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モビリティソリューション・コラム

自動運転など自動車で活用される
AI技術の事例と今後の課題

自動車業界におけるAI技術の活用事例と今後の課題を解説

目次

知覚・判断・推論など、人間の知的能力を疑似的に再現するAIは、さまざまな分野で活用が進んでいます。自動車業界においては自動運転技術が代表的な活用例ですが、それ以外にもどのようなことにAIが使えるのか気になる人も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、自動車業界におけるAIの活用例や今後の課題などを解説します。

  1. 自動車でAI技術を活用するメリット
  2. 自動車に関連する8つのAI活用事例
  3. 自動車におけるAI活用の課題
  4. 進化が期待される自動車業界のAI技術
  5. まとめ

自動車でAI技術を活用するメリット

ディープラーニング(深層学習)という新しい機械学習技術の開発をきっかけにAIの能力は飛躍的な進化を遂げました。いまやAIの能力は特定の分野では人間を凌駕するほどの成長を見せており、自動車業界においても多種多様な領域でAI活用が進んでいます。しかし、自動車業界においてAI技術を活用するメリットにはどのようなことが考えられるのでしょうか。

まず考えられるのは、これまで人間が行っていたことをAIに代行してもらえるようになることです。たとえば自動車の製造工程においてAIを導入すれば、これまで人間が手作業で行ってきた仕事の一部を自動化できるので、人手不足の解消や業務効率化などにつなげられます。自動車そのものにAIを組み込む場合でも、たとえば実用的な自動運転技術が普及すれば、運輸業界などドライバーの人手不足が深刻な課題となっている業界を助けられるでしょう。

また、人間ではできないような作業をAIは実現可能なことも大きなメリットです。たとえば高度な画像認識能力を持ったAIを自動車部品の検品などに活用すれば、人間では目視できない微妙な差異さえも読み取って不良品の精査を行えます。これによって、製品の品質向上や生産コストの減少を実現できます。

自動車の安全性の向上もAIに期待されることです。AIはカメラやセンサーと組み合わせることで車両周辺の環境を把握し、危険を察知するとアラートや緊急ブレーキなどの操作を自動で行えます。ドライバー自身とAIが二重に安全確認することで、ヒューマンエラーによる自動車事故のリスクは大きく減らせるでしょう。自動運転も含め、人間の能力に依存せずに自動車の安全運行ができるようになれば、高齢者や障がい者など従来は運転が難しかった人も自動車を利用しやすくなる効果も見込めます。

自動車に関連する8つのAI活用事例

自動車業界におけるAI技術というと自動運転がまっさきに思い浮かびますが、AIはそれ以外にもさまざまな用途に活用されています。以下では、自動車関連のAI活用事例を8つ紹介していきます。

1. 自動運転

まず紹介するのは、自動車の自動運転技術における活用です。自動車の自動運転とは、AIを活用することにより、人間の操縦なしで目的地まで自動車を走行させる技術です。

1.自動運転 2. 需要予測 3. ナンバープレート認識 4. ルート判断

AIは車両に搭載されたカメラやセンサーを通して、車両周辺に存在するオブジェクトを認識処理し、通行人や障害物を避けて安全に走行することを可能にします。自動運転を担うAIシステムは車両そのものではなくクラウド上に設置されており、車両-クラウド間でデータ通信をして自動車の制御を行うのが一般的です。自動運転には、自動化の範囲に応じてレベル0からレベル5まで段階が設定されており、現状では一定条件下においてシステムが全面的に運転を代行できる「レベル3」が市販され始めたところです。完全自動運転のレベル5が実用化されれば、高齢者や障がい者など、従来は自分で運転するのが難しかった人も安心して自動車に乗れるようになり、事故の減少や渋滞の解消などの効果が生まれることも期待できます。

2. 需要予測

タクシー業界では、乗客の需要予測にAIを活用する動きも出ています。これは、どの時間・どの場所に多くの乗客が見込めるか、タクシーの運行記録や人口統計、気象情報、交通情報、イベント情報などさまざまなデータを分析してAIに予測させる活用方法です。こうした需要予測は従来、ドライバーの経験や勘に依存する属人的なスキルでしたが、AIを活用することで新人ドライバーでも乗車効率を上げて売上をアップしやすくなります。また、乗車効率を上げることで、空車のまま車両を走らせる時間を減らせるので、燃料のコストパフォーマンスも向上可能です。タクシー会社のドライバーの給与形態は歩合制が採用されていることが多く、乗客にどれほど効率的に乗車してもらえるかが給与に直結します。ドライバーの中には、成績が振るわないことを苦にして離職してしまう人も多いので、AI活用による乗車率向上はタクシー会社におけるドライバーの人手不足問題の解消にも効果が期待されます。

