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自治体DXとは?国が推進している理由と7つの取り組み事項を解説

お役立ちコラム

「県や他の市区町村から自治体DX推進を促されている...まだ取り組めていない状態だけれど、改めて自治体DXってどのようなもの?」

「役所内の働きかけにより自治体DXを推進していかなければならない。少し面倒だなぁ....」

2020年に総務省が「new window自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を公表して以来、各自治体が取り組みを開始している“自治体DX”。

そろそろ本格的に取り組まなければならないと思っているものの「規模が大きくて本当にできるのかな?」「腰が重いなぁ」「何をすればいいのか」と戸惑っているのではないでしょうか。

自治体DXとは、行政手続きのデジタル化や役所内のデジタル化を推進して住民の利便性向上と業務効率化を図る取り組みのことです。

各自治体では基本的に7つの重点取り組み事項をベースに、DXを推進していきます。

※リンクをクリックすると取り組み事項の箇所に移動します

これらの取り組みを今実施しないと、労働人口の減少や地域の過疎化などが後押しして持続可能な行政サービスを提供できなくなります。

自治体DXは長期的な取り組みなので、いざ動かざるを得ない状況が迫ってからではすぐには対応できません。だからこそ、自治体DXに意識が向いた今のタイミングで、改めて基礎知識を把握し、動けるように準備しておくことが大切です。

ただし、いざ実行しようと思っても、自治体DXに闇雲に取り組んでいたら思ったような成果を得られません。なぜなら、住民ニーズや目指すべき姿を明確にしないと、最適なツールやシステムが選べなかったり、スムーズなDX推進ができないためです。あなたの自治体での方向性を決めながら、第一歩を踏み出す必要があるのです。

そこで本記事では、自治体DXの概要や求められる背景、具体的な取り組み内容などの基礎知識から、いざDXを始めるとき前に知っておきたいポイントまでまとめて解説しています。

最後まで読めば自治体DXとはどのようなものなのか理解でき、今から始めようと前向きに捉えられるようになるでしょう。

今ここで自治体DXから目を背けると他の自治体の差が広がるだけでなく、いつかしわ寄せが来ます。自治体DXに取り組もうと納得するためにも、ぜひご覧ください。

1.自治体DXとは

冒頭でも触れたように、自治体DXとは、行政手続きのデジタル化や役所内のデジタル化を推進して住民の利便性向上と業務効率化を図る取り組みのことです。

少子高齢化が進むなか、現在の行政サービスはいつか限界が来ると言われています。例えば、職員が不足したときに各種申請を対面でしかできないとなると、住民には大きな負担になります。

また、都心部と郊外の差が広がり、住む地域によっては十分な行政サービスを受けられない未来が来るリスクもあります。

そこで、デジタル技術やAIを利活用して、継続可能な行政サービスを実現していく自治体DXに取り組む必要があるのです。

2020年に総務省が「new window自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を公表して以来、各自治体が下記のように住民の利便性や職員の業務効率化につながる取り組みをして自治体DXを推進しています。

【自治体DXの取り組み例】

  • 各種書類のオンライン申請手続きを開始する
  • チャットボットで24時間問い合わせ対応をする
  • AI活用で職員の業務を効率化する

※詳しくは「自治体DXの7つの重点取り組み事項」で解説しています

実際に自治体DXを推進して、業務効率化や住民の利便性向上を実現した事例も出始めています。自治体DXは避けて通れない取り組みだからこそ、自治体や職員が足並みを揃えて取り組むことが求められています。

参考:new window総務省「自治体DXの推進」
参考:new window総務省「地域におけるデジタル・トランスフォーメーション」

2.国が自治体DXを推進している3つの背景

自治体DXの概要が理解できたところで、国が自治体DXを推進している具体的な背景をご紹介します。
自治体DXは下記の3つを実現して、持続可能な行政サービスの提供を目指します。

国が自治体DXを推進している3つの背景
  • 全国どの地域でも同じ質の行政サービスを提供するため
  • 職員が働きやすい環境を維持するため
  • 365日24時間対応など従来はできなかった行政サービスを実現するため

なぜ自治体DXに取り組まなければならないのか納得感を持つためにも、ぜひ参考にしてみてください。

2-1.背景1:職員が働きやすい環境を維持するため

1つ目は、職員が働きやすい環境を維持するためです。現時点でも、自治体によっては業務量が多く、時間外労働が課題になっているケースがあります。

これに加えて、日本では1995年をピークに、生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)が減少し続けています。2050年には5,275万人(2021年と比較すると29.2%減)まで減少すると予測されており、限られた人員で行政サービスを提供しなければならない未来がそこまで来ています。

現状のままの体制では下記のような課題が起こりやすく、自治体も企業と同様に働き方改革を迫られているのです。

【現状のままの体制で起こり得るリスク】

  • 1人あたりの業務量がさらに増えてしまう
  • 業務量が多いので住民とのコミュニケーションに時間を割けなくなる
  • 属人化している作業を引き継ぎする余裕がなくなる

そこで、自治体DXを推進して業務効率化を図り、職員が働きやすい体制を整えます。

例えば、下記のようにデジタル技術を活用して今までとは異なる体制、仕組みを構築すると、限られた人員でも行政サービスの質を落とすことなく働きやすい環境を維持できるでしょう。

【自治体DXでの働き方改革の例】

  • 複数の窓口を1つに集約して、1つの窓口で複数申請ができる体制を整える
  • 電子契約システムを導入して郵送作業、確認作業を削減する
  • 役所内の連絡にチャットを活用して情報確認、連携の負担を軽減する

