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令和3年度電子帳簿保存法の改正について【第一回】
Web電子帳票管理システムReportFiling(レポートファイリング)令和3年度の税制改正により電子帳簿保存法が抜本的に改正されました。
コロナ禍におけるテレワーク対応や、2023年10月から始まる消費税インボイス制度への対応など、電子化による対応が喫緊の課題とされています。
令和3年度の税制改正により電子帳簿保存法が抜本的に改正されました。我が国では官民を含めたスピード感を持った電子化政策が進められており、特にコロナ禍におけるテレワーク対応や、2023年10月から始まる消費税インボイス制度への対応など、電子化による対応が喫緊の課題とされています。
1.電子化に当たって今後留意すべき事項
令和3年度の電子帳簿保存法改正では、帳簿書類のデータによる保存に当たっての承認制度廃止や帳簿書類をデータで保存する場合の法的要件が大幅に規制緩和されました。
規制緩和が行われる一方で、帳簿書類等の電子化においては、電子帳簿保存法の法令要件に従ったデータの保存が求められます。また、電子取引データは書面に出力して保存することができなくなりますからデータによる保存方法の検討が必要です。
帳簿書類の電子化や電子取引のデータ保存に当たっては、電子帳簿保存法の保存要件等を機能実装したソフトウエア等を利用しなければなりません。
2.電子帳簿保存法の改正の概要
(1)帳簿書類の電子化の承認手続きが廃止
これまで税法で書面での保存義務が規定される帳簿書類をデータで保存するためには、事前に所轄税務署へ承認申請書を提出し承認を受けなければデータ保存することができませんでしたが、この承認制度が廃止されました。承認制度の廃止後は、帳簿書類の電子化では電子帳簿保存法で規定される一定の要件を満たす必要があります。
承認制度が廃止される適用時期は、国税関係帳簿については、令和4年1月1日以降開始する事業年度分から、国税関係書類については、令和4年1月1日以降保存を開始する国税関係書類からとなります。
(2)国税関係帳簿書類のデータによる保存等の要件を緩和
帳簿データを保存する場合、電子帳簿保存法施行規則で定められる国税関係帳簿の一定の要件を満たせば、書面に出力して保存することなくデータで保存することが可能となります。この一定の要件とは、①一般電子帳簿、②優良電子帳簿に分類されます。
書類データの対象は、決算関係書類、自社が取引先に発行した書類控えなどが該当しますが、これらのデータ保存の要件となる検索機能については、検索項目をダウンロードすることで要件を満たすこととされました。
改正後の法令は令和4年1月1日以降に開始する事業年度に係る帳簿データ、同日以降に保存される書類データから適用されます。
①一般電子帳簿
改正後の電子帳簿保存法(以下、「新電子帳簿保存法」)で規定される「関係書類の備付け」、「見読可能性の確保」、「帳簿のデータのダウンロード機能」の要件を満たす場合に適用を受けることができます。
②優良電子帳簿
新電子帳簿保存法で規定される「訂正又は削除の履歴が残るシステムの利用」、「システム間の相互関連性の確保」、「関係書類の備付け」、「見読可能性の確保」、「帳簿データのダウンロード機能」のすべての要件に従って作成及び保存されること、あらかじめ優良電子帳簿の使用の旨を納税地の所轄税務署長に届け出することが要件となります。
優良電子帳簿の適用が認められた帳簿の記載項目が、税務調査において否認された場合の申告漏れに課される過少申告加算税の額は通常賦課される10%の額から5%を控除した金額となります。
(3)国税関係書類のスキャナ保存の要件を緩和
国税関係書類のスキャナ保存の要件はこれまでも数度にわたり規制緩和されてきましたが、今年度の改正では更なる要件緩和が実施されました。改正後の法令は令和4年1月1日以降のスキャナ保存から適用されます。
①タイムスタンプ付与要件の緩和
入力期限内に入力されていることが確認できるなど一定の要件を満たすシステムに保存する場合のタイムスタンプが不要とされます。
②入力期限を統一(重要な書類の場合)
請求書や領収書など重要な書類の入力期限については、約2カ月以内(業務サイクル後速やかに)に入力することが入力期限となり、経費精算の領収書などのスキャナ保存で概ね3営業日以内に入力期限の要件、自署は廃止されます。
なお、業務サイクル後速やかに入力できる要件として、書類のスキャナ保存に係る手順等を定めた社内規程の備付けと運用が必要となります。
③適正事務処理要件を廃止
適正事務処理要件が廃止され、入力時の相互けん制や定期検査の体制は法的要件ではなくなります。これにより一人でデータ化し原本廃棄することも可能になりますが、適正な入力や保存を行うための事務処理手順等の社内規程の整備は必要となります。
④検索方法の条件緩和
検索項目は「取引年月日」、「取引金額」、「取引先名称」の最低3項目を条件設定項目となります。また、日付や金額の範囲指定や複合条件設定ができない場合には、検索項目をダウンロードすることにより代替できます。
取引書類のスキャナ保存要件(令和4年1月1日~)
スキャナ保存の要件 | 重要書類 | 一般書類 | 要件詳細 | 法令等 |
入力期限 | ◯ | △ | 次のいずれかの方法により、入力を行う
|
規2⑥一 |
