別提案が可能になるかもしれません」。3人の共通する思いは、「日本が変われば、世界が変わる」ということ。「高齢化社会である日本の健康寿命を延ばせれば、これから高齢化を迎える海外にも適用していけます。将来的には、アジアを手始めに、海外進出をすることも視野に入れています」。

インタビュー写真4

※当社の子会社であるフォーネスライフ社から提供されるサービスが含まれます
※本記事の内容は取材当時のものです。
※所属組織は取材当時のものです。

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