現在でも業務量が課題となっている自治体があるなかで、生産年齢人口が減るとますます負担が増えて業務が回らなくなります。

そうならないために、今の段階から自治体DXを推進する必要があるのです。

2-2.背景2:365日24時間対応など従来はできなかった行政サービスを実現するため

2つ目は、行政サービスの質を向上させるためです。昨今の自治体は単なる行政サービス提供の場ではなく、住民から選ばれる工夫が必要になりました。

【自治体が住民から選ばれる工夫が必要になった理由】

  • 人口減少や都市部への流出が進み、住民の選択肢が増えているため
  • 行政サービスだけでなく自治体での「暮らしの質」も比較される時代になったため
  • 地域ブランドや移住支援策の競争が全国的に活発化しているため

そのため、従来のように行政サービスを提供しているだけでは他の自治体と差がついてしまい、付加価値を提供しにくくなるのです。

自治体DXではデジタル技術やAIなどを活用しつつ、住民の「このようなサービスがあったら便利だな」を実現していく側面もあります。

下記のように、住民の利便性を向上させるサービスや、負担を軽減するサービスなどが導入されています。

【住民に寄り添った行政サービス提供の例】

  • 公共施設の予約をLINE経由で完結できるようにする
  • 24時間問い合わせ対応ができるようにする
  • 最寄りの出張所等からオンラインで相談や手続きができる環境を整える
  • 自宅から行政手続きをオンライン申請できる環境を整備する

自治体DXは自治体と住民が手を取り合って、より良い未来を描くためにも、必要な取り組みだと言えるでしょう。

2-3.背景3:全国どの地域でも同じ質の行政サービスを提供するため

3つ目は、全国どの地域でも同じ質の行政サービスを提供するためです。

現在日本は、都心部への一極集中が課題になっています。国土交通省が公表した「令和4年度版過疎対策の現況」によると、市町村の51.5%が過疎地域になっていることが分かります。

※過疎地域:人口減少により地域社会の活力が低下している地域
参考:new window国土交通省「令和4年度版過疎対策の現況」

現行の自治体体制のまま過疎地域が増えていくと、下記のように自治体のサービス提供に差が生まれる可能性があります。

都心部 過疎地域
  • 電車やバスで気軽に役所に出向ける
  • 役所の数が減り役所までの移動時間がかかる
  • 地域住民に必要なサービスが行き渡りやすい
  • サービス提供ができる範囲が限定されやすい
  • 最新技術やアイデアを活用しやすい
  • 最新技術活用のハードルが高い

例えば、都心部ではバスや電車でアクセスできる場所に役所があっても、過疎地域では何時間もかけて役所に出向くなどのケースが起こり得ます。

役所訪問のハードルが高いため住民に必要なサービスを提供しにくくなり、誰にでも同じ質のサービス提供ができなくなる懸念があるのです。

そこで、どの地域でも同じ質の行政サービスが受けられるように、自治体DXが求められています。

一例として、役所手続きが必要な書類をオンライン申請ができるようになれば、住まいの地域を問わず同じ負担感でサービスを受けられます。

また、訪問サービスやチャットでの問い合わせ対応なども普及すれば、誰にでも同じ質の行政サービスが提供しやすくなるでしょう。

このように、「~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」の実現のために、自治体DXを推進する必要があります。

3.自治体DXは今このタイミングから取り組むべき

ここまで触れたように、自治体DXは国が推進しており、取り組みを開始している自治体が増えています。

一方で、自治体DXに取り組むには下記のように様々な壁があり、あと一歩が踏み出せないケースも見受けられます。

【自治体DXを推進するときの壁】

  • 今の体制や業務内容を変えることによる反発
  • デジタル人材や予算不足
  • 新しい風土や考え方を取り入れる不安

例えば、自治体DXは必要だと思ってはいるものの、今の業務内容を変える不安から反発の声がありなかなか推進できないことが考えられるでしょう。

しかし、今自治体DXを推進しないと他の自治体の差が広がり、選ばれにくい自治体になってしまう可能性があります。また、人材不足のなか、業務量が増え続けて職員が疲弊することも考えられます。

後回しにするよりも、今自治体DXを推進したほうが最大限に恩恵を受けられて、いち早く業務効率化や住民の満足度向上などを実感できるでしょう。

実際に、自治体DXによって下記のような成果が生まれています。

【自治体DXの成果例】

  • 長野県塩尻市:保育園の入園申請を原則オンライン化で業務時間を年間約500時間削減
  • 福岡県北九州市:マイナンバーカードから情報を読み取り手書きを減らすことで申請時間を1回あたり約15分短縮
  • 宮崎県串間市:市のLINE公式アカウントで施設予約を自動化したことで事務処理負担を1割程度に軽減
  • 大阪府豊中市:業務フローを見直してAI・RPAの導入に注力して、年間約10,400時間の業務を削減、1人当たりの時間外勤務を17.5%減らせた

今までにない挑戦は少なからず負荷がかかりますが、持続可能な自治体を実現するためにも今この瞬間からDX推進を検討してみましょう。

4.自治体DXの7つの重点取り組み事項

自治体DXを推進している背景が理解できたところで、実際どのようなことに取り組むのか気になるところです。

ここでは、総務省が提示している7つの重点取り組み事項を事例を踏まえてご紹介します。
基本的には、この7つの重点項目に沿って、各自治体がそれぞれDXを進めていきます。

7つの重点取り組み事項 概要
自治体フロントヤード改革の推進 行政と住民の接点を根本的に変革して効率的で利便性の高い行政サービスを目指す
自治体の情報システムの標準化・共通化 標準化対象事務(子育て支援や戸籍、介護、国民年金など)に基準に適合した情報システムを活用する
公金収納におけるeL-QRの活用 eL-QR(地方税統一QRコード)を活用して地方税や保険料などの公金収納を行う
マイナンバーカードの普及促進・利用の推進 マイナンバーカードを有効活用して業務効率化や利便性向上を目指す
セキュリティ対策の徹底 DXを推進するためにセキュリティ対策の強化や見直しをする
自治体のAI・RPA(業務自動化)の利用推進 業務にAIやRPAを活用して行政サービスの質向上や業務効率化を目指す
テレワークの推進 職員の働き方改革の一環としてテレワークができる環境を整える

