サイト内の現在位置
ISO9001が求める文書管理とは?
具体的な要件と実践手順を解説
「ISO9001で求められる文書管理とはどういうもので、どんな意義があるのだろう?」
「認証取得に向けて、具体的にどのように文書管理をするのが良いかイマイチ分からない…」
そのように、ISO9001の認証取得にあたって必要となる文書管理について、適切な状態ややり方が分からずお悩みではありませんか?
ISO9001で適切な文書管理が求められることは分かっていても、「何のために行うのか」という目指すべきゴールが分からないと、必要な対応にもイメージがつきづらいですよね。

結論から言うと、ISO9001で求められる文書管理は、「品質マネジメントシステムの運用を支えるため」に必要なことです。
品質マネジメントシステムとは、製品やサービスの品質を高めるための体制や仕組みのことですから、文書管理を行う先で最終的に実現すべきことは、「製品やサービスの品質向上」と言えます。

実は、ISO9001の文書管理においては、このゴールをきちんと押さえておくことが非常に重要です。
というのも、ISO9001の認証取得を目指しているうちに、文書管理のゴールが「認証を取得すること」にすり替わりやすいからです。
そのように、ISO9001の認証取得をゴールに据えた文書管理は、形だけのものになる可能性が高く、企業にとってプラスにはなりません。
例えば、「審査でチェックされるから」という理由で、慌てて文書に押印したり、評価シートにチェックを記入したりしても、何の意味もないことはお分かりかと思います。
それどころか、審査前に余計な作業が増える分、マイナスな取り組みとなってしまっています。
このように、これから取り組む文書管理が意味のないものとなってしまわないためには、ISO9001が求める文書管理の目指すところや、概要を正しく把握することが大切です。
その一助となるように、この記事では以下の内容をご紹介します。
本記事の主な内容
- ISO9001で求められる文書管理とはどのようなものか
- ISO9001における文書管理の要求事項
- ISO9001に沿って文書管理を行うメリット・デメリット
- ISO9001に準拠した文書管理のための5ステップ
ISO9001で求められる文書管理の概要や、今後何から手をつけていけば良いかが分かる内容となっています。
ぜひ最後まで目を通してみてくださいね。
1. ISO9001で求められる文書管理とは

まずは、ISO9001で求められる文書管理がどのようなものなのか、その概要から押さえていきましょう。
ここでは、そもそもISO9001や文書管理とは何かも含め、基礎的なところを解説します。
1-1. ISO9001とは組織の「品質マネジメントシステム」を評価する国際規格
ISO9001とは、スイスのジュネーブに本部を置く「国際標準化機構(ISO)」が制定した、組織の品質マネジメントシステムを評価する国際的な規格です。
ISOでは、グローバルな取引を安心して行えるように、さまざまな国際規格を制定しています。
組織(企業)は、ISOの制定した規格に準拠することで、製品・サービスや、企業活動について「国際的な基準」を満たしていることを証明でき、国内外の企業とスムーズな取引を行いやすくなるのです。
ISOの制定する規格の中には、製品・サービスそのものではなく、企業の特定の活動を評価するものもあります。
その一つがISO9001であり、この規格では、製品・サービスの品質管理活動(品質マネジメントシステム)において満たすべき基準が定められています。
このようなISO9001は、製品・サービスの品質を向上させていくことを目的とした規格であり、認証を取得することで、「国際的な基準を満たす品質管理活動が行われている」ことを証明できるのです。
POINT:JIS Q 9001の内容はISO9001と同じ
ISO9001の原文は英語、フランス語などで作成されていますが、日本国内でも活用しやすくするために邦訳されており、この邦訳版をJIS Q 9001と呼びます。
内容や様式自体はISO9001と同じですが、JIS Q 9001は、日本国内の規格として発行され用いられています。
1-2. 【前提】そもそも文書管理とは
