2021年4月から新たな収益認識基準が適用されるわね
言っておくけど大企業は強制適用よ!
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会計コラム・第5回
IFRSの収益認識に関する会計基準とは?収益確認基準が経理業務に与える影響
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うわ!また強制適用ですか!?
でも収益認識基準が変わることで、僕達の仕事に何か影響するんですか? -
もし適用となれば、会計処理を変更しなくてはいけないケースがいくつも出てくるわ
私達にも関係大ありなのよ! -
ええ!油断していました
例えばどんなことをしなくてはいけないんですか? -
製品を販売した場合、収益計上するタイミングが変わるのよ
そのため計上時期の変更が求められるわ -
それは僕もちゃんと知っておかないとマズいですね…
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そうよ、でも大丈夫!
このコラムを読めば、収益認識の新しい基準からその対応策までしっかりと理解できるわ!
すぐに役立つ!人事総務・経理コラム スーパー総務、岡本リカの人事・会計講座 会計コラム・第5回IFRSの収益認識に関する会計基準とは?収益確認基準が経理業務に与える影響
2021年4月から大企業において強制適用される、新たな収益認識基準。自社が強制適用されるわけではない場合でも、今後のグローバル化を見据えて導入を検討しておきたいところです。収益認識に関する会計基準はIFRSと日本で何が変わってくるのでしょうか。導入に当たり経理業務が混乱するのを避けるためにも、実務にどう影響し、どのように対応すべきか紹介します。
収益認識基準の原則!大企業の場合はどうなる?
収益認識基準とは、財務諸表作成における「売上計上(収益認識)に関する基準」です。会社が商品やサービスを販売した場合に売上をいつ、いくらで記帳していくのかを規定した会計上のルールと言えます。日本ではこれまで企業会計原則の損益計算書原則により『売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る』とされており、包括的に定めた会計基準がありませんでした。
そのため、会社ごとに売上計上の時期が異なることがあり、計上の基準が異なる2つの会社の財務諸表を比較しても厳密には正しく比較できないという問題がありました。一方国際的には、国際会計基準審議会(IASB)が米国財務会計基準審議会(FASB)とともに収益認識基準を開発し、これをもとに2014年5月「顧客との契約から生じる収益(IFRS 第 15 号)」を公表しました。
国際的な流れを受け、日本でも2015年3月から新ルールの整備が始まりました。そして2018年3月30日、公益財団法人財務会計機構の企業会計基準委員会により、「収益認識に関する会計基準(以下、収益認識基準)」が公開されました。国際的な企業比較ができるよう、基本的にIFRSの基準に沿ったものになっています。
日本の収益認識基準は2018年4月1日以後からすでに導入されていましたが、2021年4月以後に開始される事業年度からは大企業等では強制適用となります。強制適用でない会社については導入の可否は任意ですが、従前の会計ルールと新たな収益認識基準が異なる場合は会計処理や業務フローも変わってくるでしょう。そのため影響はしっかり把握しておきたいところです。以下、新たな収益認識基準について述べていきます。
IFRSをもとにした新たな「収益認識基準」 売上を計上するタイミングの違い
売上を計上する時期について、それまで日本で使用されていた基準と、IFRSの収益認識基準を踏襲した新たな基準ではどのような違いがあるのか紹介します。
日本における「売上」のタイミングは複数あった
既述のとおり、日本にはこれまで厳格な収益認識基準はなく、次のような考え方が採用されていました。
- 発生主義 金銭のやりとりの有無に関係なく取引が発生した時点で売上を計上する考え方
- 実現主義 実際に代金や等価物によって収益を得、実現した時点で売上を計上する考え方
国際財務報告基準(IFRS)における売上計上の時期は
IFRSの収益認識基準は売上計上のタイミングが明確です。それをもとにした企業会計基準委員会の「収益認識に関する会計基準」でも、計上時期が明らかに定められました。規定では『本会計基準の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識することである。(※)』としています。
