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新商品開発AX
・Innovation Story 18
#新商品開発 #コンセプト創出 #生成AI #哲学的対話 #イノベーション
新商品開発AX:「AIの時代に、“考える人”が報われる世界を」── 個人の想いと組織の目的を結び、“質の高いコンセプト”を育てる
#新商品開発 #コンセプト創出 #生成AI #哲学的対話 #イノベーション
AIが「答え」を一瞬で出す時代になりました。分析も、資料づくりも、アイデア出しも、AIが担えます。ならば、人間にしかできないことは何でしょうか。新商品開発の現場でいま問われているのは、アイデアの数ではなく「なぜ、あなたがそれを創りたいのか」という一点です。
本稿では、NECソリューションイノベータ イノベーションラボラトリが開発する「新商品開発AX」(仮称)に光を当てます。あえて一言にするなら、企画者がAIとの対話を通じて自分の想いを掘り下げ、組織の目的とつなげながら、独自性のあるコンセプトへと練り上げていく——そのための“思考のパートナー”です。事業構想を担う新冨啓明と、アーキテクチャ設計・実装を担う加藤一郎の二人に話を伺い、その原点と、技術で解こうとしていることを掘り下げます。

ビジネスラボラトリ第一グループ
新冨 啓明/加藤 一郎

ビジネスラボラトリ第一グループ
新冨 啓明/加藤 一郎
なぜ、いま“考える人”なのか -AI時代に問い直す、人間の価値-
AIの進化は、社会の風景を急速に変えつつあります。2030年までに多くの仕事が自動化されるとも言われ、文部科学省は2022年、高校の探究学習を必修化して「問いを立てて課題を解決する力」の育成に舵を切りました。企業においても、創造性を経営に組み込む企業とそうでない企業とでは、収益成長で67%、純企業価値で74%もの差が生まれるというデータもあります。「答えを出す力」が誰にでも手に入る時代に、競争力は「何を創るか」を考える力へと移りつつあります。
「AIで何でもできてしまう世の中になっていく。シンギュラリティを迎えたら、人間は何をするのか——それはずっと問われ続けていると思うんです」。新冨はそう切り出します。彼がたどり着いたのは、「考える、ということが人間の本質だ」という確信でした。「AIが考えたものよりも、人間が考えたものにこそ価値がある。それがもっと際立ってくるんじゃないか」。
新商品開発の現場に長く携わってきた新冨には、以前から強い実感がありました。良い商品や事業は、洗練されたアイデアだけから生まれるのではありません。企画者自身の価値観や願望——すなわちコンセプトから生まれます。「人間が考えたものそのものがコンセプトだと思っていて、それを尊重してほしいという想いが、僕の中にもあったんです」。その想いは、クリエイターたちへのヒアリングでも裏づけられました。「別にお金を払ってほしいわけでもない。ただ、尊重してほしい、リスペクトしてほしい、パクらないでほしい、と」。考えた人が報われ、コンセプトそのものが価値を持つ。新商品開発AXの源泉には、この切実な声があります。
企画者と意思決定者、二つの壁 -現場に横たわる“つながらなさ”-
新商品開発・新事業開発の現場には、二つの立場それぞれに課題があります。企画者は、「本当は何をやりたいのか」が自分でも明確になっていないことが少なくありません。やりたいことがあっても、それをどう表現し、企画として整理すればよいか分かりません。一方、意思決定者やマネジメントの側も、自分たちの期待や方向性をうまく伝えられていません。結果として、両者の間に認識のズレが生まれ、コミュニケーションが噛み合わなくなります。
新冨が見てきた現場には、こんな光景があります。消費財の開発では、意欲のある若手が毎月いくつものアイデアをひねり出し続けます。しかし評価されるのは“売れたかどうか”だけで、自分の想いを企画に込める余裕もないまま、次のアイデアへと追い立てられていきます。「開発疲れ」とも言えるこの状態は、多くの商品企画・開発の現場が静かに抱える課題です。「やらされて出した企画は、止まるか、作っても売れない。そういうケースを、見聞きしました」と新冨は言います。
新冨はその本質を、「“個人の想い”と“組織の目的”がつながっていないこと」だと表現します。企画者の想いに対し、組織はしばしば「それは売れるのか」「儲かるのか」「面白いのか」と問い返します。「組織が考えていることを、少しでも分かりやすく企画者に伝えてあげる。企画者の想いを、組織が受け取れる形にする。そこを変えたいんです」。
さらに新冨は、AIの普及がこの課題に新たな影を落としていると見ています。アイデアが簡単に生成できる時代になった一方で、「なぜ自分がそれをやるのか」という当事者意識——オーナーシップを持つことが、かえって難しくなっているというのです。