ISO9001における文書管理がどういうものか理解するにあたり、そもそも文書管理がどのような意義のある活動かイメージできていない方は、再確認しておきましょう。
文書管理とは、「社内文書や顧客情報など、社内の様々な文書の管理活動をすること」です。
ただ書類を保管しておけばいいのではなく、文書の作成から活用・処理・伝達・保管・保存・破棄の流れ(文書のライフサイクル)に沿って適切に管理することをいいます。
例えば、契約書について考えてみましょう。
契約書の適切な処理には、当事者の署名や捺印が必要ですよね。また、顧客情報や契約情報が含まれることから、鍵付きのキャビネットへの保管や、役員しかアクセスできないフォルダへの保管(電子契約書の場合)が望ましいと言えます。
さらに、法令で定められた保管期間が過ぎた後は、シュレッダーや溶解処理などにより情報漏えいの無いように破棄する必要があります。
このように、文書・資料の、ライフサイクルの段階ごとに適切な扱いをすることが、文書管理なのです。
1-3. ISO9001における文書管理の位置付け
このような文書管理を適切に行うことは、ISO9001の要求事項の一つです。

品質マネジメントシステムの規格であるISO9001が、適切な文書管理を求める理由は、以下の文章と画像を見ていただくと理解しやすくなるかと思います。
「文書を用いて、品質マネジメントシステムの運用を支援しましょう!そして、その文書は適切に管理しましょう!」
これが、ISO9001における、文書管理の位置付けです。
つまり、品質のマネジメントのために直接的に文書管理が必要なのではなく、品質をマネジメントするプロセスをうまく回していくために適切な文書管理が求められているからです。
2. ISO9001における文書管理の要求事項

ISO9001には、組織内の品質マネジメントシステムの運用や評価の仕方について、さまざまな要求事項が記載されています。
文書管理の仕方についても要求事項が課されており、主に以下について定められています。
ISO9001における文書管理の要求事項
- 管理の対象となる文書は2種類
- 文書の適切な作成・更新
- 文書の適切な保管・管理
具体的に何が求められているか、それぞれ見てみましょう。
2-1. 管理の対象となる文書は2種類
ISO9001では、品質マネジメントシステムにおいて、管理の対象となる文書を、以下のように定めています。
7.5.1 一般
組織の品質マネジメントシステムは、次の事項を含まなければならない。
- a)この規格が要求する文書化した情報
- b)品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した、文書化した情報
まず一つ目に必要なのが、「この規格が要求する文書化した情報」です。これはつまり、ISO9001の中で作成・保管等が求められている文書や記録のことです。
そしてもう一つが、「品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した、文書化した情報」です。少し長いですが、要は、自社の品質マネジメントシステムの運用に必要だと自社が考える文書や記録のことです。
もっとシンプルに言えば、前者はISO9001が求める文書、後者は自社が必要だと判断した文書です。
それぞれどんな文書が該当するのかも見ていきましょう。
2-1-1. ISO9001が求める文書
ISO9001は全10箇条で構成されており、その中でさまざまな情報の文書化を求めています。
例えば、「4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」においては、組織で品質マネジメントシステムの適用範囲を明確にすると共に、その範囲を文書化し、維持することが求められています。
この他に文書化が求められる情報は、以下のようなものです。
ISO9001で文書化が求められている情報(一例)
- 品質方針(5.2.2)
- 品質目標(6.2)
- 業務に携わる人の力量の証拠(7.2)
- 製品・サービスが、求められる品質や機能性を満たしているかどうかのレビュー結果
(8.2.3(a)) - 製品・サービスのリリースに関する情報(8.6)
- 内部監査の実施の証拠・結果の証拠(9.2.2(f))