3. ナンバープレート認識

AIの画像認識機能を活用すれば、車両のナンバープレートを認識させることもできます。これはカメラが撮影した車両のナンバープレートをAIが文字認識する技術で、交通量調査や違法車両の検出などさまざまな用途に活用できます。たとえば駐車場にこのAIカメラを搭載すれば、利用契約していない車両が無断で駐車場を使用した際に迅速に対処することが可能になるでしょう。あるいは、ナンバープレートと顧客情報の紐づけをあらかじめ行っておけば、来店した顧客が誰なのかをナンバープレートから把握し、顧客ごとに個別最適化された対応をすることもできます。さらに、企業が自社の車両の入出庫記録などを効率的に管理する方法としても活用できます。ただし、ナンバープレート認識は基本的に屋外での使用が想定されるので、天候の影響を受けやすいのが課題です。たとえば夜間や雨天時などはカメラの読み取り画質が悪くなるので、AIが正確に文字を認識するのが難しくなります。また、停止中の車両だけでなく、走行中の車両のナンバープレートを読み取る必要もある場合は、俊敏な読み取り速度なども必要です。

4. ルート判断

車両の走行ルートを判断してくれるナビゲーターとしてもAIは活用されています。カーナビはすでに珍しくない技術ですが、最新のAIはドライバーそれぞれのルート選びの傾向をより反映したナビゲーションを行うことが可能です。たとえば、自動車で遠出をする際、高速道路を利用して素早く移動するか、下道でのんびりと移動するかはドライバーごとに好みが分かれます。AIは機械学習を通して、ドライバーのそうした傾向を学習し、交通情報に加えてドライバーの好みまで反映した最適なルート判断を行うことが可能です。

こうしたルート判断の進化は交通機関や配送業などのビジネスにも活用されています。たとえば、配送業にとって、どの車両に何の積み荷をどれくらい載せて、どういった順番で配達先を巡るかは、事業の利益に直結する問題です。車両の可能積載量に比して積み荷が少なすぎれば配送車両の運用に無駄が生じることになりますし、配達先を巡る順番が悪ければ、非効率的な動きが出てドライバーの労働時間や燃料コストに悪影響が出ます。そこで昨今ではAIを活用して、配送ルートの最適解を計算させることで、効率的な配送業務を実現するソリューションも出てきています。

5. 部品検査

自動車の製造工程においてもAIの活用は可能です。たとえば、正常な部品と異常な部品の膨大な画像データを機械学習させることで、人間に代わってAIに部品の品質検査を代行させられます。

5. 部品検査 6. 音声アシスタント 7. 試乗案内 8. 安全運転支援

AIは、人間が目視でチェックするよりも迅速に検査を行える上、人間の視覚では捉えきれないような微細な異常も検知可能です。AI活用によって部品検査を自動化することは、業務効率化、人材不足の解消、検査品質の向上、生産コストの減少など、多くの効果につながります。こうしたAIによる異常検知はさまざまな領域に応用可能で、たとえば医療業界においてはがんなどの病巣の早期発見に活用されています。

6. 音声アシスタント

自動車に搭載された音声アシスタント機能もAI技術が可能にすることです。自動車における音声アシスタントでは、ドライバーの言葉(音声)にAIが応答し、ナビゲーションも含めたさまざまなサポートを行います。事故を起こさないために運転中のドライバーは常に前方に注意していなければいけませんが、カーナビに目的地を入力したり、音楽をかけたり、電話をかけたりと、運転以外の作業をしたいことも多々あるでしょう。その点、音声アシスタントなら、ドライバーは前方から視線を外すことなく、AIに言葉で指示するだけでさまざまなことが安全かつスムーズにできるようになります。自動車との会話を実現する音声アシスタントは、運転の安全性や快適性を高めるだけでなく、愛車に対するドライバーの愛着を高めることにもつながるでしょう。

7. 試乗案内

自動車の販売業務において、試乗中の案内をAIにさせる動きも出てきています。このAIは、試乗ルートの案内のほか、試乗中の車両の特徴などを顧客に説明することが可能です。また、スタッフに代わって試乗に関する質問を顧客へ行い、その回答をデータとして蓄積することもできます。この回答データは後でスタッフが確認し、商談に活かすことが可能です。

試乗案内はこれまで人間のスタッフが行うのが当たり前でしたが、顧客の立場からすると試乗の最中にスタッフが付きっきりになっているのは、心理的な圧迫感を感じる部分もあります。その点、AIならば変に気をつかう必要もないため、顧客は気軽に試乗を楽しみやすくなります。また、スタッフ側としても、AIに試乗案内を任せることで、そのあいだに査定などの業務を進められるのはメリットです。

8. 安全運転支援

自動車の安全運転をサポートするのも、AIの活躍が期待されている重要な役割です。この安全運転支援においてAIは、カメラやセンサーから取得されたデータを基に、障害物への衝突や車線の逸脱、あるいはドライバーの居眠り運転などの危険を検知し、アラートを鳴らしたり、ブレーキを作動させたりできます。自動車事故はドライバーの注意不足や判断ミスなどが原因で引き起こされることも多いですが、AIに運転を監視・警告してもらうことで、そうしたヒューマンエラーによる事故の発生を抑止可能です。