重点取り組み事項はどれか1つに取り組むのではなく、全てを実践できるように計画的に推進するものです。DX推進時にはどのような取り組みをするべきか、参考にしてみてください。

【7つの重点取り組み事項と併せてデータの整備や業務プロセスの改善なども推進する】

自治体DXでは7つの重点取り組み事項の他にも、スムーズなDX推進の実現・業務改善や住民の利便性向上、この2つの観点から、データ整備、業務プロセスの改善なども早い段階から進めていく必要があります。

そのほか、自治体独自の課題に合わせたDXの取り組みをしていく必要もあります。

4-1.自治体フロントヤード改革の推進

自治体フロントヤード改革は、行政と住民の接点(フロントヤード)を根本的に変革し、効率的で利便性の高い行政サービスを目指す取り組みのことです。

2023年に総務省が方針を掲げたことを機に、本格的に取り組みを開始しました。自治体フロントヤード改革では主に窓口業務に焦点を充てて、下記の3つの段階に分けてDXを推進します。

自治体フロントヤード改革の3つのステップ
住民との接点の多様化・充実化
  • 原則オンラインでの書類申請を推進する
  • リモートやチャットでの相談窓口を用意する
データ対応の徹底で窓口業務等を改善
  • データを利活用して改善点を明確にする
  • ペーパーレス化でデータを統合管理する
庁舎空間を多様な主体との協働の場に改革
  • 業務効率化により空いた時間を使い住民にきめ細かな対応ができるようにする

参考:new window総務省「自治体フロントヤード改革推進手順書 概要」

とくに、窓口業務の課題である「書かせない」「待たせない」「迷わせない」「行かせない」に着目して、デジタル技術を利活用しながら、住民の利便性向上と業務効率化を目指します。

窓口業務の改善ポイント 概要・例
書かせない
  • 住民が申請内容、個人情報などを記入する負担を軽減する
<例>
  • オンライン経由で事前入力をする
  • マイナンバーカードの情報を読み込み活用する
待たせない
  • 住民が来庁したときの待ち時間を削減する
<例>
  • 事前予約を導入する
  • キャッシュレス決済を導入する
迷わせない
  • 住民が来庁したときに迷わず手続きができるようにする
<例>
  • チャットやチャットボットでの無人案内を活用する
  • 窓口を1本化する
行かせない
  • 住民が役所に来なくても必要な手続きができるようにする
<例>
  • アナログ規制の見直し
  • オンライン上で手続きが完了するように体制を整える
  • リモート窓口を設置する

参考:new window総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」

例えば、現在介護や子育て、転居などの手続きは、役所の窓口でしか受付していないとしましょう。

手続きが必要な住民は必ず窓口に出向かなければならないため、大きな負担になります。それだけでなく、窓口は混雑するため待機時間が発生して、手続き完了までに時間を要します。

職員は連日混み合う窓口業務に追われて、住民と向き合う時間の創出が難しくなっている状況があります。

自治体DXの推進によりリモート窓口やオンライン申請、事前予約などができるようになると、住民と職員双方にメリットが大きい窓口に生まれ変わります。

窓口業務の利便性を高め、住民が手軽に必要な行政サービスを利用できる体制を目指します。

【自治体フロントヤード改革の施策例】

長野県塩尻市では、保育園の入園申請を原則オンライン化しました。従来は紙面の申請書を利用していたものの、手続きに時間がかかる課題があったためです。

現在はオンライン申請率97%を達成して、データ入力などの業務時間を年間約500時間も削減できました。
従来は3ヶ月半かかっていた住民への決定通知書発送期間も、1ヶ月短縮できています。

オンラインで受付した情報は基幹業務システムに連携でき、申請段階からチェックを重ねられるので人的ミス軽減にもつながっています。

オンライン上で必要な情報を閲覧できる「往訪閲覧・縦覧デジタル化ソリューション」
自治体フロントヤード改革を進めるときには、セキュリティを強化しつつオンライン上で住民が必要な情報を確認、閲覧できるようなシステム選定が必要です。

NECが提供している「往訪閲覧・縦覧デジタル化ソリューション」は、大企業・官公庁でも多数採用されている情報共有プラットフォーム「PROCENTER/C」を活用しながらNECが初期設計から導入まで伴走してDXをスムーズに推進します。

「往訪閲覧・縦覧デジタル化ソリューション」を活用すると、下記のような環境を整えられます。

  • 透かしを入れるなどのダウンロード不可機能、複写抑止機能で安全に情報を共有できる
  • 文書管理基盤で開示書類の原本を一元管理できる
  • 開示期間終了後には開示書類をアプリから自動で削除できる
また、NECは自治体の支援実績が豊富なので、自治体特有の背景を踏まえた提案も可能です。

DX推進時の「どのようにツールを導入すればいいのか分からない」「専門的な知識がなくて判断ができない」というハードルの高い部分をしっかりとサポートさせていただきます。