など
このような、ISO9001内で要求されている文書については、作成・管理が必要となります。
2-1-2. 自社が必要だと判断した文書
ISO9001の中で要求されている文書の他にも、自社の品質マネジメントシステムに必要だと判断した文書があれば、作成・管理が必要です。
この文書は、あくまで自社で必要性を判断するため、どのような文書が必要かは、扱う製品やサービス、企業規模、業務プロセス等によって異なります。
例を挙げるなら、
- 仕様書
- 指示書
- 各種計画書(生産計画書等)
など、ISO9001の中では求められていないものの、製品・サービスの品質管理上、通常用いる文書が該当します。
2-2. 文書の適切な作成・更新
管理対象となる文書は、適切に作成・更新することが求められています。
7.5.2 作成及び更新
文書化した情報を作成及び更新する際、組織は、次の事項を確実にしなければならない。
- a)適切な識別及び記述(例えば、タイトル、日付、作成者、参照番号)
- b)適切な形式(例えば、言語、ソフトウェアの版、図表)及び媒体(例えば、紙、電子媒体)
- c)適切性及び妥当性に関する、適切なレビュー及び承認(内容の評価、承認)
適切な作成・更新とは、噛み砕いて言えば、以下のようなことです。
ISO9001で求められている文書の適切な作成・更新
【適切に識別できるように作成・更新する】
文書にタイトルを付けたり、作成日・更新日・作成者が分かるように記述しておく。必要なら参照番号を振る。
【適切な形式で作成する】
品質マネジメントシステムを運用するのに適した形式で作成する。例えば、紙かデータかということに加えて、文書において用いる言語や、図表も適切なものを選択する。
【作成・更新した文書の内容を評価・承認する】
作成したり更新した文書は、その内容が適切かどうか評価を行い、適切であるなら承認を経て公開したり配布したりする。
要は、
「活用しやすい内容・媒体で作成し、どのような文書か判別しやすいようにタイトルや作成者等を明らかにし、FIX前にきちんとチェックと承認を実施しましょう。」
といったことが求められています。
2-3. 文書の適切な保管・管理
管理対象となる文書には、適切な保管・管理も求められています。
7.5.3 文書化した情報の管理
7.5.3.1 品質マネジメントシステム及びこの規格で要求されている文書化した情報は、次の事項を確実にするために、管理しなければならない。
- a)文書化した情報が、必要なときに、必要なところで、入手可能かつ利用に適した状態である。
- b)文書化した情報が十分に保護されている(例えば、機密性の喪失、不適切な使用及び完全性の喪失からの保護)。
7.5.3.2 文書化した情報の管理に当たって、組織は、該当する場合には、必ず、次の行動に取り組まなければならない。
- a)配付、アクセス、検索及び利用
- b)読みやすさが保たれることを含む、保管及び保存
- c)変更の管理(例えば、版の管理)
- d)保持及び廃棄
この適切な保管・管理については、「文書に求められる状態」と「管理のために求められる対応」に分けて説明しますね。
2-3-1. 文書に求められる状態
ISO9001の管理対象となる文書には、以下のような状態が求められています。
- 必要な時に、必要なところで入手でき、利活用できる状態
- 漏えいや紛失のリスクから守られた安全な状態
例えば、製品の品質を評価するにあたって、評価項目表や、評価プロセスがスムーズに入手でき、参照・記入を行える必要があります。
また、製品に価値をもたらす技術文書などの機密情報は、強固なセキュリティのもとで保管されることが求められます。
文書は、品質マネジメントシステムの運用を支える役割を持っていますから、上記のようにその役割を果たせる状態で保管・管理されている必要があるのです。
2-3-2. 管理のために求められる対応
上述の、「文書に求められる状態」のために必要となる対応は、以下の通りです。
管理のために求められる対応 | |
---|---|
配付、アクセス、検索及び利用 | 必要に応じた文書の配布、アクセス(閲覧・編集)、検索、利用。 また、そのために
|
読みやすさが保たれることを含む、保管及び保存 | 破損や汚損、紛失などが発生しない状態での保管、保存。 また、そのための保管・保存ルールを定め、徹底する。 |