また、AIはドライバーの運転データを蓄積・分析して運転スキルを評価し、ドライバーが悪い行動や習慣を改められるようにアドバイスを行えます。これによってドライバーは自分では気づけなかったような潜在的リスクも把握し、行動変容していくためのきっかけとすることが可能です。

このように自動車の安全運転を支援するAIはすでに実用化されています。たとえば、NECソリューションイノベータのNEC 車両周辺監視ソフトウェアでは、カメラやセンサーを通してAIが周辺の移動体や標識、白線、道路標示などを画像認識し、ドライバーが危険を避け、規制に適切に従って運転できるように支援可能です。このソリューションの詳細については、下記のページをご覧ください。

NEC 車両周辺監視ソフトウェア

車載カメラや車載センサー、組込みAI(Deep Learning)を活用した安全運転支援用のシステムや部品、建機、農機、物流車両、工事車両、倉庫などの監視用途に、車両周辺監視ソリューションを提供します。

運転の安全性を確保することは、当然ながら自動運転技術にとっても必須事項なので、AIによる安全運転支援は、自動運転技術と密接につながっている技術でもあります。

自動車におけるAI活用の課題

自動車におけるAI活用は大きな効果が見込める一方で、その実用においては考慮すべき課題もあります。以下では、その主だった課題を解説します。

データ処理

自動車におけるAI活用において、ネックになりやすいのがデータ処理の問題です。AIの認識精度や分析精度などを向上させるには、膨大なデータを機械学習させることが必要です。特に自動運転などリアルタイムでのデータ処理が必要とされる場合には、カメラやセンサーなどから刻々と取得される膨大なデータを遅れなく分析処理するための環境構築が欠かせません。

データの高速処理に必要な環境構築の具体例のひとつが、最新の通信技術である5G回線の整備です。自動運転技術においては、車両から収集されたデータをクラウド上のAIが分析処理することが想定されます。しかし、高速で移動する車両を的確に制御するには、車両-AI間の通信に遅れや乱れがあってはいけません。

そこで従来の4G回線とは比較にならないほど高速かつ安定的な5G回線の活用が重要になってきます。このように、AIの機能を最大限に活用するには、AIそのものだけでなく、データや通信回線など周辺環境の充実も必要です。

セキュリティ対策

AI技術の活用においては、セキュリティ対策も大きな課題です。たとえば、自動運転を担っているAIがサイバー攻撃を受けたら、車両の制御が正常にできなくなり、重大な事故につながる危険性があります。自動運転に必要なデータをAIに提供しているカメラやセンサーが何らかの原因で故障や誤作動を起こした場合にも同様です。

実際、AIの画像処理機能には現状では未成熟な部分もあり、人間なら容易に回避できるような誤認識をしてしまう事例もあります。こうしたAIの未熟な部分、脆弱な部分が攻撃に利用される可能性は否めません。

AIのセキュリティを強固にするには、侵入や改ざんなどを受けにくいシステム・セキュリティの構築はもちろん、万一攻撃を受けた際に自動的に車両を停止させるフェイルセーフの導入など、多角的な視点をもった対策をおこなうことが求められます。

進化が期待される自動車業界のAI技術

上記のようにAIには課題もあるものの、まだまだ伸びしろがある技術です。今後、AI技術がさらなる成長を遂げれば、それ伴って自動車も進化していくことが期待されます。

たとえば、今後期待される最新のAI技術としては、「エッジAI」が例として挙げられます。エッジAIとは、エッジコンピューティングという技術と組み合わせた最先端のAIです。先に説明したように、自動運転においては車両に搭載されたセンサー類から収集されたデータをクラウド上のAIに送信し、そこで画像データの認識処理などを行います。しかし、この方法だと、車両とクラウド上をデータが行き来するタイムラグがどうしても発生せざるをえません。

そこでエッジAIにおいては、データソース(車両)の近くに設置されたエッジサーバー上でAIがデータ処理をすることで、通信に伴う遅滞時間の発生やセキュリティリスクを最小限に留めます。従来、AIはクラウドベースで活用されるのが通例でしたが、エッジAIが発展普及すれば、クラウドAIとエッジAIを適宜使い分けることが必要になってくるでしょう。

まとめ

まとめ自動車におけるAI活用というと、自動運転技術が注目されがちですが、タクシー業界における需要予測や試乗案内などの活用例に示されるように、意外なところでもAIの活用は進んでいます。

また、完全な自動運転技術はまだ開発途上ですが、自動運転においても非常に重要な安全運転を支援するAI技術については、すでに実用段階に至っています。その一例が、本記事でも紹介した、NECソリューションイノベータのNEC 車両周辺監視ソフトウェアです。このソリューションでは、カメラなどを通してAIが車両周辺の情報を画像認識し、安全運転をサポートします。

今後AI技術がますます進歩するにつれ、自動車業界においても多種多様な仕方でAI活用が進むことが予想されます。

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