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「働き方改革」推進におけるコミュニケーションの重要性

職場を活性化し、従業員の「働き方改革」に対する
意識改革を促すためのポイントとは(社会保険労務士 野田 宏明)

職場コミュニケーションの活性化が実現できれば、働きやすさの改善が生まれます。そして、それはチームの生産性向上へと繋がります。生産性が高まれば長時間労働も改善され、プライベートの充実にも繋がります。働き方改革とは、36協定の上限に抵触しないように対策するといったレベルの話しではありません。ワークライフバランスを確保し、仕事への活力に繋げることができるよう、大きな視点で取り組む必要があるのです。(社会保険労務士 野田 宏明)

「働き方改革」推進におけるコミュニケーションの重要性

日本全体における長時間労働の問題に取り組むため、36協定の上限規制など、働き方改革としての法改正が施行されます。各社、これにどのように取り組むか検討を進めていることでしょう。しかし、表面的な対応に終始しないよう注意が必要です。会社の一方的な方針により残業抑制だけを命じるような方法では、当然ながら社員のモチベーションは低下し、品質やサービスに対する問題も発生します。一時的に残業時間は減るかもしれませんが、結局、業務レベルを維持するためには元の長時間労働が必要だという話になってしまいます。「会社は法令順守という観点だけで残業抑制を指示するが、現場はそんなこと言っていられない」などは昔からよく聞こえてくる話です。本当の意味で働き方改革を実現するためには何が必要か。それは、社員自らがその目的を理解し、それに向けた取り組みを自発的におこなう状態になることです。多くの社員が、自社が取り組む働き方改革の方向性について腹落ちし、「これならやっていける」という考えを持ってもらわなければなりません。

そして、会社やチームでその空気を醸成していくためには、職場のコミュニケーションが非常に重要なものとなります。仕事を共に進めるメンバーの現状が見え、それに対するアクションをそれぞれが取りやすくなる。こういったことで、職場は活性化し、働き方改革に対する意識も次第に高まります。働き方改革と生産性向上は車の両輪と言われます。生産性向上とは、単に定型業務における作業効率化だけではありません。コミュニケーションが密に取れる状況になることも生産性向上に密接に関係します。生産性向上が実感できれば働き方改革の意識も高まる。この好循環を社員に体験してもらうことが成功の鍵と言えます。

コミュニケーション接点の創出

チームで仕事をする中では、各メンバーがそれぞれ何の業務に取り組んでおり、どのような状態にあるのかを「見える状態」にすることが重要です。メンバーはそれぞれスキルや得意分野も異なります。割り振られているタスクが順調に進捗しているか、何か問題となることは発生していないかといったことがチーム内で適切に共有できていなければ、「自分の仕事が進んでいれば問題なし」という思考に陥る可能性もあります。仕事で行き詰まっている状況を適切に報告できる人もいれば、そうでない人もいます。正しいと思って進めている手順が、先輩社員から見たらとんでもなく回り道をしていることもあるでしょう。
これらは、「言ってくれれば手伝うのに」とか、「もっと早くその問題を報告してくれれば、対策が取れたのに」といったことであり、コミュニケーション不足が原因です。ホウレンソウの大切さは頭では分かっていても、それだけでは状況が変わらないことも多いのが現状です。 では、どうすれば良いのか。これには、仕事を進める上での仕組みから工夫することにより、コミュニケーションが取りやすくなる環境と手順を構築することを、まずは考えなければなりません。
例えば、各メンバーの仕事のスケジュールや出退勤の状況がチームでリアルタイムに共有できる状況にあれば、特定のメンバーに負荷が偏っていて残業が多い状況が見て取れます。また、自分ならすぐに終わるはずの作業が他メンバーは何時間もかけて対応しているということも気づけるようになります。これらの仕組みや取り組み方の工夫により、仕事をチーム全体で効率化していこうというコミュニケーション接点が自然と生まれてくるのです。

日本における労働時間・残業時間の実態とは?