変更の管理 | 文書を更新・改訂した場合に、変更箇所を明確にしたり、旧版が使われないようにしたりする。 そのために、改訂履歴の記録・版数記載といった対応を実施。 |
保持及び廃棄 | 重要度に応じて自社で定めた保管期間や、法律で定められた保管期間に準じて文書を保持。 保管期間が過ぎたら、あらかじめ定めておいた廃棄方法に則って廃棄する。 |
ISO9001の管理対象となっている文書は、以上のような対応によって管理していく必要があるのです。
POINT:法定保存文書の保管期間は法律によって定められている
「法定保存文書」に該当する文書は、保管期間が法律によって定められているので、定められた期間は必ず文書を保持するようにしてください。
法定保存文書とは、例えば以下のようなものです。
- 製品の製造・加工・輸入・販売についての記録(10年)
- 監査役会・監査等委員会の議事録(10年)
- 取引に関する帳簿(7年)
- 従業員の身元保証書・誓約書(5年)
- 監査報告・会計監査報告に関する書類(5年)
3. ISO9001に沿って文書管理を行うメリット3つ

ここまで、ISO9001で求められている文書管理がどのようなものか説明しました。
管理対象となる文書は少なくなく、求められる対応も細かいので、この時点でもう負担に感じられているかもしれませんね。
しかし、ISO9001に沿って文書管理を行うことには、苦労した甲斐があると思えるだけのメリットもあるのです。
ISO9001に沿って文書管理を行うメリット
- 信頼を得られる
- 業務効率が向上する
- 強固な情報セキュリティが実現する
一つずつ詳しく見ていきましょう。
3-1. 信頼を得られる
1つ目のメリットは、信頼を得られることです。
ISO9001の要求事項に従って文書管理を実施し、結果的に認証取得が叶えば、当然その事実を公表することができます。
そうすると、ISO9001が品質マネジメントシステムの規格であることを知っている企業や顧客からは、「品質向上や品質管理にしっかり取り組んでいる企業なのだ」という信頼が得られます。
また、ISO9001の認証は、情報(文書)を安全に管理していることの裏付けにもなりますから、セキュリティを重視する企業からも信頼を得られ、契約や取引にプラスに働くはずです。
このように、ISOに沿った文書管理を行い、認証を取得できれば、あなたの会社に対する信頼性は格段に向上するのです。
3-2. 業務効率が向上する
2つ目のメリットは、業務効率が向上することです。
ISO9001に準拠する形で文書管理を実施すれば、業務で必要な文書が検索・利活用しやすくなります。
ISO9001の要求事項に対応するためには、業務に必要な情報を文書化し、検索・利活用しやすい状態で管理することになるからです。
これにより、文書を用いる業務(特に品質管理に関わる業務)が効率良く行えるようになるのです。
また、各従業員が持つ業務上の知識やノウハウなどを、マニュアルなどの文書に落とし込んだ上で管理すれば、文書を活用して社内教育をスムーズに進められるはずです。
業務の属人化解消にもつながり、従業員のムダのない稼働も期待できます。
要求事項に沿って文書を保管・管理することで、このような業務効率の向上が見込まれるのです。
3-3. 強固な情報セキュリティが実現する
3つ目のメリットは、強固な情報セキュリティが実現することです。
ISO9001では、「漏えいや紛失のリスクから守られた安全な状態」を確実にする文書管理が求められています。
これに準拠するには、以下のようなセキュリティリスクから文書(情報)を保護しなければなりません。
回避が求められるセキュリティリスク
- 不正アクセス
- 不正持ち出し
- 改ざん
- 盗聴
- 紛失
結果として、こうしたリスクをできる限り低減できる形で文書を管理するようになり、強固な情報セキュリティが実現するのです。
4. ISO9001に沿って文書管理を行うデメリット2つ

ご紹介したように、ISO9001に沿って文書管理を行うことには、企業にとって大きなメリットがあります。
その一方で以下のようなデメリットも存在します。
ISO9001に沿って文書管理を行うデメリット
