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企業組織の生産性向上のために、求められる社員の行動変容とは

チーム一人ひとりが時間を有効に使える スマートパフォーマーになるためのICTの活用(ITコラムニスト 鈴木 康)

企業では、「できる人」といわれるハイパフォーマー(優秀な社員)や、「できない人」といわれるローパフォーマー(成果が出せない社員)がチームとして組織され、共に働いている。本コラムでは、これからのワークライフバランス(仕事と生活の調和)を意識した働き方の中で、チームの生産性向上を目指すために、社員に求められる行動変容について考えたい。(ITコラムニスト 鈴木 康)

組織・集団における2:6:2の法則

人が集団やグループを構成すると、自然発生的に2:6:2の内訳になるという法則がある。これは企業組織にも当てはまり、大別すると、「20%をハイパフォーマー(優秀な社員)」、「60%をアベレージパフォーマー(平均的な社員)」、「残り20%をローパフォーマー(成果が出せない社員)」に分類される。また、パレートの法則から「企業の売上の80%は社員全体の20%が生み出している」ともいわれており、高い成果を出せるハイパフォーマー(優秀な社員)が企業にとって貴重な存在であることがわかる。

ハイパフォーマー、ローパフォーマーの特長と課題

働き方改革を成功させるためには、企業組織の生産性向上が不可欠である。ここではハイパフォーマー、ローパフォーマーの特長と課題に着目し、その上で、具体的にどのような取り組みをおこない、生産性向上を目指していくべきかを考えたい。

ハイパフォーマーの特長
仕事に対して高い意識を持ち、自らの能力を高め、独力で仕事をやり通すことができ、プレッシャーを乗り越えて成果を出すことができる人材。使命感を持って仕事をおこない、仕事から充実感を得られているため、成果をあげるためには長時間働くことも厭わない。傾向として、「仕事は好きでやっていること」と感じていることが多い。仕事がそのまま自己実現につながっている。

ローパフォーマーの特長
問題に追われ常に忙しくしているが、成果につながっていない。業務が遅延しがちで、それが原因で社内外でクレームが出ることがある。 日頃のコミュニケーションが不足しているため、仕事を割り振られたときに「できません」「わりません」といえず、チームメンバーに教えを請うこともできずに、仕事を一人で抱え込んでしまいがち。結果的に一つひとつの業務に時間がかかってしまう。

ハイパフォーマーの働き方は、成果を出していることで肯定されがちであるが、「時間外労働の上限規制(2019年4月1日試行)」への抵触を持ち出さなくとも、働き方改革を推進する上で、「成果をあげるためには長時間労働もやむを得ない」という労働時間管理への意識の低さには、警笛を鳴らす必要がある。また、「独力で仕事をやり通す」というと評価に値しそうだが、チームワークやコミュニケーションという観点からは情報が共有されておらず、仕事の属人化・ブラックボックス化を招きかねない。
一方、ローパフォーマーの働き方は、社内コミュニケーション不足の問題だけでなく、孤立化というさらに深刻な問題を抱えている。例えば、業務のタスクがチームで管理されておらず、担当者からのアラートも一切なく、遅延状況を把握できないまま納期を過ぎてしまい、その問題が顕在化した場合、チームリーダーが火消しに追われ、本来の業務を進める時間を確保できないという事態を招いてしまうからだ。

「働く現場の最前線」で起きている疲弊したハイパフォーマーの退職リスク

社内で引く手あまたのハイパフォーマーは、常に重要なプロジェクトにアサインされる。そして、ときにはプロジェクトの失敗やトラブルに巻き込まれるケースもある。一般にハイパフォーマーはレジリエンス力(回復力)に強く、強いメンタルや、ストレス耐性を持っており、失敗することがあっても、そこから学び立ち直ることができるといわれている。ただし、プレッシャーに強いといっても、誰にでも限界はある。仕事の失敗や多忙な日々に疲れ、転職を考えることもあるかもしれない。そのようなとき、ハイパフォーマーが仕事にブレーキをかけて、アベレージパフォーマー(平均的な社員)としても働ける組織づくりをしておくことが、企業の離職率の改善につながる。

ハイパフォーマーが「仕事のパフォーマンスを落としたい」と思う場面はさまざまだ。結婚や出産、子育て、自身の病気、両親の介護など、人生の分岐点で、今までのように忙しく働くことができないということは誰にでも起こり得る。ただし、ハイパフォーマーが恒常的にハイパフォーマーであり続けられないことと同様に、ローパフォーマーが常にローパフォーマーとして、チームのボトルネックであり続けるわけではない。社員は成長し、変化するからだ。