入力装置等 | ◯ | △ | 解像度(200dpi以上)によるスキャニング スマホ等の場合訳387万画素以上で撮影 カラー画像(赤緑青それぞれ256階調以上)
|
規2⑤⑥ 二イ(1)(2) |
タイムスタンプ付与 | △ | △ | タイムスタンプの付与(日本データ通信協会が認定する事業者の発行するタイムスタンプに限る)
|
規2⑥二ロ |
タイムスタンプの 機能要件 |
△ | △ | 保存期間を通じて改ざんされていないことを検証できること 課税期間中のタイムスタンプを一括して検証できること |
規2⑥二ロ |
入力時情報の確認 | ◯ | ◯ | 解像度及び階調情報の確認 書類の大きさ情報の確認
|
規2⑥二ハ |
訂正削除履歴の保存 | ◯ | ◯ | スキャナ保存されたデータの訂正又は削除データの履歴が保存され確認することができること | 規2⑥二ニ |
入力者等情報の確認 | ◯ | ◯ | 入力者又はその者を直接監督する者の情報の確認 | 規2⑥三 |
相互関連性の確保 | ◯ | ◯ | スキャナ保存された書類データと関連する帳簿との相互にその関連性が確認できること | 規2⑥四 |
見読可能性の確保 | ◯ | ◯ | 14インチ以上のディスプレイを備えた出力装置、カラープリンタ(一般書類は白黒で可)を備え付け以下の状態で速やかに出力できること。
|
規2⑥五 |
関係書類等の備付け | ◯ | ◯ | 以下の書類をスキャナ保存データと合わせて備付けすること 【自社開発システムの場合】
|
規2②一 規2⑥七 |
検索機能の確保 | ◯ | ◯ |
|
規2⑥、六 |
(4)電子取引に係るデータの保存義務規定について
これまで、電子取引データは、書面に出力し保存することも認めてきましたが、これが廃止されます。データの保存ができないことにやむを得ない事情がある場合を除き、すべての電子取引データの保存を、新電子帳簿保存法の要件に従って保存することが必要となります。改正法令は、令和4年1月1日以降の電子取引データから適用されます。
新電子帳簿保存法 電子取引データの保存要件
保存等の要件 | 要件詳細 | 法令等 |
保存場所 | 納税地(取引書類にあっては取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずる者の所在地) | 法規59① 法規59② |
保存期間 | 起算日(※)から7年間
| |
データへの措置 | 次の(1)~(4)のいずれかの措置を行うこと
|
規4① 1~4 |
見読可能性の確保 | 14インチ以上のディスプレイを備えた出力装置、カラープリンタを備え付け以下の状態で速やかに出力できること。
|
規2②二 規4① |
検索機能の確保 |
|
規2⑥六 規4① |
関係書類等の備え付け | システムの概要を記載した書類の備付け システム及び出力機器の操作説明書を備付け |
規2②一イ 規4① 規2⑥七 |
宥恕規定 | 電子取引データが、災害その他やむを得ない事情により、財務省令で定めるところに従って当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存をすることができなかったことを証明したときは、第一項の規定にかかわらず、当該電磁的記録の保存をすることができる。 | 規4③ |
(5)不正があった場合の罰則の新設
取引書類のスキャナ保存データ及び電子取引のデータを改ざん等により不正処理が行われ、税務調査により仮装隠蔽行為が認定された場合には、その改ざん等に係る事実により生じた申告漏れに係る重加算税の額については、通常課される重加算税の額は10%加算した額となります。重加算税の加重賦課の規定の適用は、令和4年1月1日以降に到来する申告期限に係る事業年度から適用されます。
(6)終わりに
今年度は電子帳簿保存法の改正により承認制度が廃止され、様々な法令要件が緩和されたために電子化の検討においては導入しやすい環境が整ったと思います。一方で国税当局の法令の執行は厳格となり、法令要件に従ったデータ保存や不正が起こらない社内体制整備が必要となります。
電子帳簿保存法の対応には、まずは法令要件に従った機能が実装されているシステムの導入は必須となります。電子化する会社の規模や書類の種類、業務に応じた最適なシステムを導入することが電子化実現の早道となります。
(2021/6公開)
執筆者プロフィール
袖山 喜久造氏
1964年生まれ1986年国税専門官として東京国税局に採用
国税庁調査課、国税局調査部などにおいて大規模法人の法人税等調査の運営や調査に従事2012年東京国税局退職 同年税理士登録・SKJ総合税理士事務所所長2019年SKJコンサルティング合同会社設立 電子化を専門としたコンサルティングを行う。東京税理士会所属税理士(登録番号122308)
公益社団法人日本文書情報マネジメント協会法務委員会アドバイザー
トラストサービス推進フォーラム(TSF)特別会員
一般社団法人ファルクラム租税法研究会研究員
電子帳簿保存法の最新改正要件と
社内で対応を進める「3つのステップ」!
電子帳簿保存法の対応をスムーズに進めるには、担当者自身が最新の改正要件と対応時の注意点を理解し、同時に現場からの質問に対して答えられるようにしておくことが大切です。
また、電子帳簿保存法に対応した帳票管理ツールを検討することもおすすめです。