- 継続的に費用が必要になる
- 一時的に業務負担が増える
それぞれ詳しく説明しますね。
4-1. 継続的に費用が必要になる
1つ目のデメリットは、継続的に費用が必要になることです。
ご紹介したように、ISO9001が求める文書管理において、管理対象となる文書は決して少なくありません。
ISO9001に準拠するためには、その全てを、
- 必要な時に、必要なところで入手でき、利活用できる状態
- 漏えいや紛失のリスクから守られた安全な状態
で管理し、そのための細々とした対応を実施しなければなりません。
これを人力だけで行うのは現実的ではなく、文書管理システムやオンラインストレージなどのツールを活用して効率的に実施していく必要があります。
このツールの導入・運用に、継続的にコストがかかるのです。
また、文書管理自体にかかる費用ではありませんが、ISO9001の認証を取得するための審査や、その後の維持審査(年1〜2回)、更新審査(3年に1回)にもコストが発生します。
このようにコンスタントに費用が必要となることは、デメリットとして留意しておく必要があります。
4-2. 一時的に業務負担が増える
2つ目のデメリットは、一時的に業務負担が増えることです。
ISO9001に沿った文書管理をするためには、ISO9001の内容(要求事項)を全て確認した上で、必要となる体制やルールを構築しなければなりません。
具体的には、以下のような対応を行うことになります。
ISO9001に沿った文書管理に取り組むにあたり必要な対応
- ISO9001の要求事項確認・把握
- 管理対象となる文書の明確化
- 新たに必要となる文書の作成
- 利活用しやすく、リスクに守られた状態を実現するための体制整備(ツール導入など)
- 文書の作成・更新・保管ルール制定・周知
普段の業務に加えて、こうした対応が必要となるため、文書管理に取り組み始めた直後は一時的に従業員の業務負担が大きくなってしまいます。
5. ISO9001における文書管理の先に見据えるのは製品・サービスの品質向上

ここまでで、ISO9001が求める文書管理とはどのようなものなのか、把握していただけたのではないでしょうか。
概要が理解できればあとは実践あるのみですが、その前に前提として、「ISO9001における文書管理には、製品・サービスの品質向上を見据えて取り組む」ということを再確認しておきましょう。
ISO9001の認証取得を目指す中で文書管理に取り組む場合、目的が「認証取得」になりがちですが、それは避けるべき事態です。
というのも、そのように認証取得自体が目的になると、中身の伴わない、形式だけの文書管理を実施してしまうからです。
形式だけの文書管理とは、例えば以下のような取り組みを指します。
形式だけの文書管理例
- 品質マネジメントシステムのパフォーマンスに対する評価を実施していなかったのに、審査前に慌てて評価リストにチェックを入れる。
- 日々ファイリングする際に押印しなければいけない書類に、審査前にまとめて押印する。
これではただ審査前に余計な業務が増えただけで、製品やサービスの品質には全く貢献しません。
こういった形だけの文書管理を行うのではなく、製品・サービスの品質向上に間接的に貢献する文書管理を行わなければなりません。
先ほど挙げた例で言えば、
製品・サービスの品質向上を見据えた文書管理例
- 必要なタイミングで品質マネジメントシステムのパフォーマンスを評価し、項目ごとにきちんと評価を下した上でチェックを入れる
- ファイリング時に、自分が作成者・更新者であることを示すために毎回押印する。
といった対応が挙げられます。
外側だけ見ればやっていることは前述の例と同じですが、中身や意義が全く異なることがお分かりかと思います。
ISO9001の認証取得の一環で文書管理に取り組むなら、このように製品・サービスの品質向上を見据えるようにしてください。
6. ISO9001に準拠した文書管理のための5ステップ

ここまでで、ISO9001が求める文書管理がどのようなものかがつかめてきたのではないでしょうか。
とはいえ、実践していくとなると、何から手をつければ良いのか分からないという場合もあるかと思います。
そこでここでは、ISO9001に準拠した文書管理を行うための工程を5つのステップに分けて解説します。