ローパフォーマーを大切にする組織でこそ、全社員が高いモチベーションで働くことができる

「20%のローパフォーマー(成果が出せない社員)」を大切にする組織でこそ、全社員が高いモチベーションで働くことができる。なぜなら前述したように、「上位20%のハイパフォーマー(優秀な社員)」も、「60%のアベレージパフォーマー(平均的な社員)」も、プライベートな事情などにより、業務のパフォーマンスを落とす可能性があるからだ。「パフォーマンスを落とすと解雇されるかもしれない」などという不安を抱えながら働いていては、従業員は自身が働く会社に対して忠誠心を持つことができないし、将来に不安を感じれば、転職を意識するかもしれない。このようなことから、長期的な視点でローパフォーマーを教育し、戦力化を促すことが、従業員エンゲージメントを向上させる。

企業組織の生産性向上のために、求められる社員の行動変容とは

筆者が考えるこれからの働き方に求められる最重要ポイントは、「チーム内のコミュニケーションの活性化」である。ここでいうコミュニケーションとは業務に関する事柄に限定されない。前述した、プライベートな事情(結婚や出産、子育て、自身の病気、両親の介護など)、今日の気分、帰りたい時刻やその理由などを、赤裸々にチーム内で共有していく。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)の重要性が叫ばれる中で、チームメンバーのライフ(生活)に無関心なままでは、ワークライフバランスの実現が上手くいくはずがないからだ。これからの働き方は、チームメンバーの今日の状態、チームタスク、個人タスクを把握した上で、役割分担の見直しが必要かどうかを判断し、チーム一丸となって業務を完遂していく必要がある。

このように職場コミュニケーションを活性化することは、チーム内の共感と理解を向上させることができる。そして、チーム一人ひとりの意識改革を促すことができれば、「タスクを一人で抱え込まずに、助け合いながら働けばいい」という、仕事への取り組み方の行動変容を促進することができる。例えるなら、リレーのように複数のメンバーがバトンをつなぎながら(ときにはハイパフォーマーからローパフォーマーへ、ローパフォーマーからアベレージパフォーマーへ、チーム一丸となってバトンをつなぐことができれば)、これまでより早いスピードで業務を完遂することができ、チームの“時間創出”を実現することができる。

目指すはチーム一人ひとりが時間を有効に使えるスマートパフォーマーになること

企業組織の改革に先駆けて、数年前から企業で働く社員の一部には既に変化が起きている。仕事への意識が低いというわけではないが、ハイパフォーマーほど仕事にのめり込み過ぎず、早く帰れるときは定時で帰り、突発的な案件が発生したときには、周囲と分担しながらマイペースに業務をこなしていく彼らのことを、筆者はスマートパフォーマーと呼んでいる。スマートパフォーマーはチームワークに優れ、チームに溶け込んでいるため、アベレージパフォーマー(平均的な社員)と見分けがつきにくい。ただ、彼らには共通した3つの強みがある。
時間の使い方が上手く、仕事の進め方に無駄がない
人と人を繋ぐ”ハブ”としての役割を担い、コミュニケーション能力が高い
スケジュールの意識が高く、時には”無理”と判断することができる

強みのひとつめは「時間の使い方が上手く、仕事の進め方に無駄がない」ことである。この時間管理の意識については、彼らはハイパフォーマーより優れている。仕事で自己実現をしているハイパフォーマーは、納期は守るが、時間が許す限り最上級を目指して頑張ってしまう傾向が強い。スマートパフォーマーは予定より早くタスクが完了しても「ほどほど」を心得ており、時間に余裕を持って次の仕事に取りかかる。
次に「人と人を繋ぐ”ハブ”としての役割を担い、コミュニケーション能力が高い」ことである。スマートパフォーマーはチームに貢献しようとする意識が強く、本人がチームリーダーではなくても、チーム全体の業務が滞りなくおこなわれているかに気を配り、作業に遅れがあった場合には、メンバーに注意を促すことができる。
最後に「スケジュールの意識が高く、時には”無理”と判断することができる」ことである。スマートパフォーマーはチーム内の状況把握に優れており、長時間労働せざるを得ないような突発的な依頼に対しては「NO」ということができる。このように、働き方改革を推進する上で、チーム一人ひとりが時間を有効に使うことができるスマートパフォーマーになることが理想といえる。

まずはコミュニケーション&時間管理ツールの導入が急務

企業が働き方改革を推進する上で、ICTの活用が重要な役割を果たすことはいうまでもない。まずはコミュニケーション&時間管理ツールの導入が急務である。前述の通り、筆者が考えるこれからの働き方に求められる最重要ポイントは、「職場コミュニケーションの活性化」である。従業員の意識改革、行動変容を促進し、企業組織の生産性向上を実現するためにも、メンバー同士のコミュニケーション接点の創出が必要である。
また、これまでの勤怠管理システムだけでは、サービス残業の実態把握などは難しく、労働時間の適正な把握をする上でも、PCの操作時間と勤怠報告の乖離を"見える化"できる時間管理ツールの導入をおすすめしたい。(ITコラムニスト 鈴木 康)

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