着眼は「コンセプトそのものの価値」 -AmIの発想と、「カミオカンデ」の3か月-
新商品開発AXの構想は、2024年秋ごろに動き出しました。出発点の一つとしてあったのは、当時社内で議論されていた「AmI(Ambient Intelligence)」の考え方です。人が内面に抱く想いを、テクノロジーによって可視化し、具現化する——その発想が原点の一つになりました。
数ある切り口の中で二人が着目したのは、「コンセプト創出」の支援でした。アイデアは、AIが最終的に同じものを出力するかもしれません。それでも、そこに至るまでの経緯やストーリーにこそ人は惹かれます。「コンセプトって、自分の投影物でもある。だからそれ自体を大事にしていくことが、その人にとってとても大切なんです」。
この着眼にたどり着くまでには、3か月におよぶ対話がありました。新冨が描く構想——本人いわく「妄想」——を、加藤が技術へと翻訳します。ですが最初は「けっこう喧嘩していた」と加藤は笑います。「思いはしっかりしているのに、言葉が噛み合わない、イメージが噛み合わない」。互いにコンサルが使うような“きれいな言葉”で語り合ううちは、本質にたどり着けませんでした。転機は、加藤の一言だったといいます。「ぶっちゃけ、何がやりたいの?」。
そこから二人は、あらゆる角度から言葉をぶつけては「合ってる」「違う」を繰り返しました。この営みを、二人は「カミオカンデ」と呼んでいます。由来は、岐阜・神岡にあるニュートリノ検出器「カミオカンデ」。中身が見えないものに言葉をぶつけ、跳ね返ってくる反応から中身を解釈していく——その様子になぞらえた呼び名です。「あれがなかったら、今のものは絶対にできていない」と加藤は言い切ります。
二つのエージェントAIという解 -個人の内省と、組織の理解を両立させる-
新商品開発AXは、二つのエージェントAIを軸に構成されています。一つは、企画者の内面を引き出す「コンセプト創出エージェントAI」です。相手に合わせて問いを重ね、答えを出さずに内面を表に引き出す“哲学的対話”と、勝てるコンセプトへ磨き上げる“新商品・新事業開発のプロの知見”を束ねます。哲学的対話の領域では、これを専門とする東京大学特任研究員の堀越耀介氏の監修のもとで開発を進めています。
もう一つは、組織の考え方・方針・期待を整理し、企画者が理解しやすい形で提示する「統合インサイトエージェントAI」です。ここには、意思決定者の過去の発言や考え方をもとに“組織の意図”を正しく類推する技術(特許出願中)が用いられています。企画者が「組織方針の意図を汲みながらコンセプトを練り上げる」ことと、意思決定者が「細かいレビューなしに、Go/Exitの意思決定に集中できる」ことを、同時に支えることを狙います。
この二つがそろうと、企画者は組織方針の意図を汲みながら自分のコンセプトを練り上げられ、意思決定者は細かなレビューに追われることなく、Go/Exitの判断に集中できます。企画のやり直しや手戻りが減り、新商品・新事業開発全体のスループットが上がります——それが、このサービスがもたらす実利です。
実際の利用では、企画者はAIとの対話を通じて頭の中の想いを言葉にし、コンセプトをフレームワークに沿って整理していきます。組織の方針とのギャップもその場で可視化され、次の練り直しに生かせます。同時に複数のテーマを検討することもできます。
一言で言えない、という核心
利用者にとっての使い道は明快です。ですが二人自身は、いまも「これは何のサービスか」を一言で定義しきれていないといいます。「コミュニケーションのツールかというと、そうでもない。コンセプトを作る支援だと言えば、狭くなる。問いを投げかける仕組みだと言えば、一部しか捉えていない」。企画者と意思決定者を“つなぐ”のか、コンセプトを“練り上げる”のか——その動詞さえ模索の途上にあります。ですが、その定義の難しさこそが本質だと二人は考えています。