【ISO9001に準拠した文書管理のための5ステップ】
STEP1 | 管理対象となる文書を明らかにする |
---|---|
STEP2 | 必要に応じて文書を作成する |
STEP3 | 文書管理規程を作成する |
STEP4 | 必要に応じてツール・サービスを導入する |
STEP5 | 規程を周知させて運用する |
各ステップについて、もう少し詳しく見ておきましょう。
6-1. 【STEP1】管理対象となる文書を明らかにする
まず、管理対象となる文書を明らかにします。
すでにお伝えしましたが、ISO9001で管理対象となるのは、以下の2種類です。
- ISO9001が作成・保管を求める文書や記録
- 自社の品質マネジメントシステムの運用に必要だと自社が考える文書や記録
ISO9001の要求事項も参考にしつつ、この2種類にどのような文書や記録が該当するのか検討し、管理すべき文書を洗い出しましょう。
その際、文書体系図を作成してみてください。

【文書体系図とは】
文書を、その位置付けごとに分類する図のこと。上位には基本的な指針となる文書を分類し、下位にはより具体的な文書を分類する。
企業では、品質方針などを記した品質マニュアルを第一次文書として、そのマニュアルを遂行するための規程や手順書を第二次文書、第三次文書と分類していくのが一般的。
こうした文書体系図を用いることで、各文書の分類や位置付けなどが整理され、全体像を把握できるようになります。
これにより、現状不足している文書や、役割が重複している文書も明確になり、必要に応じて新たに作成したり、統合したりしやすくなるはずです。
6-2. 【STEP2】必要に応じて文書を作成する
管理対象となる文書を洗い出し、明らかにしたら、必要に応じて文書を作成します。
管理すべき文書が明らかになると、これまで作成していなかったけど必要な文書が出てくる場合もあるはずです。
ここではそのような文書を作成し、用意しておきましょう。
また、新たに作成するだけでなく、役割や内容が同じような文書がある場合は一つの文書に統合し、余計な管理工数を発生させないようにしましょう。
6-3. 【STEP3】文書管理規程を作成する
管理対象となる文書が揃ったら、次に文書管理規程を作成しましょう。
文書管理規程とは、適切に文書管理を行うためのルールのことです。
管理対象となる文書の作成や保管の仕方を定め、規程としてまとめます。
既存の文書管理規程があるのであれば、それをISO9001に適合するように改訂し、もし文書管理規程が無いのであれば、新たに作成してください。
その際は「文書管理規定 フォーマット」「文書管理規定 テンプレート」などで検索して、効率的に作成していくことをおすすめします。
また、「文書管理規定 サンプル」等で検索すれば、作成時に参考となるサンプルも見つかるはずです。
6-4. 【STEP4】必要に応じてツール・サービスを導入する
次に、文書管理をサポートしてくれるツールやサービスを導入します。
管理する文書は、多ければ良いというわけではありませんが、場合によっては膨大な量の文書が管理対象となることもあるはずです。
そのようなたくさんの文書を、紙で扱い、人力で管理しようとすると管理負担が大きくなってしまいます。
そこで、必要に応じて以下のようなツールやサービスを導入してみましょう。
文書管理をサポートしてくれるツール・サービス
【文書管理システム】
文書の作成から廃棄までのライフサイクルを適切に管理するためのツール。文書の版数を管理したり、ツール上で文書の承認を行えたりと、「文書管理」に照準を合わせた機能が備わる。
【オンラインストレージ】
インターネット上にファイルを保管できるサービス(ツール)。インターネットを介して保管しているファイルにアクセスでき、どこからでも(現場や営業先など)文書を参照できるようになる。
【スキャンサービス】
紙書類のスキャン・データ化を代行してくれるサービス。
こうしたツールやサービスを活用することで、効率良く文書を管理しやすくなりますよ。
6-5. 【STEP5】規程を周知させて運用する
実際に文書管理を実施していくにあたって、STEP3で作成した文書管理規程を従業員に周知させることは欠かせません。
