これまで、製品やサービスを開発し改良してビジネスを営んできました。しかし、これからは、利益を生み、継続性が保証されるビジネスモデルを創造しないと、サービスビジネスを成功に導けません。(図15)この2つの努力は互いに刺激しあって進化を生みだします。サービスビジネスに取り組んでいる企業のマネージャ、リーダは、すべてのメンバーがビジネスモデルを創造するスキルを身につけなければなりません。価値あるビジネスモデルを創造できないと、収益は改善できないと認識すべきです。
リカーリングビジネスの構築 第2回
サービスビジネスを成功に導く
- 利益を生み、継続性が保証されるビジネスモデルを創造する
- 優れたサービス企業は、イノベーションを継続する
- リカーリングビジネスを成功させるためには営業改革が必須
関連ソリューション
製造業で求められているリカーリングモデル(循環型ビジネス)を実現するうえで必要となる顧客接点領域(コールセンター・フィールドサービス・顧客/代理店ポータル・営業支援)のシステムをSalesforceを活用して構築するソリューション。
ビジネスモデルで利益を作る
オムロンフィールドエンジニアリングは、本気でビジネスモデル型ソリューションビジネスを指向していました。(図16)のニッチマーケット発見型ビジネスモデルは、具体的な成功事例をいくつも作り、収益改善に貢献することができました。例えば、サンセットマーケットは、大手の製造業が生産停止にした機器の第三者保守を受注するビジネスです。数年後にはマーケットから製品がなくなってしまう可能性が高いため、多くの保守サービス会社はそのような製品の第三者保守は、受注を避けます。そうすると、マーケットの受注競争がなくなるために、このサービスは利益をだせるサービス単価で受注でき、収益に貢献できるわけです。
ここで第1回コラムの図4に戻って、最後にやるべきことは、イノベーションを継続し続けることです。ハードウェア商品を中心にしたビジネスは、特許という知的財産権がビジネスを守ってくれますが、サービスは特許や著作権があまり効果的にはビジネスを守ってくれません。したがって、よいサービスを作り、価値あるビジネスモデルを作っても、そこで安心して進化を止めてしまうと、後発に追いつかれ簡単に抜かれてしまいます。ところが、先行している企業がイノベーションを続けると、進化の加速度が違うため、後発は追いつくことができません。サービス企業は、イノベーションを継続することが肝要なのです。
特集・コラム
リカーリングビジネスの構築 第1回 利益をだせるビジネスモデルを創造する
サービス事業を成功させるためには、事業を安定的に継続させる必要があります。
つまり、顧客満足を高め、顧客ロイヤルティを高めてリピータを増やさなければなりません。
リカーリングビジネスには営業改革が必須
リカーリングビジネスを成功させるためには、営業改革が必須です。改革の第1ステップは、営業の見える化です。営業プロセスを定義し、お客様情報を共有化し、営業シナリオを作成します。(図17)同時に価値ある営業マネジメントを実現します。営業マネージャを育成し、営業マンに価値あるアドバイスを提供し、営業マンが納得できる成績評価を実現します。第2ステップは、営業の武器の強化です。営業のプレゼン力を高め、お客様の問題を分析する能力を高め、お客様とのコミュニケーション力を高めます。同時に売りやすいサービスを開拓し、サービスを見える化し、訴求力のある「ひな型提案書」を整えます。第1ステップ、第2ステップともにCRMシステムが改革を下支えしてくれます。第3ステップは、永続的なビジネスの構築です。営業がお客様の身内になり、Win-Winの協業ビジネスを追求します。そして、お客様とのサステナブルなビジネスを実現するビジネスモデルの構築を目指します。1回の取引で終わってしまうフロービジネスを卒業し、カスタマーサクセスを実現し、リカーリングビジネスを構築していきます。(図18)
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製造業で求められているリカーリングモデル(循環型ビジネス)を実現するうえで必要となる顧客接点領域(コールセンター・フィールドサービス・顧客/代理店ポータル・営業支援)のシステムをSalesforceを活用して構築するソリューション。
ビジネスの種類とその特徴
産業界はハードウェア商品を販売するビジネスからスタートし、ソフトウェア商品、サービス商品、ソリューション商品と進化してきました。(図19)ハードウェア商品は、素晴らしい商品さえあれば、その商品力でビジネスを展開できました。しかし、サービス商品は、利用実績がないと使ってもらえません。このため、ビジネスの工夫や先行投資で、実績を作らなければなりません。また、営業がお客様にサービスを目の前で見せることができないため、ハードウェア商品のようにうまく売り込むことができません。このため、経営のトップセールスが重要で、お客様のキーマンにこのトップに賭けてみようと思ってもらわないと、商談が進みません。つまり、サービスビジネスは、一般営業だけの努力では成果につながりません。ビジネスモデル型ソリューションビジネスでは、企業のスターの存在や企業の魅力や知恵が必要になり、トップセールスの人脈がないとうまく展開できないのです。
