サイト内の現在位置

国税関係書類のスキャナ保存で業務改善

Web電子帳票管理システムReportFilingⅡ(レポートファイリング)

取引の相手方から受領する取引書類については、紙書類で受領すれば法人税法等により紙書類を保存することが必要です。
この紙書類をデータ化し情報共有やデータ管理を行うことで内部統制の強化や業務の大幅な改善が期待できます。

国税関係書類をスキャナー保存するイメージ写真

電子化対象とする書類

取引の相手方から受領する紙書類は、取引書類として法人税法や消費税法により保存が必要な国税関係書類となります。これらの紙書類をデータ化しスキャナ保存するためには、電子帳簿保存法(※)の要件に従って事前に税務署に承認申請書を提出し承認を受ける必要があります。申請対象となる書類は、法人税法等で保存が義務付けられる取引書類となります。データ保存やデータ管理が必要な書類の種類を検討し申請対象書類を選定します。

  • 電子帳簿保存法とは帳簿書類等の保存に関する税法の特例法です。

スキャナ保存の法的要件

①システム等の機能要件
入力機器やスキャナ保存システムは一定の要件があります(図1参照)。システムの法的要件が満たされているかはユーザーが確認することが必要ですが、令和元年度の改正において、JIIMA(※)の電帳法スキャナ保存ソフト認証の認定を受けているシステムを利用してスキャナ保存の申請をする場合には、申請書の作成が簡素化されることとなりました。

②入力体制の要件
領収書や請求書等のスキャナ保存に当たっては、適正事務処理要件という三つの内部統制要件を満たした入力体制を構築する必要があります。一つ目は紙書類を電子化する際の入力体制の要件で、原則として原本の確認は書類の受領者以外が行う体制です。二つ目は書類のデータを定期検査する体制です。サンプリング検査で全社を検査する体制を検討します。三つ目は改善体制です。定期検査により不備が発覚した場合の改善の体制を検討します。

これらの体制を社内で検討し入力手順や検査手続き等を行うための社内ルールを作成します。

  • JIIMAとは公益社団法人日本文書情報マネジメント協会

図1

要件 書類
重要な書類 一般書類(※1)
入力機器要件 一定水準以上の解像度(200dpi以上)による読取り(規則3⑤ニイ)
カラー画像による読取り(赤緑青それぞれ256階調(1677万色)以上)
(規則3⑤ニイ)
※2
解像度及び階調情報の保存(規則3⑤ニハ)
大きさ情報の保存(規則3⑤ニハ)
システムの機能要件 タイムスタンプの付与(規則3⑤ニロ)
バージョン管理(規則2⑤ニニ)
①訂正・削除の事実 ②内容の確認
入力者情報の確認(規則3⑤三)
書類と関連する帳簿との相互関連性の保持(規則3⑤五)
検索機能の確保(規則3⑤七・同3①五)
①日付及び金額の範囲指定 ②その他2以上の項目の条件設定
入力体制要件 入力期間の制限(規則3⑤イロ)
書類の受領後、①概ね7営業日以内 ②60日と概ね7営業日以内
適正事務処理要件(規則3⑤四)
①相互けん制体制 ②定期検査体制 ③改善体制
  • ※1
    一般書類とは、見積書・納品書控・受領書・定型様式の契約申込書など重要な書類以外の書類をいいます。
  • ※2
    一般書類の場合、グレースケールでも可

スキャナ保存の導入メリット

スキャナ保存を導入するメリットは、電子化する書類の種類により違いますが、大きく分けて二つのメリットが考えられます。まず一つ目は、書類の保存に係るコスト削減や情報漏えい等の防止のメリットです。電子化により原本を廃棄することができるスキャナ保存では、紙書類の運搬費や倉庫費用等に係る費用の削減や確実なデータ管理による情報漏えい防止が期待できます。二つ目は、高度なデータ分析等による内部統制が強化されるメリットです。

書類のスキャナ保存により業務プロセスの電子化が図られる場合、審査や承認事務の処理補助や進捗管理等による的確な業務管理が可能になり、また業務処理をデータ分析できることにより軽微な処理誤りや不正等を防止できることにより内部統制の強化が期待できます。また、保存データを社内で共有することにより入力等の業務効率化も可能となります。

経費精算や支払承認といった業務に関しては領収書や請求書を取り扱うため、現金流出といったリスクが生じることや税務調査に係る対応が必要なことからこれまでも慎重な会計処理が必要でしたが、こうした業務を電子化により透明化、確実化することで企業のガバナンスが高まります。さらに税務リスクの少ない企業体質となることで税務に関するコーポレートガバナンスの高評価を受けることになります。

導入の成功ポイント

スキャナ保存の検討に当たっては、保存する書類のデータを事後にどのように活用するかにより導入するシステム等を選定することが必要です。システム等は法令要件を満たしていないと税務当局の承認申請書の審査の段階で却下等されることになります。また、適正に入力する社内の体制を十分に検討し、入力に係る業務フローや社内規程等を整備することが必要です。

平成27年度の電子帳簿保存法のスキャナ保存関係法令の改正後、スキャナ保存の承認を受けている件数は大幅に増加しています。国税庁の発表では昨年6月末には申請件数は2000件を超え、本年の政令改正や運用の緩和でさらに制度が利用しやすくなり、今後も倍増していくことが予想されます。幣事務所においても、電帳法の申請に係るコンサル件数は増加しています。申請対象書類で多いのはやはり請求書や領収書のスキャナ保存となっており、企業の働き方改革や生産性の向上に寄与しているものと思われます。

消費税インボイス制度への対応

2023年10月から導入予定である消費税インボイス制度では、適格請求書等の保存や確認作業が必要となり、課税仕入れを行うための要件がより厳格となります。正しく消費税処理を行うため、請求書や領収書の処理に関しこれらの事務の省力化と適切な会計処理を電子化で対応する検討も必要となりましょう。

(2019/8公開)

執筆者プロフィール

袖山 喜久造氏
1964年生まれ1986年国税専門官として東京国税局に採用
国税庁調査課、国税局調査部などにおいて大規模法人の法人税等調査の運営や調査に従事2012年東京国税局退職 同年税理士登録・SKJ総合税理士事務所所長2019年SKJコンサルティング合同会社設立 電子化を専門としたコンサルティングを行う。東京税理士会所属税理士(登録番号122308)

公益社団法人日本文書情報マネジメント協会法務委員会アドバイザー
トラストサービス推進フォーラム(TSF)特別会員
一般社団法人ファルクラム租税法研究会研究員

袖山 喜久造氏写真

電子帳簿保存法の最新改正要件と
社内で対応を進める「3つのステップ」!

電子帳簿保存法の対応をスムーズに進めるには、担当者自身が最新の改正要件と対応時の注意点を理解し、同時に現場からの質問に対して答えられるようにしておくことが大切です。
また、電子帳簿保存法に対応した帳票管理ツールを検討することもおすすめです。

詳しくはこちら

電子帳簿保存法への対応リンクバナー

お問い合わせ・ダウンロード・無料利用体験