あえて“シンプルに”作る -検証で見えた、思考のサポートとオーナーシップ-
現在、新商品開発AXは製造業を中心とした顧客との検証(PSF)を重ねています。その中で、新冨の心に強く響いた言葉がありました。「哲学的な思考や統合インサイトは良いよね、と言ってくれる。でも、“思考をサポートしてくれる感じがなかったら使いません”と言われたんです」。価値を認めてもらえても、それだけでは使われません。AIと対話しながら「自分はちゃんと考えられている」と実感できること——その体験の設計こそが要だと気づきました。
“オーナーシップ”という本質的価値
もう一つの鍵が「オーナーシップ」です。「“企画してこい”と言われて出したものは、止まるか、作っても売れない。自分のものとして考え続けられることが本質的な価値なんです」。最終的に新商品開発AXが提供するのは、企画者がオーナーシップを手放さずにコンセプトを磨き、成功体験を重ねていくための伴走なのかもしれません。
だからこそ、MVP(実用最小限の製品)は意図的に“シンプルに”作りました。「加藤さんが悲しむくらい、余計なものは絶対に作り込まないでくださいと言ったんです」と新冨。UIを凝ると「見た目がいいね」という評価に引っ張られ、本質的な価値が検証できなくなります。「素人でも作れるレベルのMVPをあえて作る」と加藤。お化粧をしてしまうと、ユーザーが本当は何を求めているのかが見えなくなります。あえてシンプルにすることでサービスの機能を正確に検証する——そこに二人の経験知が凝縮されています。
考える人が、報われる世界へ -“夢を叶えるツール”という、その先の景色-
新冨が描く未来はシンプルです。「考えている人が、ちゃんとリスペクトされる。コンセプトが尊重されて、その人たちが活躍する世の中になってほしい」。プロのクリエイターの創作物がリスペクトされるべきなのと同じように、新商品を生み出そうとするごく普通の企画者の“想い”やコンセプトもまた、尊重されるべきだと新冨は考えています。「これに触れた人が、自信を持ってやってみようと思えたらいい」。
加藤は、その先にもう一歩を見ています。「新商品を生み出すだけでなく、“何かをやりたい”と思った人が、自分のやりたいことそのものを発見できるところまで支えられるんじゃないか。夢を叶えるためのツールとして、会社だけでなく人生のサポートにまで広がると面白い」。出発点は、実は「Well-being」というテーマでした。「自分のやりたいことをやれている状態こそが、Well-beingだよね」と新冨。夢の自己実現を支えるツール——その原点に、二人の対話は静かに帰ってきます。
視線はすでに海外にも向いています。国内でも、消費財を手がける大手メーカー各社との対話が始まっています。物量で「当たりそうな」商品を出し続けても、コアとなる思想がなければ市場は奪われていく——大企業が抱えるその課題に、コンセプトの有無こそが差別化になると二人は見ています。本来の野望は「コンセプト自体が価値として認められ、売買・投資される世の中」。まずはその手前を支援するところから、新商品開発AXは静かに走り出しています。

お問い合わせ

本サービスは、商品企画・マーケティング・研究開発・新規事業開発など、日常的にコンセプトを考える部門の皆さまに向けて開発しています。「想いがうまく言葉にならない」「組織の期待と噛み合わない」「企画は通っても売れない」——そんな課題に心当たりのある方は、ぜひ一度ご相談ください。
現在はプロトタイプを開発中です。実際に体験いただき、率直なご意見をお寄せいただける共同検証(PoC)のパートナーを募集しています。デモのご依頼や個別のご相談も歓迎します。
NECソリューションイノベータ イノベーションラボラトリ
メール:メール:ilab-contact@nes.jp.nec.com
担当:新冨 啓明/加藤 一郎
イノベーションラボラトリ 新商品開発AX 事業構想・事業戦略担当
新冨 啓明(しんとみ ひろあき)
心理学(学習心理学)を専攻。入社後、IT技術関連の人材育成、コンサルティング、営業、全社活動の推進、事業企画など社内で多岐にわたる役割を経験し、新規事業開発へ。IP×AI事業の事業構想・事業戦略を担う。

イノベーションラボラトリ 新商品開発AX アーキテクチャ設計・実装担当
加藤 一郎(かとう いちろう)
高等専門学校で情報電子工学を専攻。入社後、機械翻訳やグループウェアなどの製品開発に従事、その後、OSSなどを生かしたSIや電力事業、サーキュラーエコノミー関連事業など新規事業開発を担当。技術を活かしたものづくりを志向し、開発力を強みとする。新商品開発AXのアーキテクチャ設計とサービスマネジメントを担う。




