まずはお気軽にお問い合わせください。

今すぐ問い合わせをする

4-2.自治体の情報システムの標準化・共通化

自治体の情報システムの標準化・共通化は、自治体が実施する標準化対象事務(子育て支援や戸籍、介護、国民年金など)に適合した情報システムを活用する取り組みです。

全国の自治体が同じ標準仕様をベースとした情報システムを使って、今までの課題を解消することが狙いです。

基幹業務システムは、自治体ごとに発展させてきたため、下記のような課題を抱えています。

【自治体の基幹業務システムの課題】

  • 維持管理やカスタマイズなどに個別対応が必要になり負担が大きい
  • 自治体ごとのシステムの差異調整が負担となり、クラウド利用が円滑に進まない
  • 自治体間の連携が難しい

そこで、2021年に施行した「new window地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」で利用が義務化されたため、順次各自治体が標準化基準に適合した情報システムへの安全な移行が必要になりました。

情報システムの標準化・共通化が進むと、各書類の処理や管理負担が軽減できます。

それだけでなく、自治体間でデータ連携がしやすくなり、自治体をまたいだ情報の連携、活用も実現できるでしょう。

2025年1月時点の標準準拠システムへの移行は、全市区町村の59.2%が完了している状況で、従来の計画より遅れが出ています。

【自治体の情報システムの標準化・共通化の施策例】

宮城県では県内全35市町村で構成されている「宮城県電子自治体推進協議会自治体クラウド専門部会」で、標準化・共通化に関する市町村会議を開催しています。

今までガバメントクラウドの勉強会や移行に関する課題の情報共有などを実施しました。

また、県内の進捗が遅れている自治体には個別にヒアリングを実施するなど、県と各自治体が連携しながら自治体の情報システムの標準化・共通化を進めています。

4-3.公金収納におけるeL-QRの活用

公金収納におけるeL-QRの活用は、eL-QR(地方税統一QRコード)を活用して地方税や保険料などの公金収納を行う取り組みです。

デジタル庁を始め関係府省庁が主体となり進めており、自治体には体制の整備などを進める必要があります。

自治体では、公金収納のために年間4億件(推計)近い納付書を作成していました。多くが紙面を用いた対面での支払いで、業務負担が大きい背景があります。

そこで、納付書にeL-QRを付けて様々な支払い方法を選択できるようにすれば、窓口の混雑を防げるようになります。また、支払い情報が自動でデータ化できるため、納付書の仕分けやデータ入力の手間を削減できます。

【eL-QRを活用するメリット】

  • 自治体ごとで決済方法が異なる現状を改善して支払い方法を統一できる
  • 支払い方法を増やせるため窓口の混雑を軽減できる
  • 支払い情報が自動でデータ化でき事務処理時間を削減できる

今後はeL-QRを活用する公金収納を拡大していくことで、自治体、住民双方の負担を軽減し、DX推進を目指します。

【公金収納におけるeL-QRの活用の施策例】

2023年4月からeL-QRを活用した地方税の納付が始まっています。納付書に付されたeL-QRを読み取るとeLTAXやスマートフォン決済アプリなどからの電子納付が可能となりました。

また、eL-QR対応金融機関であれば、全国どの金融機関窓口でも地方税の納付が可能です。

2024年にはeL-QRを地方税以外の公金収納に活用することを盛り込んだ地方自治法の一部を改正する法律が公布されたので、今後活用範囲が拡大する見込みです。

4-4.マイナンバーカードの普及促進・利用の推進

マイナンバーカードの普及促進・利用の推進は、マイナンバーカードを有効活用して住民の利便性の向上や業務効率化を目指す取り組みです。

2025年9月末時点でのマイナンバーカードの保有率は79.6%と、保有者が増えている状況です。一方で、マイナンバーカードの本人確認・証明機能を活用するまでは至っていないケースが多いです。

自治体では、下記のようにマイナンバーカードを活用してDXを推進しているケースがあります。

【自治体DXでのマイナンバーカードの利用促進の例】

  • マイナンバーカードに記録されている個人情報を書類に印字して手書きの負担を減らす
  • 図書館などの利用時にマイナンバーカードで利用できるようにする
  • マイナンバーカードを市民カードとして活用してポイントを付与する
  • 災害時にマイナンバーカードで本人確認をする

例えば、役所での申請手続きでは、氏名や住所などの個人情報を記載しなければなりません。
毎回住民が手書きをして職員が確認するとなると、双方に負担がかかります。

そこで、マイナンバーカードに記録されている情報を活用して申請情報の入力を一部自動化できれば、窓口業務の効率化につながるでしょう。

【マイナンバーカードの利用の推進の施策例】

福岡県北九州市では事前に住民に説明をしたうえで、マイナンバーカードから情報を読み取り、住所や氏名などを手書きしなくても良い体制を整えています。

導入前は平均7~8枚程度の様式に個人情報を手書きする必要がありましたが、今では不要になりました。障害者手帳の交付手続きでは申請時間を1回あたり約15分短縮できました。

4-5.セキュリティ対策の徹底

セキュリティ対策の徹底は、自治体DX推進にあたり様々なデータ、デジタル技術を安心して扱える環境を整えることを指します。

近年、自治体が持つ個人情報や機密情報を狙った不正アクセスなどの被害が多数発生しています。自治体は住民の個人情報や地域の機密情報を保持しているため、流出すると大きなトラブルに発展するリスクがあります。

とくに自治体DXを機にデータの管理、活用方法を変更するタイミングでは、従来と扱い方が変わるのでセキュリティ対策を徹底する必要があるのです。

自治体のセキュリティ強化は、総務省が策定した「new window情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」や「new window地方公共団体における 情報セキュリティ監査に関するガイドライン」などを基準に見直しや対策をしていきます。