これは、履行義務が充足された時点で収益を認識するとの意味です。契約による履行義務に着目し、「履行義務」という負債(義務)が解消するタイミングで収益を認識します。つまり「履行義務」がどのようなもので、それがいつ充足されるのか、によって計上時点が決定されることになります。
新たな「収益認識に関する会計基準」における基本原則
IFRSをもとにした新たな基準においては、次の5つのステップによって収益を認識します。
ステップ1:契約の識別
契約の「権利と義務」を取り決め、内容を確認します。これは、商品やサービス内容、金額等の取り決めを確認することです。なかには、ひとつの取引の中にいくつかの契約内容を含むことがありますが、それぞれの契約同士の関係が密接な場合はひとつの契約と見なすこともあります。これを「契約の結合」といいます。
ステップ2:履行義務の識別
ステップ1で識別した「商品やサービスをどのように顧客に移転するのか」、言い換えれば「履行すべき義務」を識別します。この履行義務が、収益認識基準を適用する際に会計処理の単位となるものです。履行義務は契約の形態によって単一とは限りません。例えば、家電量販店の販売しているPCに「3年間の保証」が付帯されている場合は履行義務が「PC本体の売却」と「保証サービス」の2つになります。
ステップ3:取引価格の算定
取引価格とは、その契約によって得られる対価の額です。前ステップにおける例で言えば、PC本体の「販売額」と3年間の「保証」を合わせた金額になります。ただし、値引き、リベート、返金、インセンティブなど価格が変動する要素があれば考慮します。そのため、契約書の「金額」と算定された「金額」が異なる場合があります。
ステップ4:履行義務への取引価格の配分
ステップ2で履行義務が複数あると識別された場合は、「算定された取引価格」を履行義務ごとに分配します。PCの例で言えば、PC本体の価格と保証サービスの価格を配分します。
ステップ5:履行義務の充足による収益の認識
履行義務の充足によって収益を認識します。いくつかの履行義務が認識される場合は、履行義務ごとに収益を認識しますが、それぞれの履行義務が、「一定の期間にわたり充足されるものか」「一時点で充足されるものか」を判定しなければなりません。先のPCの例ですと、下記のようになります。
- PC本体 一時点で充足されるので、商品を販売した時点で収益を認識
- 保証 一定の期間にわたり充足されるので、価格を保証期間に応じて分割して収益を認識
ルール改訂に注意!新たな収益認識基準への対応策
新たな基準を自社で取り入れる場合は、経理業務に影響が生じます。会計処理を変更しなければならない場面は複数考えられますが、そのうち2つのケースを紹介します。
「出荷基準」を採用していたケース
製品を販売している会社の場合、商品出荷時点を収益の基準としているケースは多いかと思います。しかし、収益認識基準では基本的に「所有権が移転したタイミング」で収益を計上することになるため、計上時期の変更が求められます。
購入者等にポイントを付与しているケース
従来ポイントは、「引当金」として将来の使用に備えてポイント価値を「費用」としていました。しかし、新基準では売上から控除する必要があります。ポイントを売上として計上するのは購入者等が実際にポイントを使った時点となります。
また、事前に処理方針を決定し、契約やサービスごとの「履行義務の識別」「取引価格の算定」「履行義務への取引価格の配分」などの規定を、社内で取り決めておくことも重要です。内部規定について、既存の仕訳システムでどう対応していくかも検討していきます。
仮に現状のシステムでは対応できない場合は、システムの変更も必要になるかもしれません。新規でシステムを導入する場合は、将来のルール改訂にも対応できるような製品を選択しておくといいでしょう。
新たな収益認識基準の内容と影響を正しく知ろう
新たな収益認識基準を適用する場合は、業種や取引形態によって影響を受ける経理業務が複数生じると考えられます。また、会計処理を変更するためには、基礎データを提供する業務システムも変更する必要がある場合も多いです。その場合、単なる会計の処理やフロー変更ではすまされません。自社にかかる影響を総合的に把握していきましょう。
SuperStreamは、日本基準の会計残高とIFRSの会計残高を同時に保持することにより、それぞれの会計基準に準拠した財務諸表の作成が可能です。