去る2018年1月17日(水)~19日(金)の3日間、ICTによる自動運転や車両の情報管理、運行管理などに必要な次世代のコネクティッド・カー技術やソリューションを一堂に集めた、第6回「コネクティッド・カーEXPO」が東京ビッグサイトで開催されました。
NECソリューションイノベータは、より快適で安全安心な自動運転を実現する、先進の⾞載ソフトウェア技術を出展しました。
安全運転をめざす14年に及ぶ多彩な車載技術への取り組み
NECソリューションイノベータは2004年より、さまざまな車載技術の研究開発をスタートしています。スムーズな自動運転を実現するソフトウェア開発をはじめ、快適な走行を可能にする車体制御、膨大な走行情報の収集・分析、車載情報のセキュリティなど、次世代の自動車に求められる多種多様な安全技術を、豊富な開発実績やノウハウをもとに追求してきました。
NECソリューションイノベータの車載画像認識対応実績技術
センサ関連
- 2次元、3次元
- 波長(可視光、近赤外線、遠赤外線)
- 工学系(画角、歪係数、アイリス、露出)
実装技術
- センサ制御
- マイコン実装(アクセラレータ特性)
- マルチコア対応
- 開発プロセス
- データ収集・整理
アルゴリズム関連
機械学習
- 特徴抽出
- クラスタリング
- ブースティング
- 統計的機械学習
- Deep Learning
画像処理関連
- 色空間変換
- モルフォロジー
- 画像空間変換
- ヒストグラム
- 画像分割
コンピュータビジョン関連
- カメラキャリブレーション
- オプティカルフロー
- トラッキング
- ステレオ視
- 3次元形状復元
今回は、アルゴリズムや機械学習プロセスを凝縮し、車載へのマイコン実装を容易にしたソフトウェアを展示。車両の周辺情報を的確に認識する「車載マルチカメラ画像認識ソフトウェア」と、シンプルで直感操作が可能な「フィンガージェスチャー」をご紹介しました。
周辺の歩行者や車両、白線、標識などを的確に自動認識し、サラウンドビューや電子ミラーに組み込んで安全安心なドライブを支援
日本では、高齢化による乗用車事故が急増し、商用車や建設重機・フォークリフトなど特殊車両の分野では、人手不足から熟練ドライバーが減って危険性が高まりつつあります。車載マルチカメラ画像認識ソフトウェアは、そのようなシーンで安全安心な運転ができるよう、ドライビングをサポートするソフトウェア技術です。
展示では、安全運転をきめ細かく的確に支援する本ソフトウェアのデモを中心に、次世代技術である3D LiDARやDeep Learningの車載への取り組みをご紹介しました。特にサラウンドビューを実現する画像認識ソフトウェアを、小さなマイクロプロセッサに搭載する技術へ注目が集まりました。
認識機能付きサラウンドビューの例
移動体認識の例
歩行者検知の例
駐車枠(白線)検知の例
本ソフトウェアは、移動体認識や白線認識、歩行者認識といった機能から、電子ミラー、車線逸脱警告、自動搬送システムなどへ幅広く応用できます。画像認識はアルゴリズムが重要ですが、サイズを可能な限り小さくしマイコンへ実装した、NECソリューションイノベータならではの特化技術です。
- FPGA+ARM SoCにより、カメラ台数や搭載ソフトウェアなどの要求へ柔軟に対応。
- 高負荷な画像認識処理をFPGAに実装することで、高速な処理が可能。
- 画像入出力などを共通化するアーキテクチャにより、他マイクロプロセッサへの迅速な搭載が可能。
- 次世代技術として、センサフュージョンや組込型Deep Learningを開発中。
ソフトウェア構成図
市場では、すでに一般の乗用車への導入が始まっていますが、最近では重機などの特殊車両のニーズが増えています。また展示会では、鉄道会社様から運行時の障害物を検知したいという相談も寄せられました。
多種多様な車両や部品へ本ソフトウェアを搭載するには、お客様のニーズやシステムの動作環境を十分に把握した上で、どのように最適化するかが重要なテーマです。NECソリューションイノベータでは、さまざまな課題を解決する技術やノウハウを、数多くの導入実績とともに豊富に備えています。
「私たちが作るのはソフトウェアですが、半導体メーカー様やカメラメーカー様、3D LiDARなどを開発しているセンサメーカー様などと一緒に、お客様へご提案できる共創のパートナーシップが築ければと考えています」と、展示スタッフは話しました。
カーナビやインパネ、AV機器など既存の製品に組み込み、運転中に気をとられず指先モーションだけで簡単かつ安全な操作を実現
自動運転レベル1・2を搭載した自動車の普及が進む現在、ドライバーと車の間で円滑なコミュニケーションが行なえるHMI※の開発が大きな課題となっています。自動運転は人と車のコミュニケーションを密にして、より安全安心な操作を実現するのが必須なテーマです。
展示では、指先のジェスチャーだけで指示出しができ、的確な安全運転を支援する革新的なUI「フィンガージェスチャー」をご紹介しました。
- ※HMI:ヒューマンマシンインタフェース(Human Machine Interface)の略
自動運転(レベル1~4)は、運転の責任が人から車へと徐々に移り、運転状況をドライバーがスムーズに把握する必要が生じます。また、車側では自動から手動へ運転が切替わる際、人が適切に運転できるかを判断する必要があります。そこにギャップがあれば、小さなインシデントが事故につながりかねません。
フィンガージェスチャーは、5年前から開発を進め車載技術も完成の域に達しており、国内外の自動車メーカー様やサプライヤー様からも、大きな注目を集める新しいユーザーインターフェイス(UI)です。
特長や機能は、以下の通りです。
- 車載のECUでも高精度に認識できる、アルゴリズム搭載のエンジン開発に成功。
- ドライブ中に前を向いたまま、非接触の小さなジェスチャーだけで車への指示が可能。
- ミリ単位の認識精度を実現し、確実な操作を実現。
- 自動車メーカー様との実証実験を通じて、実際の豊富なノウハウを蓄積。
本UIは、車の運転に直接関わる操作だけでなく、カーナビやエアコン、AV機器など幅広いHMIに最適化できます。以下のジェスチャーは、ほんの一例です。
開始ジェスチャー
終了ジェスチャー
フリック・ジェスチャー
サークル・ジェスチャー
スイング・ジェスチャー
本UIの開発では、ソフトウェアの処理をできるだけ減らしてコンパクト化するのが最大のポイントでした。機械学習の負荷を低減しデータベースの小型化を実現しつつ高い認識精度を確保できるところに、NEC独自の技術が活かされています。
「私たちはUIの基礎技術を開発していますので、製品化はお客様との協力が不可欠です。国内外のセンサメーカー様や自動車メーカー様とともに開発していくという、共創体制で進めさせていただければと思います」と、展示スタッフは締めくくりました。
ご紹介した展示内容は、車載技術のほんの一部にすぎません。
NECは、持てる技術やノウハウ、ソリューションなどアセットを結集し、より明るい社会や豊かな未来を築くために、今後とも自動車分野をはじめ社会へ広く貢献してまいります。