ガイドライン名 主な内容
情報セキュリティポリシーに関するガイドライン
  • セキュリティの基本方針の策定
  • 物理的セキュリティ対策基準:多要素認証や監視カメラ設置など物理的に強化するなど
  • 人的セキュリティ対策基準:セキュリティに関するリテラシーを向上するなど
  • 技術的セキュリティ対策基準:システム・ツールなどによってセキュリティを強化するなど
地方公共団体における情報セキュリティ監査に関するガイドライン
  • 情報セキュリティ監査の基準や手順
  • 情報セキュリティ監査の項目
  • 情報セキュリティの見直し、改善のポイント

例えば、今までデジタル技術の利活用をしていなかった場合は、導入するツールやDXの計画に応じてセキュリティの基本方針から策定していく必要があります。

ある程度セキュリティ対策をしている場合は、DX推進にあたり強化や見直しを図る必要があるでしょう。

【セキュリティ対策の徹底の施策例】

愛知県名古屋市では「名古屋市情報セキュリティ基本方針」を策定して、セキュリティポリシーや対象とする脅威を明確にしています。

DX推進時にはリスクの整理や適切な対策なども検討して、セキュリティ強化を目指しました。

4-6.自治体のAI・RPA(業務自動化)の利用推進

自治体のAI・RPA(業務自動化)の利用推進は、新しい技術を活用して業務効率化やサービスの質の向上を目指す取り組みです。

今後生産年齢人口が減少することを見越した自治体業務の一部自動化や簡略化や、人的対応が難しい範囲のサービス向上などへの活用が期待されています。

最新技術 自治体での活用例
AI
  • チャットボット(24時間自動での問い合わせ対応)
  • 音声認識(多言語の自動翻訳)
  • 文字認識(アンケートの自動読み込み)
  • 自動通知(定期健診などの対象者に自動でメール送信)
  • データ予測(来庁数、予算などの予測)
RPA
  • 納税通知書の作成(対象者を抽出してRPAで形式を変換、通知書を自動作成)
  • 情報の転記(抽出した情報を指定のフォーマットに転記)
  • スケジュールの転記(各々のスケジュールを収集してフォーマットに転記)

※RPAとは:処理すべきリストやシステム上のデータをもとに決められた処理を行い、その結果を帳票やリスト、システム上にデータとして反映する技術のこと

例えば、住民から「必要なタイミングで問い合わせができるようにしてほしい」という要望があったとしましょう。

人的リソースだけでは24時間対応は難しいですが、自動応答するチャットボットを活用するといつでも問い合わせ対応ができる体制を整えられます。

また、日々のデータ収集や分析に時間を要している場合は、AIとRPAを組み合わせて活用して自動で情報収集をして分析することも可能です。

このように、AIやRPAを活用すると、自治体DXがより推進しやすくなります。ただし、知識不足や活用の難しさが課題になりやすい領域なので、知識のある人材を確保してから進めることが重要でしょう。

【AI・RPAの利用推進の施策例】

大阪府豊中市は、業務フローを見直してAI・RPAの導入に力を入れていました。

2023年3月末時点で請求書等の支払事務や固定資産台帳登録など77業務にRPA・AI-OCR(紙の文書や画像データをAIを活用して自動的にデジタルデータに変換する技術)を活用しています。

その結果、年間約10,400時間の業務を削減でき、1人当たりの時間外勤務状況は17.5%も減らすことができました。

4-7.テレワークの推進

テレワークの推進では、多様な働き方の実現やBCP(緊急事態が発生したときにできるだけ早く再開させるための計画のこと)を見据えてテレワークができる環境整備を目指します。

一般企業だけでなく、自治体も下記のような視点から、テレワークができる環境が必要だと考えられています。

【自治体にテレワークが必要な理由】

  • 介護や育児と仕事を両立するなど多様な働き方を実現するため
  • 行政サービスの品質を向上するため
  • 感染症や震災など予期せぬ事態に備えるため

参考:new window総務省「地⽅公共団体における テレワーク推進のための⼿引き」

そのため、テレワーク向けの設備や業務マニュアル、体制などを整え、いつ何時でもテレワークに移行できる準備が求められています。

例えば、役所から遠い地域に住んでいる職員をテレワークに切り替えると、職場に出向くのではなくそのエリアの住民に寄り添いサービスを提供できるようになります。

その結果、サービスの品質向上や職員の働き方改革を実現できるでしょう。

【テレワークの推進の施策例】

鹿児島県肝付町では、テレワークを地域に寄り添うためのツールとして捉え、どこでも仕事ができる環境づくりをするために自治体情報システムを整備しました。

どこでも仕事ができるようになったことで、民間事業者に出向く窓口の検証提案を行うなど、積極的な動きにつながっています。

また、保健師が遠隔地の高齢者宅を訪問するときに情報を確認しながらオンラインでケア会議を実施するなど、場所に囚われない行政サービスの実現ができるようになりました。

5.自治体DXの推進事例

とはいえ、7つの重点項目を行おうと思っても、なかなかイメージがつきにくいでしょう。
そこで、ここでは、実際に自治体DXに取り組んでいる自治体の好事例をご紹介します。

自治体名 自治体DXの概要
東京都町田市
  • 2021年から改正を重ねながらDXを推進している
  • 2025年度は生成AI活用や一気通貫でのデジタル化などの目標を掲げている
熊本県熊本市
  • 2024年度~2027年度を計画期間とした「くまもとDXアクションプランを策定している
  • 教育や産業など7つの分野に区切ってDXを推進している
愛知県一宮市
  • 7つの重点取り組み事項に沿って独自のDXの取り組みを展開している
  • 2023年度は120手続き、15,278件のオンライン申請を実施できた