文書管理には、従業員全員が日頃から適切に文書を取り扱うことが必要だからです。
例えば、作業記録一つとっても、適切なフォーマットで記録をつける必要がありますし、保管時には正しいフォルダに格納することも求められます。
こういった対応を従業員一人一人が徹底しなければ、文書管理は立ち行きません。
このため、作成(更新)した文書管理規定はしっかり周知させ、各従業員が適切に文書を取り扱えるようにしましょう。
7. ISO9001の認証取得には「PROCENTER/C」がおすすめ

ISO9001の認証取得に向けて、文書管理システムの導入をお考えなら「PROCENTER/C(プロセンターシー)」がおすすめです。
「PROCENTER/C」は、当社NECソリューションイノベータが開発したシステムで、文書管理と情報共有を一手に担う強みがあるプラットフォームです。
「PROCENTER/C」なら、以下のような機能により、ISO文書の管理をサポート。管理負担を抑えながら、確実な文書管理の実現をサポートします。
PROCENTER/Cの仕様・機能の一例
【文書管理機能】
- ファイルの登録、参照、編集
- 作成日、作成者、更新日、絞り込み等による柔軟な検索
- 保管期限を設定し、不要なファイルを自動削除
- 常に最新版のファイルを関係者と共有できる仕組み
- 2GBを超える大容量ファイルのスムーズな転送
【セキュリティ機能】
- ファイルごとの柔軟なアクセス・操作権限設定
- ログイン時の多要素認証
- 保管ファイルの暗号化
- ダウンロード・印刷・キャプチャ制御
【カスタマイズ性】
- 一つのシステム内に複数の環境を構築可能
- 豊富なAPIによる柔軟な他システム連携(基幹システム・複合機等)
実際、ISO文書の管理に「PROCENTER/C」が活用されている実績もあります。
ISO文書の管理を目的とした活用事例
ISO文書の管理課題:
PDCAサイクルの各課程で、いつ誰が承認しているか、またそれぞれの確証がきちんと揃っているかが把握しづらい…承認後の帳票や文書でも編集できてしまうため、監査の際に検証が必要。
また、定期的に廃棄しないと、規定の保管期限以降もそのまま残ってしまう…
▼
PROCENTER/Cの導入効果:
利用部署において、各種確証の過不足を簡単に確認。承認状況の進捗もシステム上で一覧でき、業務のスピードがアップ!
承認の時期、承認者が明確になり、信頼性の向上と監査の手間を軽減。
文書を作成し登録したら、採番→承認→廃棄までをPROCENTER/C内で統括して行えるため、作業負担を大幅に軽減!

この事例のように、ISO文書の管理負担が抑えられることで、本来目指すべき「製品・サービスの品質向上」に注力しやすくなるケースもあります。
あなたの会社でも、ISO文書の管理に「PROCENTER/C」を活用して、本当に意味のある品質マネジメントを実践していきましょう。
まずは、以下よりお気軽に、文書管理上のお悩みや疑問をご相談ください!
8. まとめ
ISO9001が求める文書管理がどのようなもので、具体的にどのような対応が求められているかお分かりいただけたでしょうか。
最後に今回の内容をまとめておきます。
ISO9001では、品質をマネジメントするプロセスをうまく回していくために、文書管理が求められています。
文書管理で具体的に求められていることは、大きく以下の3つです。
ISO9001における文書管理の要求事項
- 管理の対象となる文書は2種類
- 文書の適切な作成・更新
- 文書の適切な保管・管理
このようにISO9001が求める文書管理を実施することで、結果的に以下のようなメリットが得られます。
ISO9001に沿って文書管理を行うメリット
- 信頼を得られる
- 業務効率が向上する
- 強固な情報セキュリティが実現する
一方でデメリットとして、次のようなものがあります。
ISO9001に沿って文書管理を行うデメリット
- 継続的に費用が必要になる
- 一時的に業務負担が増える
ISO9001の認証取得に向けて文書管理を実施する場合、認証の取得が目的となりがちですが、それでは中身の伴わない文書管理となってしまいます。
そのようなことにならないように、ISO9001の認証取得の一環で文書管理に取り組むなら、製品・サービスの品質向上を見据えるようにしましょう。