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リカーリングがサステナビリティをもたらす
オムロンフィールドエンジニアリングは、(図20)のすべてのサービスプロセスを事業化していました。コールセンタは、自社のコールセンタとは別に10社以上の第三者コールセンタをプロフィットセンタとして運営していました。深夜のコールセンタサービスの受託は、付加価値の高い事業になっていました。オムロンフィールドエンジニアリングの保守サービスは、多くの一流企業から第三者受託して、高い顧客満足を実現するとともにブランド力を高めていきました。PC関連サービスの収益性を高めるため、PCのセンドバックリペアサービスやキッティングサービスを受託していました。これを担当していたリペアセンタは、プロフィットセンタであるとともに、新入社員のOJTの教育センタとしても大いに活躍してくれました。自社の必要性から整備した緊急ロジステックを外販して、大手ネットワークベンダやPCベンダなど、複数社から受託していました。著者がマネジメントしていた時期に、実績はありませんでしたが、IoTを活用したプロセス監視サービスも外販する予定でした。お客様のビジネスプロセスの一部を代替するサービスビジネスは、リカーリングビジネスになり、安定したビジネスになることは実証されているのです。
まとめ
リカーリングモデルを構築するための土台は、まずITインフラを整えなければなりません。お客様との情報共有を実現するためには、CRMシステムが必要です。ここに貯まったビッグデータをAIで解析し、価値あるサービスイノベーションにつないでいく必要があります。最近では、IoTを使ってお客様とリアルタイムにつながることもできる時代になりましたので、スピーディなイノベーションも可能です。また、お客様に先行して、保守サービス会社がお客様のシステムトラブルをリアルタイムに見つけてサポートすることもできるでしょう。(図21)
これらのITインフラの上に収益性の高いビジネスモデルを構築します。これまで、ビジネスモデルは、特殊な研究スタッフが考えるものと思われてきましたが、これからは、サービスビジネスに参加しているすべてのリーダやマネージャは、全員がビジネスモデルを創造するスキルを身につけなければなりません。日常的にビジネスモデルに関心を持ち、優れたビジネスモデルを解析し、当社に応用できないかを考える習慣を身につけたいものです。
このビジネスモデルの上に構築するのが、サービスプロセスモデルです。サービスプロセスモデルには、提供型プロセスモデル、適応型プロセスモデル、共創型プロセスモデルがあります。提供型は説明の必要がないでしょう。適応型は、お客様の事前期待を感じ取り、その事前期待を満足させるサービスを作るためのプロセスです。「おもてなし感」の高いサービが作れます。共創型は、サービス提供者がお客様とコミュニケーションを取りながら、高い満足を得られるサービスを切磋琢磨していっしょに作り上げていきます。これがうまくいくと、感動サービスになるでしょう。これらの上に、サービスの目標である「顧客満足」や「感動体験」や「顧客ロイヤリティ」が乗っかります。これらのそれぞれの層が機能を発揮すると、サステナブルで安定感の高い「リカーリングビジネス」が実現するのだと思います。
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著者プロフィール
多摩大学大学院 諏訪 良武 教授
- 71年
- オムロン入社。85年通産省の年通産省のΣプロジェクトに参加。
- 95年
- オムロン情報化推進センター長。
- 97年
- オムロンフィールドエンジニアリングの常務取締役として保守サービス会社の変革を指揮。
- 04年
- OA協会のIT総合賞、第1回コンタクトセンタアワードのマネジメント部門金賞を受賞。
- 06年~
- ワクコンサルティング常務執行役員、
国際大学グローバルコミュニケーションセンターの上席客員研究員。
多摩大学大学院客員教授。サービスや顧客満足を科学的に分析し、
サービス企業の改革を支援するサービスサイエンスを提唱している。
また、問題解決のコンサルティングを主たるビジネスとされている。
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「NEC フィールドサービス向け機器・作業管理ソリューション」は、リカーリングモデル化を実現するうえでの取り組みの1つである、「アフターサービス領域(コールセンター、フィールドサービス)」のシステム構築ソリューションです。
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