自治体DXの取り組み内容や全体像が把握できるので、参考にしてみてください。

5-1.東京都町田市

東京都町田市は2021年に「町田市デジタル化総合戦略2021」を策定して、毎年度改定を重ねながらDXを推進しています。

「行政サービス改革=DX」を町田市の成長戦略として位置づけ、様々な提言をもらいながら積極的にチャレンジし続けており、下記のような成果を残しています。

【2024年度末でのDXの成果の一例】

  • 業務システムのクラウドサービス移行率:100%
  • オンライン化した行政手続数:553件
  • オンライン申請の件数:約10万件
  • 職員の生成AI利用実績:約14万回(2024年4月~2025年8月)

参考:new window東京都町田市政策経営部デジタル戦略室「町田市デジタル化総合戦略2025」

最新の取り組みである「町田市デジタル化総合戦略2025」では行政サービスを「人手のかかるサービスデザイン」から「デジタルベースのサービスデザイン」への変革を目指しています。

今までの取り組み成果や課題を踏まえ、下記の3つに力を入れてDXを推進しています。

3つのポイント 概要・例
生成AIを活用し、誰でも便利で簡単に使えるサービスを創出 生成AIが短期間に著しく進化したことを受けて、生成AIを活用して行政サービスをアップデートする
<例>
  • 生成AIを活用した音声・画像の利用
  • ナレッジ検索などの生成AIアプリの導入
  • 生成AI活用での多言語対応
標準化・共通化された広域連携の仕組みを活用し、シンプルなサービスを実現 関係機関とスムーズに連携してシンプルに分かりやすくサービスを提供する
<例>
  • ワンストップでの保活サービスの提供
  • 国が定める標準準拠システムへ移行
一気通貫のデジタル化とまちのデータ化を推進し、サービスを変革 デジタル技術を活用してデータ化、サービス変革を推進する
<例>
  • 病児・病後児保育システムの導入
  • 出生届のオンライン化の検討

参考:new window東京都町田市政策経営部デジタル戦略室「町田市デジタル化総合戦略2025」

また、町田市ではDXを円滑に推進するために、政策経営部デジタル戦略室を設置する、DX推進ミーティングを実施するなどの体制を整えています。

例えば、DX推進ミーティング「デジラボ」では職員のDXマインドの底上げやDX推進スキルの向上などを目指した支援をしており、全職員が足並みを揃えられるような工夫も取り入れています。

5-2.熊本県熊本市

熊本県熊本市では行政サービスなどのDXを推進するため、2024年度~2027年度を計画期間とした「くまもとDXアクションプランを策定しています。

下記の7つを基本施策として、それぞれの分野でDXを推進している点が特徴です。

DX分野 概要・例
窓口DX
  • 市役所の窓口に行かなくても手続きができる状態を目指す
  • 来庁する場合はより早く簡単に手続きができる状態を目指す
<例>
  • 行かない、書かない、待たない窓口の実現
  • 予約システムの導入
  • 多様な決済手続きの拡充
こども・教育DX
  • デジタル技術を活用して教育の質、保護者の利便性の向上を目指す
<例>
  • 保護者と学校間のコミュニケーションアプリの活用
  • 電子図書館の拡充
保険・福祉DX
  • デジタル技術を活用した健康増進、介護利用などに取り組む
  • 業務効率化によりサービスの質を向上させる
<例>
  • 介護認定業務の効率化
  • エビデンスに基づく健康増進や介護予防の取り組み
産業・環境DX
  • 中小企業や農漁業者のDXを推進する
<例>
  • スマート農業や観光DXの推進
  • 中小企業のDX推進支援
都市・交通DX
  • デジタル技術を活用して多様な交通手段を整備して持続可能な公共交通の確立を目指す
<例>
  • AIを活用してリアルタイムに最適な配車をする
  • 市電のキャッシュレス化
地域・防災DX
  • 様々な分野でマイナンバーカードを活用して利便性の向上を図る
<例>
  • 各種医療費助成受給者証とマイナンバーカードの一体化
  • 建物被害認定調査の効率化
市役所DX
  • 市役所の内部業務を効率化して職員の働き方改革を進める
<例>
  • 契約事務のオンライン化
  • AIの活用

参考:new window熊本市「くまもとDXアクションプラン」

例えば、こども・教育DXでは、児童生徒の利便性を最優先に考えてセルラーモデル(Wi-Fiがない環境でも使えるモデル)iPadを1人1台配備しました。

2024年1月からは、こどもの権利に関するチャット相談をモデル的に実施しています。また、7つを基本施策を促進できるように、デジタル人材の育成や確保、推進体制の強化にも取り組んでいます。

5-3.愛知県一宮市

愛知県一宮市ではDXを推進するために「自治体DXの7つの重点取り組み事項」に沿って、下記のような独自の取り組みを実施しています。

重点取り組み事項 愛知県一宮市のDX推進取り組みの例
自治体フロントヤード改革の推進
  • ぴったりサービス:子育てや介護などのオンライン手続きに対応
  • 一宮市スポーツ・公園施設予約システム:施設の空き状況、予約をオンラインで確認
  • いちのみや子育て支援サイト:で子育てに関する情報をオープンデータとしても公開
自治体情報システムの標準化・共通化
  • 20業務を2025年度内に標準システムに移行することを目指す
自治体のAI・RPAの利用推進
  • AI多言語翻訳機:通訳者を必要とせずに様々な言語の方とコミュニケーションを取る
  • AI電話自動応答サービス:申告相談会場の予約受付で24時間対応可能なAI電話自動応答サービスを実施
  • AI議事録作成システムの利用:音声データから自動で文字起こしをして議事録を作成
テレワークの導入
  • テレワークシステムを導入し職員がテレワークを開始

参考:new window一宮市「一宮市DX推進計画」

例えば、自治体フロントヤード改革の推進では、一部の手続きでオンライン申請、手続きができる環境を整備しています。2023年度は120手続き、15,278件のオンライン申請を実施しています。