ある企業であった話しです。チームで仕事をする中で、自身が担当している業務に遅れが出始めました。本人は手を抜いている訳ではありませんが、スケジュールどおりに進まない。何とか挽回しようと残業をしますが、残業時間の抑制もあり、上司の許可を得なければなりません。その担当者は勤務時間を短く申告して上司の許可を受けずに残業を重ねました。しかし、最終段階でその進捗遅れが発覚し、チーム全体としてその対応に大変な苦労をする結果になったのです。

このような話は身に覚えがある方も多いでしょう。なぜその担当者は早い段階でチームメンバーや上司に報告し、助けを求めることが出来なかったのか。それは、自分に能力が無いと思われるのが嫌だった、報告すれば上司の怒りを買うことが怖い、最終的な帳尻を合わせられれば何とかなる、という感情によるものでした。確かにその上司は思うように進まないと部下に大袈裟に怒るタイプであり、一旦そうなると仕事以上の大変なストレスを抱えることになることは誰しもが分かっていました。進捗遅延の初期段階においては、挽回できる可能性もあるのであえて報告はしたくないと考え、遅延が顕著になってきた段階では、なぜここまで放置していたのかを問われることを恐れて報告を上げることができない。こういった状況に陥ってしまいました。
心理学の用語に「心理的安全性」というものがあります。自分が他人の反応に恐れや羞恥心を感じることなく、思うままに発言し行動できる状況のことであり、仕事の生産性に大きく影響すると言われています。これはGoogle社が2012年から4年間かけて実施した「プロジェクト・アリストテレス」という労働改革プロジェクトにおいても注目を集めました。前述の事例においても、この点がネックとなっていたことは明らかです。生産性を高めるためには職場のコミュニケーションが重要であり、それには心理的安全性が確保された状況を土台として作り出すことが重要なのです。
リーダーがこの意識を持ってチームをまとめていけるよう、企業は意識改革を進めていく必要がありますが、大企業であれば意識付けには限界があり、また、ムラもできます。従って、同時に考えるべきは、これらの状況を作り出す仕掛けであると筆者は考えます。前述した「チームの状況が見える状態」にあれば、事例にあった担当者の状況は変わっていたでしょう。他のメンバーが遅れの状況に気付くことができ、状況を早期にヒアリングすることができます。また、担当者自身も共有されていることが前提であれば報告をしやすい環境も生まれます。上司としても、突然の問題報告にならず、冷静に対応できるでしょう。
仕組みとしてのポイントは、この見える化のためのツールには客観的なデータを利用する点です。自身で申告した勤務時間ではなく、例えばPCの利用ログがベースになれば、その乖離も含めて把握することができます。このような環境をまずは早急に整え、職場コミュニケーションに活用していくことで、メンバーの意識や仕事の仕方も次第に変わってくると考えます。

仕事もプライベートも充実し、従業員の活力を向上

厚生労働省は「21世紀成年者縦断調査」において、調査対象の夫婦に対して11年間(平成14年~平成24年)の追跡調査を実施しました。これによると、夫が休日に家事・育児にかけた時間数は、その後、第二子を出生しているかどうかに大きな相関関係があることが分かりました。具体的には、「家事・育児時間なし」の場合、第二子を出生した割合は11.9%、「2時間以上4時間未満」は56.1%、「6時間以上」の場合は実に80%が第二子を出生しています。夫が仕事に追われて育児に協力する時間が取れないという状況では、現実的に第二子は難しいということが顕著に表れていることが分かります。第二子の出生率は一つの例ですが、長時間労働がプライベートの充実度に与える影響が大きいことは言うまでもありません。
職場コミュニケーションの活性化が実現できれば、働きやすさの改善が生まれます。そして、それはチームの生産性向上へと繋がります。生産性が高まれば長時間労働も改善され、プライベートの充実にも繋がります。
働き方改革とは、36協定の上限に抵触しないように対策するといったレベルの話しではありません。ワークライフバランスを確保し、仕事への活力に繋げることができるよう、大きな視点で取り組む必要があるのです。
その取り組みの第一歩として、職場コミュニケーションの活性化は重要なポイントとなります。ICTを上手く活用しながら、社員全員が同じ方向性で取り組むことができる仕組みを検討することをおすすめします。(社会保険労務士 野田 宏明)

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