また、随時DXの推進状況を住民と共有できるように「new window地域DXの歩み」というページを設けており、住民を巻き込みながらDXを進めています。

6.自治体DXに取り組むときの流れ

ここまで、自治体DXで何をやるのかと、他の自治体がどのように取り組んでいるのか紹介してまいりましたが、実際に取り組むときは、下記の4つのステップを意識して進めましょう。

ステップ 行うことの例
ステップ1:全体方針の決定 自治体DXの全体的な方針を決める
<例>
  • 現状の把握とDXの目的を明確にする
  • 7つの重点項目の中で取り組む優先順位を決める
  • 工程表や計画書を策定する など
ステップ2:推進体制の整備 自治体DXを推進する体制を整える
<例>
  • DX推進部門を設置する
  • 役所内の体制を整える(部門を超えた連携など)
  • DX推進の責任者、責任を持つ部署を決める
ステップ3:DX推進をする人材の確保 自治体DXを推進する人材を確保する
<例>
  • デジタル人材の確保、育成をする
  • 企業や他の市区町村と連携する
ステップ4:取り組みの実行 計画に沿って自治体DXを推進する
<例>
  • 優先順位の高い施策からスモールスタートする
    (例:まずは一部問い合わせにチャットボットを使用する)
  • DX推進時の課題、成果をまとめる機会を設けて継続して取り組みやすくする

とくに重視したいのは、全体方針の決定と推進体制の整備です。

自治体DXはやみくもに取り組むとデジタル技術を導入できたものの、職員や住民に利用されず形骸化することがあります。

単なるデジタル化ではなく住民の利便性向上や職員の働き方改革につなげるためにも、事前に方針をしっかりと固めておきましょう。

また、自治体DXは役所全体で足並みを揃えて、計画的に取り組むことが大切です。DX推進部門を設置する、各部署に担当者を設けるなど体制を整えてから、具体的に進めるようにしましょう。

7.自治体DXの現状と課題

自治体DXの事例のように積極的にDXに取り組んで、効率化などに成功している自治体がある一方で、実際のところは、自治体の取り組み状況に差があるのが現状です。

多くの自治体では全体方針(自治体DXの方向性の決定)の策定が終わり、段階的な実行フェーズに移行している傾向があります。一方で、自治体DXに後ろ向きな自治体との差が生まれています。

総務省が公表している「new window自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第4.0版】」によると、全都道府県で全体方針が策定済み、市区町村では49.7%が策定済みの状態です。

また、自治体DXの重点取り組み事項ごとに、円滑に進んでいる領域や課題が残る領域が出てきています。

自治体DXの取り組み内容 自治体DXの現状
DXを推進する体制づくり
  • 全自治体の53.3%がDX推進部署を設置している
自治体フロントヤード改革
  • オンライン申請システムの導入が最も進んでいる
  • AIチャットボットやチャット相談などデジタル技術を活用したサービス提供領域では活用できている自治体の割合が低くなる
自治体の情報システムの標準化・共通化
  • 標準準拠システムへの移行は全市区町村の59.2%が完了している
セキュリティ対策の強化
  • 情報セキュリティ責任者であるCISOの任命は全自治体の93.6%で実施済みになっている
AIの導入・活用
  • 都道府県や指定都市ではAI導入100%を達成している
  • 音声認識や文字認識、チャットボットによる応答でのAI活用が多い傾向がある
RPAの導入・活用
  • RPA導入は都道府県や政令指定都市では導入率が高くなっているものの、その他の市区町村では40.7%にとどまっている
  • 財政・会計・財務領域でのRPA活用が進んでいる
テレワークの導入・促進
  • テレワークを導入している自治体は都道府県や指定都市では100%を達成している
  • 実際にテレワークを実施できる自治体の割合に差がある

この背景には、DXに対する抵抗感や知識不足、費用負担などの課題があると考えられます。

自治体DXの課題
  • DXを推進する文化・考え方が醸成できていない
  • 知識やノウハウが不足している
  • 費用がネックになりなかなか進まない

「自治体DXに取り組む時間がない」「アナログの方法でも問題なく業務ができている」など、自治体DXを受け入れない体制のままでは、自治体ごとの差がどんどん開いていきます。

自治体DXの課題が見て見ぬふりをするのではなく、どうすれば取り組めるのか考えていく姿勢が求められるようになっていきています。

自治体DXの現状や課題は、下記の記事で詳しく解説しています。より具体的なデータをもとに現状や課題を把握したい場合は、ぜひ参考にしてみてください。

8.自治体DXを進めるときのポイント

7.自治体DXの現状と課題でもお伝えしたとおり、自治体DXを進めるには、課題があるのが事実です。

そこで、自治体DXを進めるときに事前に知っておきたいポイントを3つ、ご紹介します。

自治体DXを進めるときのポイント
  • 自治体DXを目的にしない
  • 段階的に進める計画を立てる
  • 住民の理解を得る

自治体DXをスムーズに進めて、形骸化させず業務効率化や利便性向上につなげるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

8-1.自治体DXを目的にしない

1つ目は、自治体DXを目的にしないことです。自治体DXはあくまでも変革を推進する「手段」であり、目的やゴールではないからです。

多くの市区町村がDXを推進している様子を目の当たりにすると「自治体DXに取り組みたい」と、DXそのものを目的だと感じてしまうケースがあります。

そのままDXを推進するとデジタル技術を導入したものの、思ったように活用できずDX推進のモチベーションが維持できないことが考えられます。

このようなときは一度立ち止まって、自治体DXを推進して描きたい自治体の未来を明確にしてみましょう。

【自治体DXの目的の例】

  • 住民の利便性を〇%向上させる
  • 職員の時間外労働を年間〇時間削減する

例えば、自治体DXを推進して住民の利便性を向上させる目的と、単にデジタルツールを導入するのではなく、そのために必要なツールや体制、計画などが検討しやすくなります。

「自治体DXを推進してみたい」で始めるのではなく、なぜ自治体DXを推進するのかを明確にするところから始めましょう。

8-2.段階的に進める計画を立てる

2つ目は、段階的に進める計画を立てることです。「4.自治体DXの7つの重点取り組み事項」でも触れたように、自治体DXの取り組み内容は多岐に渡ります。

一度に推進しようとすると下記のような課題を抱えやすく、結果的にDXが推進できない状況に陥りやすいです。

【自治体DXを一度に推進すると起こりやすい課題】

  • 一時的にコスト、労力の負担が大きくなる
  • どの範囲から活用すればいいのか分からない
  • ツール同士の連携がうまくできない

例えば、一度に複数のツールを導入すると、一時的にコストや労力の負担が大きくなります。

それだけでなく、職員や住民が慣れるまでにどうしても時間がかかり、使わないツールが出てくることも考えられるでしょう。

このような事態に陥らないためにも、段階的に推進するように計画を立てることが大切です。事例で紹介した東京都町田市では、毎年DXの推進状況を振り返って重点的な取り組みを決めています。

また、まずはオンライン窓口を設置するなど、優先度の高い取り組みから開始することも検討できるでしょう。

このように、段階を踏み着実にDXを推進していくと、自治体の変革につながる取り組みになります。

8-3.住民の理解を得る

3つ目は、住民の理解を得ることです。自治体が住民向けにデジタル技術を活用した行政サービスを展開しても、住民に利用してもらえなければ意味がないからです。

例えば、子育て支援に関するアプリやオンライン申請を開始しても、子育て世代に浸透していなければ利便性の向上につながりません。

自治体側が単独でDXを推進するのではなく、下記のように住民に寄り添い理解を得ながら取り組む姿勢を大切にしましょう。

【自治体DXで住民の理解を得る例】

  • 住民との意見交換の場を設ける
  • 住民への説明会を実施する
  • 住民から意見を募る

例えば、自治体DXを推進するときに住民と意見交換をする場を設けて、利用状況や課題などリアルな声を集めると住民を巻き込みやすくなります。

また、オンライン窓口やチャットボットなど新しい行政サービスを開始するときには説明会などを開き、使い方をレクチャーするのも1つの方法です。

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自治体DXは様々な角度からデジタル技術、AI活用が求められます。

「何から始めればいいのか分からない...」と悩む場合は、自治体フロントヤード改革の一部を実現できる「往訪閲覧・縦覧デジタル化ソリューション」をご検討ください。

「往訪閲覧・縦覧デジタル化ソリューション」は、職員の負担を軽減しつつ下記のようなDXに欠かせないセキュアな情報共有ができる環境を整えます。

  • 透かしを入れるなどのダウンロード不可機能、複写抑止機能で安全に情報を共有できる
  • 文書管理基盤で開示書類の原本を一元管理できる
  • 開示期間終了後には開示書類をアプリから自動で削除できる
また、単にソリューションを提供するのではなく、情報共有プラットフォーム「PROCENTER/C」を活用しながらNECが初期設計から導入まで伴走してDXをスムーズに推進できる点が大きな強みです。

「専門知識のある職員がいない」「活用できるか不安」など、自治体DXのハードルだと感じるポイントにしっかりと伴走するので不安を払拭できます。

NECは自治体の支援実績が豊富なので、自治体特有の背景を踏まえた提案も可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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9.まとめ

本記事では、自治体DXの基礎知識をまとめて解説しました。最後に、この記事の内容を簡単に振り返ってみましょう。

〇自治体DXとは、行政手続きのデジタル化や役所内のデジタル化を推進して住民の利便性向上と業務効率化を図る取り組みのこと

〇国が自治体DXを推進している背景は下記の3つ

  • 全国どの地域でも同じ質の行政サービスを提供するため
  • 職員が働きやすい環境を維持するため
  • 365日24時間対応など従来はできなかった行政サービスを実現するため

〇自治体DXという新しい挑戦は一定の負荷がかかるが、持続可能な自治体を目指すために今から取り組む

〇自治体DXの7つの重点取り組み事項は下記のとおり

7つの重点取り組み事項 概要
自治体フロントヤード改革の推進 行政と住民の接点を根本的に変革して効率的で利便性の高い行政サービスを目指す
自治体の情報システムの標準化・共通化 標準化対象事務(子育て支援や戸籍、介護、国民年金など)に基準に適合した情報システムを活用する
公金収納におけるeL-QRの活用 eL-QR(地方税統一QRコード)を活用して地方税や保険料などの公金収納を行う
マイナンバーカードの普及促進・利用の推進 マイナンバーカードを有効活用して業務効率化や利便性向上を目指す
セキュリティ対策の徹底 DXを推進するためにセキュリティ対策の強化や見直しをする
自治体のAI・RPA(業務自動化)の利用推進 業務にAIやRPAを活用して行政サービスの質向上や業務効率化を目指す
テレワークの推進 職員の働き方改革の一環としてテレワークができる環境を整える

〇自治体DXに取り組むときの流れは下記のとおり

  • ステップ1:全体方針の決定
  • ステップ2:推進体制の整備
  • ステップ3:DX推進をする人材の確保
  • ステップ4:取り組みの実行

〇自治体DXを進めるときのポイントは下記のとおり

  • 自治体DXを目的にしない
  • 段階的に進める計画を立てる
  • 住民の理解を得る

自治体DXは、自治体の将来を見据えた必要不可欠な取り組みです。まだ自治体DXを開始していない場合は、ぜひ一歩を踏み出してみましょう。

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